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#連載小説
『ヘッドハンティング』(9) レジェンド探偵の調査ファイル(連載)
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著
【第四話】ヘッドハンティング
9 何回目かの公判のとき、裁判長が法廷検事(取り調べをする検事とは別人)に
「ところで、検察に聞きます。本件の被害者は、警察に訴えるまで、どうしてこんなに時間を掛けたのですか? Tホテルのすぐ近くに、渋谷署があるはずです。被害者の調書を見ると、生命の危機を感じたように言ってますが、この点はいかがですか?」
『ヘッドハンティング』(8) レジェンド探偵の調査ファイル(連載)
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著
【第四話】ヘッドハンティング
8 私が才川氏に関わったのはこの一回だけで、依頼人から引き受けた調査でも、不法な行為をしたわけではない。逮捕はまさに青天の霹靂だった。しかし、取り調べを受けるうちに、私にかけられた容疑が少しずつわかってきた。
逮捕から三週間が経過、否認のまま起訴された私は、十二月七日、足立区小菅にある「東京拘置所」に移
『ヘッドハンティング』(7) レジェンド探偵の調査ファイル(連載)
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著
【第四話】ヘッドハンティング
7 村井支社長は満足そうな表情で報告書を読み終え、「どうもご苦労様でした」とねぎらいの言葉を掛けてくれたあと、「ところで、お宅の業務は調査だけですか?」と妙なことを聞く。私が、そうですと答えると、こんなことを言い出した。
「実は相談なんですが、才川さんに会ってもらえませんか?と言いますのも、うちはT社と同
『ヘッドハンティング』(6) レジェンド探偵の調査ファイル(連載)
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著
【第四話】ヘッドハンティング
6 約束の報告日がやってきた。竹田は「ダイヤモンドのゴミ」をやはり入手できなかった。例のたった一枚の紙切れを持たずに依頼人の会社を訪問した。支社長室でことの顛末を報告しながら恐る恐る依頼人を観察する。
「エッ、だめだったんですか」
明らかに落胆する様子がわかり、こちらもいたたまれなくなった。
私は、(
『ヘッドハンティング』(5) レジェンド探偵の調査ファイル(連載)
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著
【第四話】ヘッドハンティング
5 事務所に帰ってT社を調べると、同社はバブルが崩壊したあたりから急速に伸びた会社だった。業容をスリム化したいゼネコンにとって、T社の扱う特殊機材はまさに渡りに舟だったのである。W社が業界に売り込みたい建設機材は、T社の才川という取締役がほぼ一手に仕切っていた。
T社はこの商品のお陰で急速に業績を伸ばし
『ヘッドハンティング』(4) レジェンド探偵の調査ファイル(連載)
『現役探偵の調査ファイル 七人の奇妙な依頼人』 福田政史:著
【第四話】ヘッドハンティング
4
才川氏に会ったのは、関西に本社があるというW社という建設機材会社から調査を依頼されたことに端を発していた。
逮捕の四カ月前、梅雨前線が北上し、東京もそろそろ梅雨入りしそうな六月初旬のことだった。事務所に「調査のことで相談したい」という電話があり、私は、池袋にあるW社を訪ねた。
建物を一棟借りし