【幕末】坂本龍馬は誰に暗殺された?
幕末維新の英雄として、坂本龍馬は真っ先に名前が上がる人物だ。
やはり、様々なニュースなどを見ていると、その魅力は多くの人に浸透していると、強く感じる。
そんな坂本龍馬は、1867年12月10日、何者かによって暗殺された。(近江屋事件)
幕末において、薩長同盟の成立や大政奉還の実現に大きな貢献を示した人物だっただけに、その暗殺の衝撃は、今でも話題になるほどだ。
幕末の英雄としてもトップクラスの人気と知名度を誇る、坂本龍馬を誰が暗殺したのか?
国際日本文化研究センター教授の磯田道史先生が出版した、「龍馬史」(文春文庫)を参考にしながら、龍馬暗殺の実行犯について整理した。
1. 明治新政府は龍馬暗殺の実行犯を逮捕している
まず初めに、龍馬暗殺の実行犯は、明治新政府によって逮捕されている。
その人物とは、幕末当時、京都の治安維持組織「京都見廻組」に所属していた今井信郎だ。
当時の今井は、「京都見廻組」の佐々木只三郎が率いる部隊に所属していた。
明治新政府に逮捕された今井の証言によると、この佐々木をリーダーとする「京都見廻組」隊士7名(今井を含む)で、龍馬を暗殺したことになっている。
※今井以外の6名は、戊辰戦争の戦いにおいて戦死
2. 終わらない真犯人の議論
明治新政府の調べによって、龍馬暗殺の実行犯は、「京都見廻組」の犯行ということになった。
しかしながら、世間では「龍馬暗殺の真犯人は別にいる」といった噂があがり、事件発生からこれまで、様々な「黒幕説」が挙がっている。
以下では、代表的な「真犯人説」を挙げてみよう。
2-1. 新撰組黒幕説
まず、一番有名な黒幕説が「新撰組」だ。
「京都見廻組」と並び、京都の治安維持部隊として動いていた「新撰組」は、池田屋事件を起こすなど、反幕府の武士を厳しく取り締まっていた。
そんな「新撰組」は、龍馬の暗殺現場の遺留品に、新撰組隊士の原田左之助の所持品'らしき'ものがあったことや、龍馬と共に暗殺された中岡慎太郎の死ぬ間際の証言などから、もっとも疑われていた。
2-2. 紀州藩黒幕説
龍馬の仲間が、「龍馬暗殺」のニュースを聞いた時、犯人として真っ先に疑ったのが「紀州藩」だという。
龍馬と「紀州藩」の間には、「いろは丸」の海難事故をめぐって、大きな禍根があった。
「いろは丸」は龍馬が自らの活動に使用していた蒸気船だ。
この「いろは丸」は、龍馬が暗殺される半年ほど前に、「紀州藩」の所有していた蒸気船と接触して、沈没している。
この海難事故に対して、龍馬は「紀州藩」に抗議を申し立て、多額の賠償金を獲得した。「紀州藩」内には龍馬とその仲間たちに対して多きな恨みを抱く人も多くいたという。
2-3. 土佐藩黒幕説
「土佐藩黒幕説」は、龍馬の出身地である土佐藩が真犯人とする説だ。
土佐藩は伝統的に、身分差別の激しい藩だった。武士でも、上級武士(上士)と下級武士(郷士)は明確に分けられており、住む場所も異なっていた。
そんな身分差別の激しい土佐藩において、龍馬は下級武士(郷士)だった。
「土佐藩黒幕説」は身分を飛び越えて、自由に行動する龍馬に危機感を覚えた土佐藩が、龍馬を暗殺したとする説だ。
2-4. 薩摩藩黒幕説
最後は、「薩摩藩」を真犯人とする説だ。
「薩摩藩」は傑出した諜報能力と、汚いことも確実に成し遂げる力を持っていた。
また、「薩摩藩」は明治新政府において勝者側の立場となったことから、「京都見廻組」に犯人をでっち上げたという噂も囁かれていた。
3. 犯人を解くカギは、暗殺当日の龍馬の行動
以上見てきたように、「龍馬暗殺」の実行犯は、これまで様々な説が語られてきた。それぞれの説への反論は、磯田道史先生の「龍馬史」を見てもらいたい。
ここでは「結局、誰が実行犯だったのか?」について整理する。
「龍馬暗殺」の実行犯を考えるとき、暗殺当日の龍馬の行動を追ってみると、実行犯が浮かび上がってくる。
龍馬は、1867年12月10日の夜に京都の近江屋で暗殺された。
それでは、12月10日の日中は何をしていたのだろうか?
12月10日の日中の龍馬は、ある人物のもとを訪れていることが分かっている。
その人物とは、当時、江戸幕府の重要人物だった永井玄蕃(尚志)だ。
江戸幕府の方針を決めるほどの重要人物だった永井の元を訪れた龍馬は、大政奉還後の国の方針について、永井と話し合っていたらしい。
しかし、この訪問は龍馬にとって大きな不運だった。
なんと、永井が滞在していた屋敷のすぐ近くに、「京都見廻組」の佐々木只三郎の下宿先(やす寺)があったのだ。
永井を訪問したことによって、佐々木らにつけられた龍馬は、下宿先の近江屋で31年の生涯を終えることになる。
ここまで、様々な黒幕説が語られてきたが、「京都見廻組」が実行犯とする説が最も説得力があり、現実的でもある説だ。
更なる考察については磯田道史先生の「龍馬史」をぜひ参考にしてほしい。
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