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『エルヴィス』で「エルヴィス・プレスリー体験」を!
歌い踊るエルヴィスに大興奮!
Amazonプライムで配信が始まったので観てみました『エルヴィス』。
エルヴィス・プレスリーの伝記映画なのですが、体験型というか・・・映画を観てると1950年代のエルヴィスのライブに連れていかれて、彼が現れて目の前で歌ってくれるような・・・もう観客たちと一緒にキャ~ッ!ですよw。
1950年代当時にどうしてエルヴィスがなぜ世界をあんなに魅了したのか、どうして世界からあんなにも愛されたのか、が体感できました。
映画としてどうかとか、芝居がどうかとか言う前に「エルヴィス・プレスリー体験」ができるライドとして素晴らしかったです。
いや正直、いままでエルヴィス・プレスリーの曲って「懐メロの、のんびりした音楽」としか聴こえてなかったんですけど、同じ音楽がこの映画の中では超エキサイティングな音楽として響いていたんですよ。そして歌うエルヴィスのカッコよさ!セクシーさ!いや~魅了された。
それから彼の音楽をダウンロードして聴きまくってるんですが、もうぜんぜん懐メロには聴こえない。めっちゃ踊ってます(笑)。 映画『エルヴィス』を観たことで、自分の中のエルヴィス像がすっかり更新されてしまいました。
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エルヴィスの何が凄いのか分からない世代のためのライド
若い人と話してると、「ビートルズの偉大さが分からない。意外と普通ですよね?」とか「ゴダールの偉大さが分からない。意外と普通ですよね?」とか「手塚治虫の偉大さが分からない。意外と普通ですよね?」みたいなことをしばしば言われます。
そういう時はだいたい「いやいや違うって!当時はあんなの普通じゃなかったんだよ!彼らのやったことは革命だったんだよ。その革命のあとに世界中のクリエイターが彼らの真似をしたから、彼らのコピーやコピーのコピーが出回って、それで見慣れた感じになっちゃっただけなんだよ!」と興奮気味に返すんですが(笑)、革命後に生まれた人は最初からその文化があたりまえにあるから、その凄さが分からないんですよね。(YMOとかファーストガンダムとかでもよくこの会話するw)
インターネットが当たり前の時代に生まれた人はインターネットの便利さの衝撃を知ることはできないし、ウォッシュレットが当たり前の時代に生まれた人はウォッシュレットの便利さの衝撃を知ることが出来ないし、レンタルビデオ店が滅んだ後に生まれた人たちはレンタルビデオによって映画を家で観れたことの衝撃をもう知ることはできない。
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映画『勝手にしやがれ』の路上で手持ちカメラでの撮影だって、手持ちカメラ全盛のいま観るとべつに普通に見えるのだけど、公開された1960年当時にリアルタイムで観た人たちにとってはどんなにか衝撃だったことか。
その衝撃を今の人に伝えるのってすごく難しいと思うのですが・・・この映画『エルヴィス』はそれをやっちゃってるんですよねー。ボクみたいにエルヴィスの何が凄かったのかが分からない世代に、それを体験させてしまうんだから。
1950年代の音楽がどんな感じだったのかを当時の音楽で描写しながら、最新のHIPHOP音楽とかを要所要所に地味に挟むことによって、その音楽が当時の若者にとってどんな音楽だったのかを感覚的に納得できるよう仕掛けてゆく演出・・・この演出は賛否両論あるようですが、ボクは見事だったと思います。当時の音楽にすんなり入って行けましたから。
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エルヴィスは女の子たちの何を解放したのか
そして最高に素晴らしかったのが最初のライブシーンでの観客の女性たちの興奮と熱狂の描写です。いや~最高だった。
「エルヴィスの小刻みに動く股間のアップ」と「それを見てる女の子たちの表情のアップ」の切り返しが延々と続くという・・・映画史に残る名シーン(笑)。 その女の子たちの困惑から始まって絶叫に至るまでの芝居がびっくりするくらいリアルで、いや~あれ絶対エキストラじゃないよね。演技が上手すぎるもの。
エキサイティングな音楽に合わせて揺れ動く男性の股間を見ていて、女の子たちが最初は困惑しながら、でも口元に笑みが現れて、目が離せなくなって、うわっと小さな絶叫が漏れてしまう。その小さな絶叫が繰り返し漏れて、やがて大きな絶叫の中に飲み込まれてゆく!
ぎゃー!!!
これを女優さんたちが説明的な芝居じゃなくて、反応の芝居として超リアルに演じていて、素晴らしい編集もあってその過程がシーンとして超詳細に描写されているんですよねー。
彼女たちの反応の芝居で、1950年代の女の子たちが何に縛られて生活していたか、そしてエルヴィスが彼女たちの何を解放したのかが、一言のセリフも無く饒舌に語られているんですよ。 ここ、おそらくこの映画の中で一番素晴らしいシーンだと思います。超笑ったけどw。
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『エルヴィス』の演技について
最後にこの映画の「演技」についての話を一応しておきますと・・・そんなわけで観客に「エルヴィス・プレスリー体験」をさせるためのライドであるこの映画は、当然エルヴィスの内面には入ってゆきません。
この映画は、当時もっとも最前列でエルヴィス体験をしたであろう人物、マネージャーのトム・パーカー大佐の視点で語られてゆます。
なのでトム・パーカー大佐の内面は描写するんですが、エルヴィスの内面がほとんど描写されてないんですよ。
トム・パーカー大佐のアップのショットは内面が観客に伝わりやすいアングルで取られているのに対して、エルヴィスのアップのショットは俳優のオースティン・バトラーが内面を演じていてもそれが微妙に観客に伝わらないようなアングルで撮られているし、編集されているんです。
なのに!・・・トム・パーカー大佐を演じている名優トム・ハンクスの演技がディテールが足りないんですよねー。『ターミナル』とか『キャスト・アウェイ』であんなにも豊かな反応の芝居をする俳優だった彼が、この映画では反応が鈍いというか、齢なのかなあ。結果、後半この大佐が何を考えてるのかがよくわからない感じになってしまった。
せっかく長回しでエルヴィスを見ているショットとかでも、ずーっと同じ顔していて芝居に時間経過によるディテールの変化が無いんですよ。
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エルヴィスと大佐の「関係性」の変化
この映画、トム・ハンクスが絶好調な時に撮られていたら傑作になったんじゃないかなーと思います。だってこの映画の後半はトム・パーカー大佐とエルヴィスの関係性の変化がメインテーマですからねー。
単なるビジネスパートナーだった彼ら2人が、家族のような関係になり信頼を深め、やがてお互いに共依存しはじめ、そしてもうお互いに離れて生きることも一緒にもいられない関係になってゆく。
その過程が「関係性の芝居」で演じられたら、どんなに素晴らしかったか!切なかったか!と思うのですが・・・その悲劇の描写があるはずシーンの数々で、エルヴィスの内面は撮影されず、トム・パーカー大佐の内面は上手く演じられていないわけですから。いやー残念。
でも映画後半もライブパフォーマンスのシーンは最高です。ここでも長年の謎だった、「なぜエルヴィスは晩年、ラスベガスの高級ホテルだけでコンサートをやっていたのか?そしてそのコンサートはどんな内容だったのか?」が余すところなく克明に描写されているので。
太った晩年のエルヴィスは、ショービジネスの最悪のケースのアイコンとして知られてましたが、そんなエルヴィスが晩年、薬でフラフラになりながらもエキサイティングで最高なステージをやっていた!ということを知ることができて、そしてそのステージを体験出来て、ボクは大満足でした。
オースティン・バトラーはエルヴィスのパフォーマンスの映像を研究しまくったそうで、ステージのシーンはどの時代のパフォーマンスも、まさにエルヴィスそのものになってましたねー。
いや~素晴らしい「エルヴィス・プレスリー体験」をさせてくれました。
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体験型ライドとしての映画
この新発明といってもいい「体験型」の伝記映画って、もっといろいろ作ったらいいと思うんですよね。 まずはビートルズあたりから・・・ライブツアーで世界中を熱狂させていた時代のビートルズを体験したい!
あとゴダールね。それとブルース・リー。日本人ではやはりYMOと、小津安二郎、手塚治虫、あと「巨人の星」や「あしたのジョー」時代の梶原一騎とか。今となってはその当時の盛りあがりかたが想像しにくいあたりを体験したい。
過去を体験できるタイムマシンとしての映画・・・そういう意味で『エルヴィス』、超おススメです。
小林でび <でびノート☆彡>