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【おすすめ本】正反対の似た者どうし(J・オースティン/高慢と偏見)

11月までウガンダです🇺🇬

今週もこんにちは。日本は涼しくなってきたと聞いています。秋でしょうか🌰

今週の一冊はジェーン・オースティン(1775-1817)の「高慢と偏見」。人間心理を深く洞察し、様々な登場人物を描き分けたイギリス文学の名作。原題はPride and Prejudiceで「自負と偏見」、「誇りと偏見」と訳されることも。

▼▼今回の本▼▼

舞台は東イングランドのハートフォードシャー。ベネット家の5人姉妹の家族模様とラブロマンスが描かれます。軸になるのは、皮肉屋で負けん気の強い次女エリザベスとちょっと偏屈な紳士ダーシーの恋。

ちなみにダーシーの年収は作中に1万ポンドとありますが、当時の女中は(衣食住付きですが)年収2〜4ポンドだったそう。ダーシー・・・ちょっと金持ちすぎです。なお、1995年のドラマでは彼を「英国王のスピーチ」「キングスマン」などで知られるコリン・ファースが演じています。イメージぴったり。

個人的にたまに読み返したくなる作品で、理由を考えたのですが、当時のイギリスや作者の仰々しさ、皮肉っぽさ、明るさに惹かれるんだと思います。家を訪ねる約束ひとつとっても(その設定のキャラとはいえど)この慇懃っぷり。

もしあなたが、私をお宅にむかえてくださることに御異存がなければ、私は十一月十八日、月曜日の四時までに、あなたとあなたのご家族をお訪ねする満足を持ちたいと思います。

J・オースティン. 高慢と偏見(上). 富田彬訳. 岩波文庫. 1994. p.103.

登場人物たちもチャーミングです。闊達なエリザベス、心優しい長女ジェーン、へそ曲がりな父親ベネット、とにかく素直な青年ビングリー、娘たちの結婚しか頭にない母親(ベネット夫人)、虚栄心の塊コリンズなど。

キャラたちの掛け合いを眺めるだけで楽しい。以下はエリザベスがとかく軽薄なコリンズから受けた結婚の申し込みを巡る両親との会話です。

「さて要件にうつるがね、お前のお母さんはお前にそれ(注:コリンズがエリザベスに結婚を申し込んだこと)をぜひ承諾させようとなさるんだ。そうじゃないかね、お母さん?」
「そうです、承諾しなければ、わたしは二度とこの子にはあいません」
「不幸な選択がお前の前におかれているわけだ、エリザベス。今日からお前は、お前の両親のどちらか一人と赤の他人にならねばならないんだよ。お前がコリンズ氏と結婚しなければ、お前のお母さんは二度とお前にはあわないつもりだし、僕はまた、お前が結婚すれば、二度とお前にはあわないつもりだ」

同上(上), p.181.

タイトルの「高慢と偏見」は主人公二人、ダーシーとエリザベスを指すようにも読めます。まるで「美女と野獣」みたいに。二人はそれぞれ欠点があり、互いに関わる中で自らを反省し、人間的に成長していくからです。そういう意味では、二人は正反対の似たものどうし。ダーシーはエリザベスに告げます。

わたしはあなたに高慢の鼻を折られたが、これは当り前のことです。(…)あなたは、わたしという男は、取りいるだけの価値のある夫人に取りいる価値のない男だということを、教えてくれました。

同上(下), p.244.

エリザベスは、ダーシーを拒絶した後で、次のように悔います。

彼女はただただ自分がはずかしくなった。ダーシーのことを考えても、ウィカムのことを考えても、自分が盲目で偏頗で偏見があって理不尽だったことを感ぜずにはいられなかった。

同上(上), p.327.

愉快な登場人物たちと無駄のない構成は、200年以上前の作品とは思えないほど読みやすいです。

下巻は出国前に職場近くのブックオフで買ったのですが、僕の最寄駅の本屋のレシートが挟まっていました。日付はなんと十年前、2014年6月25日。思いもよらない出会いがあることも、本を読む愉しさの一つですね。

(おわり)

▼▼前回の本▼▼


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