ケン・ロビンソンのCreative Schools(探究演習)
大学院で学ぶ「学習のでデザイン」。後期の授業まではまだ期間があるので、しばらくは論文の下調べで読んでいる本を紹介します。
今回は教育実践者である、ケン・ロビンソンさんの本の紹介です。
数学とダンスは同じくらい大事
まずこちらの有名なTED TALKから。
イギリス人らしく皮肉もりだくさんですが、彼のテーマは教育と創造性、特に子どもについての、です。
その結果、科目の中でこんなヒエラルキーができてしまっています。
上位:数学・言語・科学
中位:歴史・地理
下位:美術・音楽・体育
最下位:演劇・ダンス
踊るのが大好きな子どもは、やがて腰から上、そのうち頭に、さらに脳の片側だけにフォーカスされてしまいます。これが教育現場の現状です。
芸術は今の時代に最適な学び
では、創造性が育つ教育とはどういうものでしょうか?その内容がこちらの本に書かれています。
本の内容の範囲は多岐にわたるので、ここでは教える観点についてだけ注目します。
カリキュラムをコンピテンシーから再編成しようという動きがあります。8つのCで構成されたわかりやすい指針がこちらです。
Curiosity(好奇心)質問し世界の仕組みを探究すること
Creativity(創造性)新しいアイデアを生み出し応用すること
Criticism(批判的精神)情報や考えを分析し意見や判断をすること
Communication(意思伝達)考えや感情をはっきりと伝えること
Collaboration(協働)他者と生産的に取り組むこと
Compassion(思いやり)他者の心をわかり行動すること
Composer(平静心)内面の感情に向き合いバランス感覚を養うこと
Citizenship(市民性)社会に向き合い参加すること
これらのコンピテンシーが重視される背景は、社会で活躍するために求められていることが変わってきていることがあげられます。
そして、これを体現している学校の例が紹介されています。
芸術的な取り組みは、好奇心や創造性を持ったうえで、作品の意図を自分の言葉で伝えて、批評や感情に向き合うことが求められます。さらに他者との関わりを通じたり社会とつながる、という経験を踏むことでいま求められているコンピテンシーを学ぶことができています。
分けないことが大事
数学などの知識が重視される科目と、芸術などの感覚やセンスといった言葉で片付けられがちな科目は、対立的にあつかわれがちです。でも、そうではなく融合することが大事です。
学力を測る指標としては、PISAランキングがあります。
しかし、ここで上位に入る国と、起業がさかんな国は反比例しています。
加えて日本や韓国は顕著で、教育に高いお金をかけているのに、その代償なのか、若者の自殺率は増加しています。
テストの成績のみの指標から脱却しなければ、今の時代とズレた教育を続けることになり、自身にとっても社会にとっても幸せな学びにはつながりません。それを変えていくのが創造的な学習方法です。
学んだこと
ケン・ロビンソンの活動から影響を受けて、世界のいろいろな学校で、創造性を取り入れる動きが増えています。でも、教育業界にながくいればいるほど、彼がいうことは逆行した考えで固まってしまうので、取り入れることは難しいと感じてしまうかもしれません。
ブレイクスルーを起こす1つのカギが、学校教員ではない、でも教育に間接的な関わりを持っている人たちではないかと考えます。そのなかに創造性を実践しているデザイナーは、期待されるべきスキルをもった人たちであると考えます。
この接点をつくることを考えていきたいと思います。
今日はここまでです。