日本はプライバシー後進国?中道の贖罪と、「Privacy Tech(プライバシーテック)」の台頭。
前回の話
プライバシーはビジネスになるのか?
プライバシーに配慮していることがビジネスに繋がると考えた中道は、世界のプライバシー領域のスタートアップを調べた。すると、世界ではOneTrsutやBraveといってプライバシーを軸としたスタートアップが大型の資金調達をしており、また、サービスやプロダクトも広まりつつあるということを知った。さらに、「Privacy Tech(プライバシーテック)」という新しい技術領域も出てきたことを知った。中道はすぐにPrivacy Techのロングリストを作成し、出資や資本業務提携の提案をソフトバンク内で上申するに至った。
まー、案の定だけど、ソフトバンク内でぼくの話を理解できる人間はまだまだマイノリティーで話は進まず。これは、中道の力不足もあるかなと。ヤフーであれば、現場のマネージャーでも意見を通しやすいカルチャーだが、ソフトバンクほどの大企業となるとそうもうまくいかない。大手企業ソフトバンクで自分のバリューを発揮する限界を痛感した。
複業で「新規事業コンサル」
少し話は前後するが、ジーニーを退職後、複業(※)というかフリーランスで「新規事業コンサル」を何件か行った。みんなも知っているような大手企業からメガベンチャー、まだまだシリーズAからBくらいのスタートアップまで幅広く。自分のキャリアとして、ずっと新規事業系だったので、それを生業にしたかったのと、ジーニー退職後はアドテクから一歩引いてもう少し幅広い業界を見たかったのが理由である。
実は、そのクライアントの内の1社がソフトバンクで、新しいサービス立ち上げのPMポジションでプロジェクトにジョインしたのだった。それがきっかけで正式に採用したいとのことで、半年後くらいに正社員となった。
ソフトバンクで正社員で働くようになった後も、会社のルールの範囲内で複業を行っていた。
ベクトルでの「新規事業コンサル」
ソフトバンクで働きながら、複業を行っていたのだが、その時ヤフーの共通の知人を介して、ベクトルCOOの長谷川さんを紹介してもらった。
長谷川さんからのオーダーは、「データを使った新規事業立ち上げ」であった。当時、ベクトルは100数十社に出資をしていて、グループ企業も40を超えるほどの企業サイズがあった。それらのデータに横ぐしを刺して、データを活用した新規事業を依頼されたのだった。
調査した結果、下記のような理由から、データを活用した新規事業は難しいと報告を行った。
会社やサービス単位でドメインが縦割りになっている。
そのため、今後の3rd Party Cookie規制の影響をもろに受けて、横ぐしを刺したようなデータ活用が難しい。
また、プライバシーポリシーなどもグループ間でバラバラで、データ活用を前提としたポリシーになっていないので、ポリシー改定から改めて行う必要がある。
これは、ベクトルだけではなく他企業にも共通して言えることである。デジタルのデータを活用する上で、下記2点はマストで事前に検討が必要な事項である。これらが整備できていないと、データ活用のスタートラインにも立てないし、場合によっては法令違反にも繋がりかねない。
今後のCookie規制への影響を受けるか否か
プラバシーポリシーの整備
データ活用ではなく、プライバシーを守る立場でのビジネス提案
ベクトルCOOの長谷川さんに前項までの理由から、「マネタイズに使えるデータは乏しく、新規事業は厳しいです。」と報告を行った。当然、プロとしてここで報告を終えるわけにはいかない。
代替案として用意したのが、「プライバシーを守る立場での新規事業」である。これが今のPriv Techの前身となる企画である。
まー、ソフトバンクでもこの辺の理解が及ぶ人間がマイノリティーであったので、当然ベクトル内でもこの企画に対して、すぐに首を縦に振られることはなかった。
そこから半年ほど経って、ある時久しぶりに長谷川さんから連絡があって、「改めて企画書を読んだ。進めたいからMTGを行いたい。」とのことだった。
提案した当時はピンとこなかったらしいが、長谷川さんはベクトル内で新規事業系を担当されていたので、市場の動向などもたとえ専門領域外であっても、どこか野性的な感を持ち合わせているような方で、この企画に対してある時ピンと来たらしいw
改めてディスカッションした後に、半年間ほどかけて企画と会社設立の準備に入ることになった。
Priv Tech設立と代表オファー。中道の贖罪としての想い。
Priv Tech設立の準備に入ったタイミングくらいで、長谷川さんから「Priv Techの代表をやってくれ」とオファーをいただいた。
結果、引き受けたのだが、理由は下記のようなものだ。
まず、1点目。
Priv Techは中道の贖罪という意識が強くある。ヤフーという国内プラットフォームNo.1というような会社で働いていたのだが、日本のアドテクや、デジタルマーケティング業界において、日本のプライバシー意識がグローバルで見ても進んでいない「プライバシー後進国」というような状態に一助を担ってしまったのではという罪の意識だ。
2点目は、
自分の働き方として、ソフトバンクのような大企業で歯車の一部として働くことへの疑問である。
また、少し話は飛ぶかもしれないが、人生100年時代の今、サラリーマンとして働くことこそが1番のリスクと考えたのである。起業やスタートアップでIPOを目指して、株やストックオプションなどで一財を成す選択肢にチャレンジした方が効率がいいのではないかと考えるようになった。
Priv Techは、「プライバシー後進国」である日本に対して、啓蒙活動から、実際のソリューション提供までを行い、グローバルのプライバシー水準まで引き上げる会社だ。また、その過程や結果において、既存のマーケティングやビジネスが後退しては意味がない。当然、データ活用とプライバシー遵守を両立させる必要がある。
個人としても、30代半ばとなり、ビジネスマンとして脂に乗っている時期であり、同時にキャリア後半を意識するタイミングでもある。Priv Techは、中道のデータビジネスの経験を活かしたキャリア前半の集大成的な事業・プロジェクトでもある。
今後のPriv Techの動向に注目していただきたい。
次回へ続く
2020年3月に設立。Priv Techのカルチャーとは?