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クリエイティブの効能を知る(探究演習)

大学院で学ぶ「学習のデザイン」。今回はクリエイティブとメンタルヘルスの関係を研究した本を紹介します。

医学的に見たクリエイティブの効能

取り上げる本はこちらです。著者は生理心理学の博士号を持っており、ウェルネスに関するスタートアップ事業を展開している方です。

クリエイティブな人というと、むしろメンタル不安定な人が多い印象を持つのではないでしょうか?

一方で、僕が仕事で関わったクリエイティブな人は、メンタルが強いというか、おおらかな人が多い印象です。良くも悪くもテキトー。なんとかなる精神だったり、不安な状況を楽しんだりもしています。僕もそのタイプかもしれません。

4つのクリエイティブ

まず4C理論を紹介します。ジェームス・カフマンという心理学者が提唱した、クリエイティブには4つのタイプがあるという考え方です。

  • Big C:社会を変えるような革新的な影響を与えるもの。

  • Pro C:専門家が発揮するもの。

  • Little C:日常的な創造性で、誰かの役にたっているもの。

  • Mini C:個人の中の創造性で、アイデアを思いつくなどのこと。

Big Cはスティーブ・ジョブズがiPhoneを世の中に出したようなこと、Pro Cはデザイナーやミュージシャンなどが作品を出すようなこと、がそれぞれ当てはまります。ここはイメージしやすいかと思います。

Little CとMini Cは日常生活の中で行われます。料理で例えてみましょう。「カレーにチョコを入れてみたら美味しくなるのでは?」といった工夫をして料理することがLittle Cです。Mini Cは「もっと甘いカレーがあったらどうだろう?」と頭の中で考えるようなことです。

よく、「私はクリエイティブではない」といった会話を耳にしますが、それはBig CやPro Cの話で、Little CやMini Cの創造性は誰もがもっています。Big Cを実現した人も最初はMini Cからはじまり、積み重ねの結果です。

4Cモデルをもとに自身が作成した図

ちなみに僕の研究は、この考えをもとに、学校で創造性を段階的に学ぶ方法を模索しているので、4C理論については、またどこかで詳しく取り上げられればと思います。

メンタルとどう関係する?

本書の趣旨はクリエイティブとメンタルとの関係です。

要点をざっくりまとめると、クリエイティブな人はものごとをポジティブに捉えます。すると、困難な状況であっても前向きに取り組むことができて、メンタル不調を起こしにくくなります。

不確実性の高い社会といわれる現代、答えを求める従来型の勉強に依存してしまうと、不安や心配の助長になりかねません。なのでクリエイティブを専門とした職業だけでなく、すべての人に必要なことだといえます。

本の中では、日常生活の中でできるヒントを紹介しています。笑顔でいよう、音楽を取り入れよう、心理的安全性の高い環境にいよう、しっかりと寝よう、などなど。

僕はこれを学校の中に取り入れたら良いのでは?と思います。

日本人とクリエイティブ

調査によると、自分自身を表す言葉として「クリエイティブ」と答えた日本人は19%で最下位でした。他の調査でも、日本人は不安傾向、慎重傾向、リスク回避思考が高く、クリエイティブの意識が低いことがわかります。

でも一方で、他国が考える「最もクリエイティブな国はどこか?」に対しては、日本が1位になります。

このギャップは何なのか?一言でいうと「自信のなさ」だと思います。

なぜ日本人は「自分はクリエイティブではない」と思ってしまうのか。気質や文化的な側面も大きいとは思うけど、家庭・学校・会社のなかで、クリエイティブを尊重しないことや、クリエイティブは一部の人のためのもの、といった認識が影響しているのでは?と、僕は考えます。

特に学校では、答えを解くためのテスト教育が重視されています。

テストは点数で評価しやすいです。対してクリエイティブな活動は評価が難しいです。いや、そもそも評価することが不自然かもしれません。

点数評価からの脱却が、クリエイティブな人材を育てることの第一歩だと思うのですが、実現までの道のりは遠そうです。みなさんはどう考えますか?

学んだこと

メンタルの視点からクリエイティブの効能を主張したのは、自分にはない気づきだったので、なるほどでした。

クリエイティブ=前向きにとらえる、という関係をもう少し深く考えると、以前紹介したネガティブ・ケイパビリティにもつながってきます。

単に楽観的なだけではなく、不安な状況にいても、急いで答えを出そうとせずに長く付き合う姿勢も、クリエイティブには欠かせないことです。

こういったことって、理屈ではなく実際に体感してみないとわからないし、いきなり深刻な状況だとパニックになってしまうので、身近なことから少しづつ経験を重ねていくことが大事だと思います。

そのために、学校は有効な場であるはずです。

今日はここまでです。

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ジマタロ
デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。

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