「google」に騙されて。息子とドライブの日。
今年の柿は、私が嫁いできて以来、一番の不作だったこともあり、種無し柿(渋柿)の収穫をほとんど終えた。
晩生(おくて)の色付きを待っているこのタイミングで、少し余裕ができた。
普通なら、重いものを下げられないため、柿採りもままできない夫が、どこかへ連れて行ってくれてよさそうなものだが、その可能性はない。
かと言って、家に居て悶々とするのは、精神的に悪い。
思い切って、以前から行きたいと思っていた「百貨店」へ、連れ出してほしいと言ってみたが、予想通りの返事だった。
だって・・・
家には、3万円分の商品券があるんやで。
使わな勿体ないで?!
3万円分があったら・・・!✨
あんな遠いところ行くの、イヤや。
無理もない。
還暦すぎて疲れた風の夫には、都会のど真ん中に車を走らせるのは、ムリがあるのだろう。
それならばと、ヒマそうにしている息子に、誘いをかけてみる。
あんな遠いところ行くの、イヤや。
夫の口調を真似て返す息子に、間髪入れずに言ってみる。
どうせ、自分もヒマなんやろ?
でも、もしかして、休業日とかあるんかなぁ・・・?!
母ちゃん、「google」が、今日営業10時からやってるって!
へっへー!
そこが息子のいいところ。若いだけあるわ。
ホンマ?休業日ってことない?
大丈夫や!「google」にそう書いてるもん。
そしたら行こうやぁ!
なんでも買ったるでぇっ!
1時間ほどの道のりを、息子とたわいもない話しをしながら、市内へと進んでいくと、雰囲気は田舎と随分と違ってくる。
新しくできた道や店、そびえ立つマンションやビルの数々。
煌びやかな都会の風景を、数年ぶりに見るだけでワクワクしてくる。
普段、山で暮らしている私にとって、「市内」というだけで「都会」だし、普段見慣れない建物を見ているだけで、得をした気持ちになる。
これで、もし、百貨店が休業日でも、市内にドライブに来たと思えば、十分やな?!
興奮気味に息子に話しかける私。
対して、常日頃から、市内にとどまらず他府県へも遊びに出かける息子のテンションは、ふつう。
百貨店っていうても、平日やし、空いてるんやろな?
普段からガラガラちがうん?
二人で勝手なイメージを抱きながら、更に車を進めていくと、百貨店の建物が見えた。
駅前にある、その百貨店が見えた時には、ズンズンと湧き出る楽しみは、抑えきれない。
人が多くて嫌になるかなぁって思ったけど、やっぱし、連れてきてもらってよかった!
予想以上に百貨店の駐車場へ吸い込まれる車の多さに驚きながらも、嬉しくて、なかなか前へ進まないことも気にならない。
すっごい、混んでるやん!この平日に、すごいなぁ?
もっと、ガラガラーッと空いてると思ってたよなぁ?
最後は、地下の食品売り場で美味しそうなもん、買って帰ろうな。
まずは、百貨店の受け付けで、この商品券使えるか、聞いた方がいいかな。
思い思いのことを口に出しながら、チビリチビリと進んでいく車の列に紛れながら、駐車場の入り口を目指す私たち。
この百貨店に来るのは、「かいけつゾロリ」の正月イベントをしていた、息子が幼かった時以来で、その時はまさしくこれ以上の賑わいがあったが、普段は閑散としているイメージの田舎の百貨店。
今回は、旗を持って車を誘導する警備員の方もいて、私たちはその賑わいに少し圧倒されていた。
それでも、車が進むにつれ、普段は足を踏み入れない百貨店のことを想像して、ワクワクは高まっていくばかり。
ドキドキしながら、順番を待った。
間もなくして、駐車場の入り口のバーが見えてきた。
と同時に、立て看板が見えた。
え?!
えっ?!
えーーーーーーーーっ!!
私たちは、その看板を二度見した。
本日は、休業日です。
カード会員様 特別ご招待日。
カードを店員にお見せください。
母ちゃん・・・
俺たち
招待されてないよな?!
どうりで、車を運転している人、セレブなおばさんっぽい人ばかりやと思ったわ。
そう言うと、入り口に入る一歩手前のところで、息子は車をUターンさせた。
チョットォ―ッ!💢
だから、言うたやん!ちゃんと調べてって!
えーっ?!
でも、「google」にはそう書いててんもん。
それに、母ちゃん、もし休業でも、ドライブに連れてきてもらったって思ったら十分やて喜んでてたやん。
思わず息子の肩を、バシバシバシッと軽く叩いてしまったが、後は声にならない。
一瞬、腹ただしかったが、笑うしかなかった。
可笑しいと思ったよなぁ?
平日のこんな日に、あれだけ混むわけないやん!
今日は、ダイヤや毛皮のコートなんかを買いにくる、セレブな人が招待される日なんやで!
また、勝手なイメージを抱きつつ、私たちは百貨店をあとにした。
「google」に「会員様限定」の注意書きは、無理なようだ。
だけど、今回は「google」に騙されて正解!
おかげで、久しぶりの市内へのドライブは実現し、楽しい時間が過ごせた。
それに、又の機会に、息子は、百貨店へ連れ出してくれるそうだ。
今度は携帯電話、忘れず持っていかなアカンな。
煌びやかな町中の写真を撮って、「note」に載せることができるかもしれないし、息子と別行動で、ノビノビ買い物するのもいいな。
「こんな時こそ、携帯電話やろ」と、息子に飽きられた。
今回は、「商品券」のことで、頭がいっぱいだった。
県内唯一の百貨店でしか使えない商品券の出番は、またもや、引き延ばされた。