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カルチャーを社外に発信することで協業の成功度も上がる『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』【無料公開#6】

8月28日発売の『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』。マクドナルド・メルカリ・SHOWROOMで事業と組織の成長を加速させてきた著者が、カルチャーを言語化し共有化するための手法をご紹介いたします。組織運営に悩む経営者、人事担当者、マネージャー、すべてのはたらく人に向けて、「新しい組織論」を無料公開にて連載いたします。

カルチャーを社外に発信することで協業の成功度も上がる

企業のカルチャーは社内だけでなく、社外へ発信することも重要です。

それには主に2つの理由があります。

一つは社外パートナーとのプロジェクトを円滑に進めるため。もう一つは、採用活動や人材育成を優位に運ぶためです。

昨今、企業のなかだけで完結する仕事は少なくなってきました。

業務が高度化し、顧客ニーズも多様化するなか、より専門知識を持った企業や人とコラボレーションしたり、顧客の感性に近いモニターとともに商品開発したりする事例も増えてきました。

大企業がスタートアップと組んで新規事業開発を行ったり、ブランドのファンからアイデアを募り、商品企画を行ったりすることもあります。

一方で、「スタートアップ向けにハッカソンを行い、共同事業を推進するパートナー探しを行ったけど、ものわかれに終わってしまった」「デザイン会社に依頼し、ブランドの大幅リニューアルを図ったものの、期待するような売上の伸長は得られなかった」といった声も聞かれるようです。

ここで起こっているのは、いわゆる「カルチャーギャップ」。

相手とのカルチャーの違いを正しく認識しないままスタートした結果、すり合わせが不十分となり、成果につながらなかったということです。

これまでも日系企業と外資系企業の間でしばしばそういったことが生じていましたが、いまや日本企業のカルチャーも多様なものとなり、企業同士のカルチャーの相性によって事業が成功するか否かも決まってくるのです。

たとえば金融機関がテック系スタートアップと組み、フィンテックを開発するプロジェクトがあったとします。

かたや「信頼」「安心安全」をバリューにし、かたや「イノベーション」を標榜するような企業。当然、そのカルチャーは異なります。

ただ、その違いをそれぞれの強みと捉え、総和としてうまく掛け合わせれば、互いの弱みを補完しあい、優れたプロダクトを開発することができるでしょう。

金融機関から高い堅牢性を求められても、「大企業はこんな細かいところまで気にしなければならないのか」と、スタートアップにとって学びになりますし、大企業は「これほど意思決定をスピーディに行うのか」とスタートアップから学ぶ。

そうやって、協業を通じて互いのカルチャーを認め合い、「相手の仕事のやり方」を理解することで、業務を遂行する質とスピードは上がっていきます。

最も避けるべきは、「言っていることとやっていることが違う」ことです。

たとえば大企業がスタートアップに対して「パートナーとして気づいたことがあれば率直に指摘してほしい」「フラットな立場で対等にお付き合いしたい」と言っていても、実際業務を進めてみて、相手の不備を指摘すると、明らかに態度が悪くなり、プロジェクトの進行に支障をきたしてしまう。

あるいは当初の予定以上に工数のかかるような仕様に変更することになり、見積もりの見直しを要望すると、「それは困る」と突っぱねてしまう―。

こうした食い違いは、そもそも大企業側のカルチャーとして「フラット」は馴染まなかったのに、スタートアップに「いい顔」を見せようと繕ってしまったところに原因があります。

重要なのは、自社のカルチャーを率直に伝えること。お互いの本来的なカルチャーを理解することで、期待値ギャップを減らすことです。

それぞれが異なるビジョン・ミッション・バリューを持ち、違うカルチャーを持っているなかでは、業務の進め方やコミュニケーション一つ取っても違いが現れます。

しかし、それらを継続的にすり合わせ、議論するなかで、カルチャーへの理解は深まっていくはずです。


著者プロフィール

唐澤俊輔(からさわ・しゅんすけ)

Almoha LLC, Co-Founder

大学卒業後、2005年に日本マクドナルド株式会社に入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。
2017年より株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事・組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。
2019年には、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者)として、事業成長を牽引すると共に、コーポレート基盤を確立するなど、事業と組織の成長を推進。
2020年より、Almoha LLCを共同創業し、人・組織を支援するサービス・ツールの開発を進めつつ、スタートアップ企業を中心に組織開発やカルチャー醸成の支援に取り組む。
グロービス経営大学院 客員准教授。


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