新解釈「残業組」と「定時組」
残業組になるか、定時組になるか。
その差は案外、偶発的なものではないでしょうか。
残業しない歴 16年になる私ですが、なんなら定時より前に帰る、あるいは “定時” という概念を壊してきた私なのですが、ある日やることが立て込んで 19時までオフィスで仕事してしまった、としましょうか。
次の日も、偶々急ぎの仕事が入って、19時過ぎまで仕事したとします。
そしてその次の日もまた・・・
これ、3日続いたらヤバイと思いますね。
1日目は、「あーあ残業しちまったよ。俺らしくもない」と苦々しく思ったでしょうが、そんなパターンが 3日続くと、慣れてしまうというか、癖になってしまって、何も感じなくなる。それどころか、気持ちよくなってしまうかもしれません。これが残業スパイラルの入り口ではないか。
その逆においても、同じ現象が起こりえます。
毎日残業が当たり前の人が、ある日偶々定時に帰った。次の日も、そしてまた次の日も。
1日目は相当な罪悪感を覚えたことでしょうが、3日続くとそれほどでもなくなる。定時に帰るのってなんだか気分がいいな、と感じ始めているかもしれません。
習慣の力って大きいな、と思うのです。
毎日残業している残業組と、毎日定時に帰る定時組に二分されがちな理由は何だと思いますか?
「それは有能な人に仕事が集中するからだ」と答えていませんか?
それも一理ありますが、それより習慣によるものだ、と私は考えています。
さて、残業組はさらに 2つの行動パターンに分かれる、と仮定してみます。
より長い労働時間の中で、さらに付加価値を生む仕事を見つけて熱心に取り組む人と、ムダな作業を捻り出して時間をつぶす人です。
いやいや、そんなんじゃなくて、そもそも仕事が多すぎるから仕方なく残業してるんだよ!という声も聞こえてきそうですが、ここではそのシナリオは捨象することにしましょう。
同様に、定時組も 2つの行動パターンに分かれます。
定時に帰るために、仕事に集中し、最も効率の高い方法を選び、最短で仕事を終わらせようとする人と、面倒な仕事を他人に振ったり、手抜きをしたりして単にラクしようとする人。
本稿は、いわゆる社会通念とは逆方向の因果関係を提示するものです。
【通念的な因果】
仕事が多い ⇒ ゆえに、残業する
仕事がヒマ ⇒ ゆえに、定時に帰る
【逆向きの因果】
残業が偶々習慣化する ⇒ もっと仕事する、または、ムダな仕事を作り出す
定時帰りが習慣化する ⇒ なるべく仕事しない、または、スピードを上げる
この逆向きの因果に基づいて、マトリクス化するとこうなります。
「人畜無害な蛍」
残業が習慣化している人のうち、地味なタイプ。
残業で延びた時間に何をするかは本人の自由だと思います。全くムダでしかない仕事を創造するのもまた、楽しいと言えなくもないでしょう。
ほとんどの社員が帰ったオフィスで、ひとり蛍光灯をつけて何やら作業している 30代男子を見たことがありませんか? 彼は毎晩遅くまで何をしているのでしょう?
パワポのプレゼンを見直してフォントを変えてみたりしている。
エクセルの入力数値をいじりながら影響をシミュレートしている。
タスクの進捗を確認するための一覧表&チェックリストを作成している。
けっこう楽しそうだと思いませんか?
このような仕事は、彼自身の自己満足に役立つもので、ほかの誰にも影響を与えないことが重要です。自己完結に徹して、充実した残業時間を過ごしていただきたいものです。
「迷惑なヒーロー」
残業が習慣化している人のうち、派手なタイプ。
付加価値を生み出す仕事というのは、探せば無限にあるものです。どうせ残業をするのなら、無意味な作業で時間をつぶすより、組織の役に立つ仕事をしたいと考える人がいてもいい、と思います。
例えば、こんなことを思いついたりするんですよ。
協力関係がうまくいっていない 2部署を見つけ出し、橋渡し会議をセット。
派手ですね、やることが。
いろんなものを頭越しにやってしまうところとか。
微妙に関係ない人たちまで巻き込んでしまっているところとか。
このような会議は、火に油を注ぐ結果になるか、その場では大人らしさを演じつつ両部署の溝はますます深まるかのどちらかでしょうね。
運悪く巻き込まれた人々の仕事は増えますが、本人は事を為して達成感を得ているのでよしとしましょう。
「孤高のランナー」
定時帰りが習慣化している人のうち、地味なタイプ。
業務量の多い人が定時で帰るためにはどうするでしょうか。
最短コースを黙々と走る。人との関与を必要最小限に抑える。余計なことに手や口を出さない。いかにも、地味ですね。
粛々とタスクをこなしてサクッと帰る 30代女子を見たことはありますか?
彼女はどうやって労働時間を最短化しているのだと思いますか?
バックログを溜めない。今やれることを後回しにしない。面倒な雑務ほど、真っ先に片付ける。そのやり方が最もスピードが出るからです。
1つのタスクを途中で中断させない。集中して一気に終わらせる。そのとき彼女からは「話しかけてこないで」オーラが出ています。
彼女のそういう働き方は周囲も認知しているので、人との折衝や調整を必要とするような仕事は降ってきません。だからますます労働時間を短縮できるわけです。
「鋼のメンタル」
定時帰りが習慣化している人のうち、派手なタイプ。
『ドント節』を歌っていた植木等を連想してください。
(と言って、イマドキどれだけの人がわかるんだろ)
「休まず、遅れず、働かず」なんて格言もあった時代。
このタイプって、絶滅危惧種なんでしょうか?
「Aさんって全然仕事してくれないよね」と言いたくなるような人、あなたの周りにいますか?
そんなときは、「Aさんがしてくれない仕事」って、本当に必要な仕事なんだろうか? と考えてみましょう。
また、Aさんがある仕事を明らかに手抜きだとわかるクオリティで提出してきたら、あなたはガッカリしたり怒ったりしますか?
そんなときは、あなたが求めるクオリティって、本当に必要なレベルなんだろうか? と考えてみてほしい。
私が Aさんを擁護しているように聞こえますか?
遠い昔、Aさんタイプの人たちにキツく当たっていたことへの反省があるのかもしれませんね。
残業組か定時組か。地味か派手か。
どれもありなんじゃないかな。あなたの好きなように働けばいい。
今の私はそんな考えです。