【糖尿病】HbA1cを0.5下げるために何をすべきか考えたこと(問題解決手法)
こんにちは。なかなか改善しないHbA1cに悩まれている方は結構いらっしゃるでしょうか。私も最近停滞するHbA1cの値を見続けどうしたものかと考え始めるようになりました。
こんな方に読んでもらいたくて書きました
・HbA1cを下げたいと思っている方。一緒に下げる努力をしませんか。
・問題解決の検討手法を見てみたい方。ご参考になれば。
背景
SAPを始める決意をしてから約1年、私のHbA1cは心が躍るほど劇的に下がってきましたが、直近の半年は大きく変更しておらず、7.0付近をうろうろしています。無理ない範囲で、ではありますがもう少し下げたいという気持ちがあります。
では何をしようと考えた時に思い出したのは、過去行き当たりばったりの対応をしてきたことその効果が感じられないことです。医師からもう少し下げたほうが良いと言われ続けたここ数年、間食を減らす決意をしたり、歩く距離を延ばしてみたりと、思いついたことを少しやった気分になっては効果を感じずに気持ちがしぼむ、そんなことを繰り返してきました。このまま無策でなんとなく続けてはうまくいかない、と感じています。
そこで「無理なく」「回り道なく」値を改善できそうなことは実際何なのか、これをどっかり腰を据えて考えてみることにしました。ということで、問題解決の手法を取り入れてみることにしました。
以下より、問題解決検討です。
1. 目標の設定
まず問題は何か、現状と目標のGapを明確にします。
現状(問題):HbA1cが7.0付近から下がらない
目標:HbA1cを6.5付近に下げたい
Gap:HbA1c +0.5
2. 効果の検討
ゴールの数字にはこだわるべきです。目標に到達することでどんな効果が得られるのかを把握しておくことは、方策検討を進めるうえでの道しるべになります。そして何より、問題解決の道のりでのモチベーション維持に重要です。
HbA1cでいえば、「血糖値正常化を目指す指標となる6.0をキープできれば、健康寿命が延びるはずだ」とかでしょうか。私の6.5は「合併症予防のための目標である7.0未満を多少の悪化があっても達成できる安心できる数値」として6.5にしました。6.0は目標として高すぎます。
なので効果は、合併症になりにくい状態をキープでき、安心した生活が送れる、などでしょうか。
3. 評価指数の設定
目標が抽象的な場合、実行する方策が立てにくいケースがあります。例えば「売り上げを前年比10%増」という目標に対して、広告を増やすのか、商品満足度を上げるのか、値下げをするのか、色々やれることはあり、それぞれにもたくさんの方策があるはずです。
HbA1cの場合は、それ自体は計測可能で方策が立てにくいものではないのですが、通院時にしか計測できない点がネックです。上記例の売り上げですと、進ちょくが毎日追える仕組みがあれば途中で軌道修正や追加方策の実施ができます。HbA1cは結果が分かるのが翌月の通院時で、軌道修正ができるのはその後、軌道修正後の結果がわかるのはさらに翌月の通院時です。
よって、目標期間内に計測が数回可能な指数に目標値を変換します。
私はアメリカ糖尿病協会が、HbA1cから平均血糖値を算出する式を提示しているのでこれを利用します。すると、HbA1cは以下の平均血糖値となります。
現状(問題):7.0→154
目標:6.5→140
Gap:+14
上:HbA1cと血糖値の関係:アメリカ糖尿病協会より(英語)
下:HbA1cと血糖値の関係:All aboutより
よって、現在は推定154の平均血糖値を-14の140にすれば、計算上HbA1c6.5に到達できる、ということになります。
なお、私の現在のCGMで計測している実際の平均グルコース値は150です。そこから-14して平均グルコース値を136にすればHbA1cも6.5付近になるだろう、ということになります。
(こういう体感できる数字にすると、難易度が一層理解できます。なんとなく立てた6.5が達成できるのか、方策検討前から不安になってきました。)
4.現状把握
では、この平均グルコース値を下げたいのですが、今のグルコース値がどんな動きをしているか、を把握します。
これをやらないと、非効率な方策を立てる危険度が増します。
例えば、この「平均」という値は大きな波が起きていても、なぎのごとく治まっていても同じ値になります。大きな波を叩くような方策は前者のケースには効果的ですが、後者のケースではあまり効果を発揮しないはずです。後者のケースの場合は水位全体を下げるような方策を取るべきです。
私の場合は、以下のようなグルコース値の特徴がありました。
・夕食後に上昇し、就寝前後をピークに緩やかに明け方に向けて下がっている日が多い
→夜間は波の高いタイミングが長い
・目立った高血糖は間食のタイミングでの発生が多い
→間食後に波が高い
・低血糖は頻度が少なく、低血糖付近も多くない
→波の低いタイミングは少ない
・なぎの値は120-140前後に集中している
→水位全体は少し高め
5. 方策検討
いよいよ方策検討です。ここまで長いな~と思われた方も多いかと思います。私も昔は思っていました。でも、実行する価値のある方策を選ぶためにも、やって損はない、と今では思っています。
方策検討では、方策を出すことと、方策を評価し実行アイテムを決定することをします。
方策だし
一度現状把握でキーワードを絞り、打つべき手の効果しろを見極めましたが、方策だしは効果や難易度は気にせずどんどんアイデアを出します。まずは全部のカードをテーブル上に並べるのがおすすめです。
当然ボツネタもたくさん生まれます。ただ、不思議なもので全カードを見ながら考えを整理するうちに、出したときはボツネタと思っていた案が採用されたりすることもあります。
例えば、A案とB案があったとします。A案は採用しようと考える魅力的な案でB案はボツネタだとします。しかし、B案はそれ単体では効果は大きくないですが、A案と一緒にやるなら負担が少ない、こんなケースです。それならA案とともにやってみようかな、という気になりませんか。
またはボツのC案とD案を眺めていたら魅力的なE案のアイデアが生まれてきた、とかですかね。
さて、私の問題に移りまして、アイデアを網羅的に出すために、検討するアイテムの軸を決めます。私は「糖尿病治療法=食事療法、運動療法、薬物療法」と「SAP活用」の計4つにしました。
食事療法・運動療法についての紹介動画:日本糖尿病学会hpより
糖尿病治療の3療法以外にSAP活用の向上という手段が取れるのがSAPの強みです。ご理解いただくために、以下、ちょっと長文ですがお付き合いください。(読み飛ばせるように引用にしました。)
日々の糖尿病のコントロールの確認は血糖値(尿糖でも概要は把握できます)を見て行います。
血糖値が高ければ下げるための動き(1型糖尿病の場合はインスリンを追加する、が主な対処)をして、低ければ上げる動き(これは簡単です、食べればよい。)をします。
ここで、CGMを活用した場合の例を実際の値をもとに示したいです。
ある日のCGM(グルコース値持続モニタリング)を実施した時のデータを載せてます。赤線がグルコース値の値、青点が血糖値の値です。
グラフを左から見てみます。23:00の時点で、グルコース値は約50=低血糖です。何かを食べたと思います。その後、グルコース値は夜間に上昇を続け、測定上限値の350に張り付くような状態になりました。これは、間違いなく食べ過ぎです。
朝起床して血糖値を測り、470ぐらいであることに気づきます。ここでしっかりインスリンを打って9:00ぐらいに正常値にまで戻しています。(打ちすぎてその後再び低血糖になっていますが。)
この高血糖が起きた結果だけを見ると、「モニタリングをしていても結局470まで上昇しているのではないか」という結論に見えるかと思いますが、これには訳があります。
このときに使用していたCGMはグルコース値をその場で見られる機種ではなかったのです。もしその場で見られたら、機器がアラートで知らせてくれたら、きっと2時ぐらいにインスリンの追加打ちをしてもっと早い段階で血糖値が正常化していたはずです。
つまり、リアルタイムにグルコース値を見て、その値を細かく補正すること、これがSAPならできます。これは、各糖尿病治療法に匹敵する強力なコントロール方法だと理解しています。
現状把握でHbA1cは通院時にしかわからないので平均血糖値に変換する、としましたが、SAPの場合はこの血糖値=グルコース値を5分に1回出力してくれます。日に数回の頻回測定では得られないリアルタイム性です。
さて、本題に戻ります。それぞれについての改善案は以下のようにだしました。手書きなんでぼやかしましたが、紙を4分割し、4つのアイテム軸に対してそれぞれ数案出したという点をお伝えしたかったです。
方策評価
さて、やっと方策評価です。もう4000字近いです。ここまで読んでくださった方、さいごの山場ですのであと少しお付き合いください。
方策評価を行うために、私はまず「方策の具体化」を行います。例えば上記の方策だしで「間食(の糖質)を減らす」というものを書いたのですが、これを書き換えます。より具体的に、実現できそうな方策に変えるのがポイントです。上記の場合は「間食と低血糖用の補食を分ける」、「ナッツ類を取り入れる」、「ヨーグルト類を取り入れる」などと具体化しました。
そして、揃ったアイテムたちを評価します。
評価軸はたくさんあるのが普通ですが一旦「実現容易性」と「効果」の2軸で評価します。以下のように座標軸にアイテムたちを置いていきます。ペイオフマトリクスというものです。
この効果、具体的であると良いです。私のケースであれば、これをやったら平均グルコース値が2.5下がるなどの値に落ちていると完璧です。ただ、間食をナッツ類にしたら血糖値がどうなるなんて、正確には言えません。諦めて感覚で効果を検討するのも先に進むためにはありだと思います。
私の場合は、感覚値ですがこの方策をするとどれくらいの面積が減らせそうかを考えて効果の優劣をつけてみました。
下図の斜線を引いた平行四辺形の面積がSAPを用いたことで防げた高血糖の範囲です。このように、方策を実施した際の減らせる面積の大きさで効果を検討しました。
そして類似するケースがどれくらいの頻度で起きているのか。年に1度しかないならこの面積を減らせるのは年に1回だけですが、毎週起きているなら、年に52回減らせます。
そして、ペイオフマトリクスの右上=簡単にできて効果が高いものから、制約や不採用とすべき他の評価軸がないかを考えます。やるためにかかる初期投資が今は準備できないとか、書いては見たがやる気にならないなど、制約が強いなら場所を移動したり、採用しないのもまた一つです。
それらの制約がない方策を採用候補にします。
私の場合は、以下を方策として採用してみます。
① 超々速攻インスリンに薬剤を変更する
② 日中の高血糖アラート判定値を下げる
③ 間食で低血糖用の補食を食べる回数を段階的に減らす
6. 実行計画策定
方策を決めたら、それを計画に折り込みます。
方策の達成条件、評価方法、評価頻度とともに、目標の評価頻度、再計画条件なども策定し、スケジュールなどに折り込みます。
私の場合は、以下のような計画となりました。
開始タイミング
① 次回通院時に提案、次々回より利用開始
② すぐに設定開始
③ すぐに開始、段階的に減らせるか検討
評価方法
① 切り替え後の夜間の高血糖からの降下時間が30分以上短くなっていること
② グルコース値の頂点値が25程度下がっていること
③ 午後の間食後の高グルコース値の面積が75%程度に減少していること
④ 平均グルコース値の値
評価頻度
① 毎週
② 2~3日に1回
③ 2~3日に1回
④ 毎週
(追加方策の)再計画条件
・2週連続で平均グルコース値が上昇
・4週で平均グルコース値の減少率が期待値の半分
実施期間
7月の通院後3か月
7. 実行
実行は計画に沿って進めます。目標の途中評価で再計画が必要となった場合は、方策を変えたり頻度を上げたりと軌道修正をします。
私の実行はこれからなので毎月のサマリ記事で経過を伝えようと思います。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
私は実施することを決められたので、大変満足です。
さいごに、こんなに時間をかけて方策を決めたのに、実はそれではダメなこともあるんですという点も2つ書いておきます。
一つは、精度は二の次でともかく急いでいる場合です。その場合は実行しながら修正していくような形、DCAPサイクル(PDCAをDoから始める)のような手法のほうが良いかもしれません。
もう一つは、複雑である(ことを認知してしまった)現在ではよくあることで、「果たして、それだけを考えてよいのか問題」です。
今回のケースでいうと、例えばHbA1cを下げること=健康寿命を延ばすことなのか、という点です。
上記の中で「運動療法をするという方策」と「グルコース値の低血糖感知閾値を下げる」はHbA1cを下げるには後者のが効果があると考えていますが、健康に生きるために前者が必要であることは周知の事実です。
糖尿病である私はHbA1cのコントロールを優先順位の高い目標にしていますが、同時にいくつもの健康リスクも抱えているはずです。それらを総合的に見た場合は、取るべき方策はきっと運動なんだろうと思います。気持ちが乗らないので最低限しかやらないのですが。。
こんな長文の記事を書くのは久しぶりです、最後まで読んでいただき本当にありがとうございます。ここまで読んだついでに、コメントで感想や問題解決はこうした方が良いなどの改善のご意見など、いただけると大変嬉しいです。
見出し画像:出雲千代さん ブレスト