吉川歩

本が好き。アフリカと日本を行き来しながら暮らしています|'93|毎週日曜更新

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    アフリカと日本を行き来しながら暮らす会社員の日記

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    ファベーラ(ブラジルのスラム街)にまつわるはなし

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そばめしよ、こんにちは

2024.11.11 月 今週は仕事で関西出張だ。灘駅(神戸市)で未知との遭遇。 2024.11.12 火 関西には「そばめし」がある。そばめしは、短く切った焼きそば麺と白米を混ぜて鉄板で炒め、ソースで味付けした神戸市長田区のB級グルメだ。元々下町の工場の従業員向けの食べ物だった。従業員たちが持参した冷やめしを、注文した焼きそばと一緒に店の鉄板で混ぜ合わせてもらい、温めて食べたのが始まりらしい。 小さな頃、神戸の垂水に住んでいたことがあって、家で時々食べていた。母が作って

    • ボリチョップとメリーゴーランド【ウガンダの貯金事情】

      世界どこでも、お金は悩みの種。使い道はもちろん、貯金にも社会が出ます。日本では銀行預金が多いですが、ウガンダ・アチョリ地域では、グループセービングが一般的です。和訳すると、グループ貯金とでもなるでしょうか。 グループ貯金はあるグループの全員が一定額を定期的に積み立て、現金のプールを作ります。一人一人の負担は小さくても、全員分を集めると大きな額になる。積み立てた資金の運用方法には大きく分けて2つのパターンがあります。それがボリチョップとメリーゴーランドです。何じゃそりゃ?

      • 「好き」に会えたら──花水木の道の長さ

        「好き」は難しい。最近よくそう思う。 特別何かがあった訳ではない。ただ、当たり前に使われる「好き」という言葉に違和感を感じることが増えた。何かを「好き」になるのは、本当はもっと特別なことなのに、と感じる。 YouTubeで令和ロマンの漫才を見ていたら「この人たちは本当にお笑いが好きなんだね」という趣旨のコメントがあった。言いたいことは分かる。でも、お笑いが好きな芸人は他にもたくさんいると思ってしまう。面白さと「好き」は本来全く別のものだ。 サッカー漫画で主人公が窮地に追い

        • 【おすすめ本】読んだら、別の本になる(早瀬耕/未必のマクベス)

          今週もこんにちは。日本は衆院選ですね。肌寒くなってきたそうですが、みなさんお元気でお過ごしですか。 長年直せていないのが、色んな作家の作品をつまみ食いする癖です。一人の作家を深く読み込んでみたいのに、ついつい誘惑に負けて読んだことのない作家にばかり手が伸びてしまう。 でも、誘惑に負けて良かったこともあります。早瀬耕さんの「未必のマクベス」と出会えたこともその一つでした。 ▼▼今回の本▼▼ 主人公はIT企業に勤める中井優一。彼は香港の子会社に出向し、システムの暗号化方式と

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          【衆院選】海外出張中は投票できないんだって

          第50回衆議院議員総選挙が2024年10月27日に行われる。 僕は9月半ばから11月初めまでアフリカはウガンダで出張中だ。さてどうしようと思って調べたら、ショッキングなことが分かった。 僕は今回、投票できないのだ。どうやっても。 海外出張は選挙制度のエアポケット 総務省ウェブサイトの「当日投票に行けない方へ」というページには、当日投票ができない人のために、三つの方法が記載されている。 ①は期日前投票だ。今回は10/16-26で、出張期間中である。 ②は不在者投票。長期

          【衆院選】海外出張中は投票できないんだって

          アフリカでの一日のしごと|ウガンダ生活

          今週もこんにちは。みなさん、健やかにお過ごしですか🍵 突然ですが、変わった「しごと」をしている人の文章や日記が好きです。 知らない「しごと」を知ると、自分の「しごと」も見つめ直せる気がします。 僕自身、アフリカ(ウガンダ北部アチョリ地域)で年の半分を過ごしていて、よくお前こそ変わっていると言われます。確かに…… 今まで仕事のことは書いてこなかったけれど、アフリカに縁のある人もこのnoteを読んでくださっているみたいなので、今回取り上げることにしました。 今の僕は国際協力

          アフリカでの一日のしごと|ウガンダ生活

          【おすすめ本】正反対の似た者どうし(J・オースティン/高慢と偏見)

          今週もこんにちは。日本は涼しくなってきたと聞いています。秋でしょうか🌰 今週の一冊はジェーン・オースティン(1775-1817)の「高慢と偏見」。人間心理を深く洞察し、様々な登場人物を描き分けたイギリス文学の名作。原題はPride and Prejudiceで「自負と偏見」、「誇りと偏見」と訳されることも。 ▼▼今回の本▼▼ 舞台は東イングランドのハートフォードシャー。ベネット家の5人姉妹の家族模様とラブロマンスが描かれます。軸になるのは、皮肉屋で負けん気の強い次女エリ

          【おすすめ本】正反対の似た者どうし(J・オースティン/高慢と偏見)

          共有するとか、しないとか|ウガンダ生活

          地方出張の帰り道、車で、畑やススキが両側に広がる赤土のまっすぐな道を走っていると、アチョリ(僕がいる地域の名前)語のコメディがラジオで流れた。一緒にいた同僚に翻訳してもらったら、こんな小噺だった。 同僚たち、爆笑。最初は「良い子」を装って食事を断る。しかし、あっさりお肉に釣られる。それでも、自分のためではなく、相手のために行くのだと言い張る主人公が可愛いのは分かる。 でも、正直ピンと来なかった。誘われたなら、澄ました真似をしなくても、素直にご馳走になればいいじゃないかと思っ

          共有するとか、しないとか|ウガンダ生活

          キャラやバンドと歳をとってさ

          せっかくアフリカにいるし、アフリカのことを書きたいけど、今週はちょっとしたトピックがあった。米澤穂信さんの小説「小市民シリーズ」が完結したのだ。文庫本で5作のミステリー物だが、一作目は2004年刊なので、かれこれ20年追いかけてきたことになる。 (アニメも気になる) 一作目が出た当時、僕は小学五年生だった。新聞の書評欄で見つけて、たしか将棋大会の日に、大雨の中、遠くの本屋で買って帰った。 それから二十年。僕は三十代になり、ウガンダで最後の作品を読み終えた。さびしさや満足感

          キャラやバンドと歳をとってさ

          【おすすめ本】子供時代は知らない街角(山田詠美/晩年の子供)

          子供の頃のこと、どれくらい覚えていますか。 例えば、幼稚園の通学路、友達との初めてのケンカ、好きだったテレビ番組。我ながら、ぼうっとした子供で、記憶は少ないし、覚えていても断片的なイメージだったりします。それでも、何かの拍子に蘇る思い出があって、あの経験をした一人の子供が今の自分と地続きであると思うと、不思議な気持ちになります。 「子供時代」はだれもが通ってきた知らない街角のようです。 今週は、最近読んだ本ではなく、本棚から一冊を紹介します。山田詠美の「晩年の子供」という短

          【おすすめ本】子供時代は知らない街角(山田詠美/晩年の子供)

          暗闇で水を飲むひとよ

          だれにも話したことはないが、ずっと探しているものがある。 恋人や幸せのような大それた話ではなく、もっと小さなものだ。他人に話したことがないのは、人に言えない悩みだからではなく、その心の揺れがさざなみのように小さく、文字通り「言うほどのことでもない」からである。 それは例えば、失くした折り畳み傘のカバーとか、丁度いい町中華とか、お気に入りのパンツに映えるカットソーとか、座右の銘とか、手頃な丼茶碗とか、そういうものだ。頭の隅でずっとうっすら探している。でも見つからない。普段は

          暗闇で水を飲むひとよ

          書き出しカルタを作って遊ぶ

          外は大雨で、仕事も忙しく、家の中で朝から晩までPC画面しか見ていない、これで本当に生きていると言えるのか、そんな一日(8/29)。風呂に入って夜十時、何か人間らしいことがしたいと家の中を見回すが、本を読むエネルギーはない。 さて、どうしよう。そんな時に思いついたのが「書き出しカルタ」である。好きな書き出しを五十音集めてカルタにしてみるのだ。いきなり全音はハードルが高いので、1列につき1つ、好きな書き出しを並べてみた。 以下に列記する。①家にある②すべて違う作家の作品、とい

          書き出しカルタを作って遊ぶ

          アフリカ暮らしのこよみ|ウガンダ生活

          日本の都市とアフリカの暮らしの大きな違いは、季節にどれだけ左右されるかだと感じることがあります。 例えば、雲は出ていても、雨が降らない時。日本の街で暮らしていると「今日、傘持ってく?」で済むところが、アフリカだと「畑の作物が枯れてしまうかも」という切実な心配に変わるのです。 アフリカの農村では季節に生活を合わせます。農村人口の大半は農家で、雨が降らないと、食べ物を作るための農業ができません。下図はアフリカ、僕のいるウガンダ北部はアチョリ地域での一年をまとめたもの。 雨季

          アフリカ暮らしのこよみ|ウガンダ生活

          【おすすめ本】人類がはじめて月を歩いた夏だった(オースター/ムーン・パレス)

          今週もこんにちは。今日は実家の名古屋に帰省してきます🙋 作家の訃報に接してその作品に触れる、ということが時々あります。最近は大江健三郎さんとか。亡くなってから作者に親しむこともあり、そんな時は良い作品に出会えた喜びと後悔がないまぜになった気持ちになります。 ポール・オースターも今年4月に亡くなり、久しぶりに「ムーン・パレス」を読み返しました。大学以来だから、十年ぶり。青春と喪失、忘れえぬ痛み。そんなキーワードにビビッとくる人にはおすすめの一作です。1989年発表。 ▼▼

          【おすすめ本】人類がはじめて月を歩いた夏だった(オースター/ムーン・パレス)

          ふたりぼっちの青春【映画「ルックバック」感想】

          映画館に映画を見にいくのが、少し苦手だ。話しても、動いてもいけないと思って緊張するのかもしれない。行って後悔したことはないのに、自分のペースで読める本にばかり手が伸びてしまう。 でも、先日見に行った映画は本当に良くて、「早く見終わりたい」じゃなく「もっと見たかった」と思った。「チェンソーマン」の藤本タツキ原作・押山清高監督の「ルックバック」だ。 「ルックバック」は同級生の女の子二人が漫画を描き始める青春映画。皮肉屋で一途な藤野と抜群の画力を持つ引きこもりの京本。小学生で出

          ふたりぼっちの青春【映画「ルックバック」感想】

          人が変わるなんて、薬味を1回頼むくらいのこと

          僕はアフリカはウガンダと日本を行き来する仕事をしている。ひと月半おきに日本とウガンダを往復し始めてもうすぐ3年。 とはいってもウガンダはまだまだ謎だらけだ。一つ知れば、二つ謎が増える。 でも、最近ささやかな嬉しいことがあった。 苦手だった食べ物を一つ克服したのである。 それはシアバターだ。 まず「食べるの?」って話ですが、はい、食べるのです。 僕の好きなデンゴーというウガンダ料理がある。豆(ササゲ)のペーストで、ポタージュのように濃厚。大体どこのローカル食堂にもある人気

          人が変わるなんて、薬味を1回頼むくらいのこと