「世界中の翻訳者に愛される場所」〜松永美穂
本の冒頭で、まず驚いたレジデンス制度
その中に
トランスレーター・イン・レジデンス と言うものがある。
つまり翻訳者のための家だ。
(翻訳者のための無料で滞在できる場所を提供する制度)
著者 松永美穂さんは、ドイツ文学の翻訳者。
オランダとの国境に近い町 ドイツのシュトラーレンで
各国のドイツ文学の翻訳者と共に過ごした日々を書いている。
それぞれに本棚もある個室が与えられ、
自分スタイルで机に向かう。
まさに一期一会の出会いもあったり
何度も偶然に同じ翻訳家に出会う機会もあったり。。
それは一つのコミュニティだ。
本の中で
翻訳は文学作品の寿命を伸ばす、とダムロッシュは指摘する
と書かれてあったが、
まさに目からうろこ。
私は海外文学が好きです とか 世界文学が好きです とか
それは、「翻訳文学」が好きだと言うことじゃない?
(世界各国の言語を理解できる人を除いて)
今までちっとも気が付かなかった。
去年、めちゃめちゃマイナーな言葉を選んだ翻訳家に
スポットを当てた本を読んだ。
ノルウェー語、バスク語 etc、
その言語を選んだ経緯が面白かった。
文体とは作家の心だと何かで読んだが、
翻訳家は、どこまで作家の思いを汲み取れるか
そして、その心と読者の心を繋ぐ架け橋かと思えば
なんて素晴らしい仕事なんだ!
私は、柴田元幸や岸本佐知子の翻訳する本が好きで
彼らの言葉のセンスで日本語の物語として楽しむ。
付録として世界中の翻訳家の家が載っていた。
ヨーロッパが一番受け入れ場所が多く51ヶ所。
日本では、京都の生活も味わってもらおうと、
約1ヶ月間の滞在期間だが
京都の大学で文学を教える先生たちが中心になって、
レジデンシーが始まっている。
また、日本には900万個の空き家があり。
その活用の道も願っている松永さん。
とてもゆったりとしたリズムの中で
仕事をすることの喜びがひしひしと伝わってくる本でした。