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おやつ論文|毎日8000歩はキツい!

先日,普段は目に入らない体重計がやけに気になり,(たぶん)半年ぶりに乗ってみた。

4kg増えていた。

数字を二度見した。

乗るべきではなかった,いや,これはチャンスと捉えよう,乗って良かった。高校卒業~博士課程まで体重変動が1~2kgだったので,そういう体質なんだと思って高を括っていた。

ということで都合よく運動するのにちょうどよさそうな論文が流れてきたので,読んでみようと思う。

論文のタイトルは,
「Association of Daily Step Patterns With Mortality in US Adults」



毎日8000歩あるけはキツい!

Paluch et al.(2022)のメタアナリシス※ では,1日の歩数が多いほど,約8000歩まで死亡リスクが着実に低下し,その時点で死亡リスクが一定になることが示唆された。
※ いままでの研究を整理して分析したもの。

しかし,アメリカ人を対象にスマホの加速度計を使って歩数を調べた研究では,1日の平均歩数が4800歩で全然足りていないことが分かっている(Althoff et al., 2017)。

そこで,毎日たくさん歩くことが大変な人もいるから,健康効果を得るために1日のノルマ(推奨歩数)を1週間のうち最低何日達成したらいいのか,明らかにするのが今回の研究。


大規模な研究

全国(アメリカ)の成人を対象に,1週間を通して加速度計を使って調査。8000歩以上(約4 miles = 6.44 km の歩行に相当)歩いた日数と10年間の全死亡率および心血管死亡率との関係を調査した。

4372人の参加者のうちデータがそろっていない人を除いて3101人を分析対象とした。


対象者の内訳

平均年齢 50.5 (SD = 18.3)
女性 1583人(51.0%),男性 1518人(49.0%),
黒人 666人(21.5%),ヒスパニック 734人(23.7%),
白人 1579人(50.9%),その他 122人(3.9%)

1日の平均歩数の中央値 8793(6238-11439)歩
8000歩以上歩いた日が…
週0 632人(20.4%),
週1~2日 532人(17.2%),
週3~7日 1937人(62.5%)

1週間のうち8000歩以上歩く日数が多い参加者は,8000歩以上歩く日数が少ない参加者に比べて,若年,男性,ヒスパニック,保険加入,既婚,非喫煙者である傾向が強く,肥満,スタチン使用,合併症,移動制限,自身の健康を「普通」「悪い」と評価する傾向が弱かった。


10年間の追跡調査

10年間の追跡調査において,全死因による死亡 439例(14.2%),心血管疾患による死亡 148例(5.3%)を確認。潜在的な交絡因子を調整した結果が以下の通り。

全死亡リスク

8000歩以上が週0日の参加者と比較して,週1~2日の参加者では 14.9%,週3~7日の参加者では 16.5% 低下した。

心血管疾患死亡リスク

8000歩以上が週0日の参加者と比較して,
週1~2日の参加者では 8.1%,
週3~7日の参加者では 8.4% 低下した。

全死亡,心血管共に10年後の死亡リスクは,8000歩以上歩く週日数の増加とともに急速に減少し,3~4日で一定になった。

年齢と性別

若年者と高齢者ともに,そして男女共に,週に1~2日,または週3~7日8000歩以上歩くと,10年後の全死亡リスクが低下した。

10000歩で計算しても

10年後の全死亡リスクの調整値は,1万歩以上を週0日歩く参加者では 16.7%,週1~2日歩く参加者では 8.1%,週3~7日歩く参加者では 7.3% であった。

10年後の心血管系死亡リスクは,1万歩以上を週0日歩く参加者では 7.0%,週1~2日歩く参加者では 2.4%,週3~7日歩く参加者では 2.3% であった。


まとめ


毎日継続して○○歩あるこう!
でもそれってつらくない?
じゃ1週間に何日ノルマ達成したらいいの?という研究だった。

週0日に比べて週1~2日でもけっこう健康効果はあることが分かったので,それならハードルは低いんじゃないだろうか。

博論で歩行量の促進に関する研究をやったけど,毎日何歩はきついなぁと思っていた。健康教育にも生かせるような研究だったので,是非いろんな人にも読んでもらいたい論文。


「太ったから運動しないと」で論文読んだわけだが,10年後の死亡リスクと今の体重の話は別である。
論点をすり替えるなよ。運動しろよ。


< 紹介論文 >

Inoue, K., Tsugawa, Y., Mayeda, E. R., & Ritz, B. (2023). Association of Daily Step Patterns With Mortality in US Adults. JAMA network open, 6(3), e235174.
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2023.5174


< 文献 >

Althoff, T., Sosič, R., Hicks, J. L., King, A. C., Delp, S. L., & Leskovec, J. (2017). Large-scale physical activity data reveal worldwide activity inequality. Nature, 547(7663), 336–339.
https://doi.org/10.1038/nature23018

Paluch, A. E., Bajpai, S., Bassett, D. R., Carnethon, M. R., Ekelund, U., Evenson, K. R., Galuska, D. A., Jefferis, B. J., Kraus, W. E., Lee, I. M., Matthews, C. E., Omura, J. D., Patel, A. V., Pieper, C. F., Rees-Punia, E., Dallmeier, D., Klenk, J., Whincup, P. H., Dooley, E. E., Pettee Gabriel, K., … Steps for Health Collaborative (2022). Daily steps and all-cause mortality: a meta-analysis of 15 international cohorts. The Lancet. Public health, 7(3), e219–e228. https://doi.org/10.1016/S2468-2667(21)00302-9

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