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メルカリでは人事のことを「ピープル&カルチャー」と呼んだ『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』【無料公開#8】

8月28日発売の『カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方』。マクドナルド・メルカリ・SHOWROOMで事業と組織の成長を加速させてきた著者が、カルチャーを言語化し共有化するための手法をご紹介いたします。組織運営に悩む経営者、人事担当者、マネージャー、すべてのはたらく人に向けて、「新しい組織論」を無料公開にて連載いたします。

メルカリでは人事のことを「ピープル&カルチャー」と呼んだ

ここまで、カルチャーを浸透することの重要性を4つの観点から見てきました。

そして、日本でも少しずつではありますが、カルチャーを重要視し、事業戦略に並ぶ柱として取り組む企業は出てきています。

わかりやすい事例として挙げられるのは、メルカリでしょう。

メルカリではミッションを「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」として、それを実現するために「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be a Pro(プロフェッショナルであれ)」の3つのバリューを掲げています。

私は2017年9月にメルカリへ入社し、組織規模がおよそ3倍に急成長を遂げるさなか、約2年にわたって組織開発や人事施策に取り組んでいました。

ビジネスモデルが多様化し、組織の急成長と外国籍採用などダイバーシティも高まるなか、特に注力したのがカルチャーの言語化と浸透でした。

入社当初、私は社長室所属として人事制度の設計などを進めていましたが、「HRグループ、労務グループ、総務グループを統合し大きな組織に束ねたいので管掌してほしい」と、小泉さん(当時取締役社長で、現取締役会長の小泉文明氏)から話をもらいました。

そうして、2018年4月から、人事・組織開発の責任者として、採用から制度設計、育成、労務といった人事全般から、組織開発までに取り組むこととなったのです。

社長室の立場で俯瞰的に組織を見て、多くの社員とコミュニケーションをとってきた私の目には、メルカリの強みであり、競争優位の源泉はまさに「人」だと捉えていました。

メルカリで働くメンバー一人ひとりが、その急成長を支え、不可能を可能にしていったと言っても過言ではありません。

最初に、統合した組織の名称をどうするかを考えました。

「名は体を表す」ということわざの通り、名称はその部門の役割やミッションを規定するため、とても重要です。

統合後の組織の役割や責任範囲からすると、一般的には「人事総務」や「HR」と言われる領域ですが、私はそうした名前に違和感がありました。

HRとはつまり、ヒューマンリソース。「ヒト」を「モノ」「カネ」と並ぶ経営資源の一つとみなすため、その有効活用と効率性が求められます。

けれども私たちは「人」です。

労働条件や労働環境を調整するだけで、自動的にモチベーションやパフォーマンスが上がるものではありません。

もっと人として……一人ひとりの価値観を大切にして、自分らしく働ける企業でありたいと考えました。

そのほうがメルカリらしいと考えたのです。

また、総務という部門の役割の特性上、どうしても「なんでも屋さん」になって雑用ばかりに追われがちで、働く意味を見失ってしまう恐れがあります。

本来、総務の仕事は、メンバー一人ひとりが個々の仕事に集中できるようにサポートをし、チームの垣根を超えて組織の生産性向上に貢献することです。

特にメルカリの総務は、コミュニケーションの活性化を通じて、バリューを浸透させることを目的として活動していました。

「人事総務本部」ではなく、他にふさわしい名前があるのではないだろうか。私はそうチームに呼びかけ、ディスカッションしながら、自分たちの仕事の目的や意味を再定義し、より誇りを持って働ける名前を考えました。

それが「ピープル&カルチャー」というものです。

私たちはメルカリにおいて、ピープル=人にフォーカスし、カルチャーを浸透させる。それこそが自分たちの役割だと規定したのです。

そして、チームのメンバーは皆、人やカルチャーといった、本来の自分たちの存在意義や組織の目的やミッションに沿って、自発的に生き生きと働いて、大きな成果を挙げていったのです。

成果を挙げてくれたのはチームの仲間であり、僕は本当にチームメンバーに恵まれました。


著者プロフィール

唐澤俊輔(からさわ・しゅんすけ)

Almoha LLC, Co-Founder

大学卒業後、2005年に日本マクドナルド株式会社に入社し、28歳にして史上最年少で部長に抜擢。経営再建中には社長室長やマーケティング部長として、社内の組織変革や、マーケティングによる売上獲得に貢献、全社のV字回復を果たす。
2017年より株式会社メルカリに身を移し、執行役員VP of People & Culture 兼 社長室長。採用・育成・制度設計・労務といった人事全般からカルチャーの浸透といった、人事・組織の責任者を務め、組織の急成長やグローバル化を推進。
2019年には、SHOWROOM株式会社でCOO(最高執行責任者)として、事業成長を牽引すると共に、コーポレート基盤を確立するなど、事業と組織の成長を推進。
2020年より、Almoha LLCを共同創業し、人・組織を支援するサービス・ツールの開発を進めつつ、スタートアップ企業を中心に組織開発やカルチャー醸成の支援に取り組む。
グロービス経営大学院 客員准教授。


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