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ボードゲームづくりで創造性を学ぶ(探究演習)

大学院で学ぶ「学習のデザイン」。今日は創造性を伸ばすために、ボードゲームをつくることについて考えてみます。


去年の1年間は「創造性を学ぶには、どういった学習モデルが効果的か?」といった理論を中心に研究をしていました。

一方で、デザイナーとしての自分には「理論だけで創造性を語るのってどうなの?」という思いもありました。ロジックも大切ではあるけど、やってみないとわからないものが創造性だから。

じゃあ、もっと研究対象を具体化しようと思いました。そこで、

カードゲームとかボードゲーム自体をつくってみることって、デザインのいろんな要素が含まれていて、すごくいいテーマなのでは?

という考えにいたりました。なんで、ボードゲームづくりが創造性学習に効果的なのか?はまたどこかで説明するとして、今回は、じゃあボードゲームってどうやって作るの?そもそもどんな要素で構成されているの?ということの整理からはじめてみようと思います。

こんな本があった

ボードゲームやカードゲームのデザイナーと言われている人は少なくないですが、作り方を説明する本って、意外とありません。そんな中でもこちらの本は比較的新しく、体系的にまとまっています。

大きくは3章で構成されています。

  1. ゲームの構成要素

  2. ゲームのメカニクス

  3. ゲームを作ろう

3章は実例なので、ここでは1と2について取り上げます。

構成要素1. コンポーネント

コンポーネントとは、ゲームで使われる物理的なアイテムです。

  • ダイス

  • カード

  • ゲームピース

  • ボード

  • タイル

  • 通貨

  • 資源

  • ツール

  • タイマー

  • トークン

  • プロップ

例えば陣地取りのボードゲームで大人気のカタンは、ダイス・カード・ゲームピース・ボード・タイル・資源・トークン・プロップといったもので構成されています。

カタンまでいくとかなり高度なゲームデザインなので、まずはミニマムのカードからはじめて、徐々に展開を考えるのがよいと思います。人狼ゲームなんかはミニマムのカードだけでできるので、たくさん使わなくても楽しいゲームはできるのが、ゲームづくりの面白い点です。

構成要素2. ルール

ルールとは制約であり、自由の反対です。なんでも自由よりもルールによる制限のもとで遊んだ方が面白いのが、ゲームの奥深さでもあります。

デザインをする行為には、何らかの制約がつきものです。予算が限られている、今年中につくらないといけない、この場所でつくらないといけない、使う人の特性を考えないといけない、など。

デザイナーはこういった制約の中から創造的な解決策を見出します。

つまり、ゲームのルールを考えることは、とっても創造的です。ボードゲームでは、いくつかの代表的なルールがあります。

  • ゲームの仕組み:プレイヤーにどんな選択肢があるか、運の要素があるか

  • ターンオーダー:UNOでは通常は順番通りで、スキップや逆回りがある

  • 終了の方法:双六なら上がる、ポーカーなら勝負するか降りるか

  • 勝ち方:何を評価するか、勝つために何が必要か

制約が楽しさになる遊び方を考えるのが、創造的なゲームづくりです。

構成要素3. ゲームプレイ

ゲームプレイとは、上にあげた「コンポーネント」と「ルール」をどう使ってプレイヤーが遊ぶか?をデザインすることです。

ゲームプレイは突き詰めると「運」か「選択」の2つで構成されます。

トランプのババ抜きはほぼ運です。次のプレイヤーのカードから一枚抜くというルールがある中で、どれを抜くかが選択肢として残されていますが、推察する情報はほとんどありません。(抜かれる側が意図的に違いを出して駆け引きをすると、選択の要素が少し増えますね)

一方で、麻雀はババ抜きとルールが似ているけど、運よりも選択要素が多いので実力の差が出やすいゲームです。

ほとんど運だと飽きてしまいがちだけど、実力差が出過ぎると遊ぶ人を絞ってしまうことになるので、運と選択のバランスを考えて、コンポーネントとルールを用いる必要があります。

ゲームのメカニクス

コンポーネント・ルール・ゲームプレイの3つを使って、ゲームの遊び方を組み立てる=設計することがメカニクスになります。代表的なパターンだととらえると分かりやすいかと思います。

本の中ではこのようなパターンが紹介されています。

  • ターンオーダー:7並べ(順番に手持ちのコマを置く)

  • アクション:ブラックジャック(カードを取るか取らないかを選ぶ)

  • ムーブメント:将棋(コマを動かして変化を起こす)

  • ボードとマップ:人生ゲーム(ボードに沿ってコマを進める)

  • ランダム化:ルーレット(球がどこに落ちるかはわからない)

  • 通貨と所有権:モノポリー(コンポーネントを使って優劣をつける)

  • カード:UNO(各カードが持つ能力を使って勝負する)

  • ロールプレイ:人狼(役割に基づいて振る舞うことで推測しあう)

  • 交渉と秘密情報:ポーカー(はったりや駆け引きで心理戦を行う)

  • パズル:神経衰弱(より優位な方法で組み合わせていく)

  • 体を使うアクション:ジェンガ(身体能力と選択と運で遊ぶ)

  • 変化する設定:大富豪(大逆転するチャンス要素を与える)

  • 終了と勝利の条件:麻雀(ロン・ツモ・流局など終了ルールがある)

このように、古典的なゲームから最近話題になっているものまで、いろんなゲームから着想を得ていくと面白さが生まれます。

ゲームはやってみないと何が面白いかはわからないから、ゲームづくりをする人はまず自身がプレイヤーになって遊んで体感することが大事です。

学んだこと

カードゲームやボードゲームは簡単そうに見えるけど、いざつくるとなるとどこから手をつけてよいかわからず、結構難しくも感じます。

この本で、構成要素やメカニズムといった仕組みを体系的に捉えることで考えるときの手掛かりが得られた、というのが今回の学びです。こちらをもとに、つくることを学校の授業に取り入れられるか?ということを、いま自分の研究テーマにつなげていますので、お楽しみに。

今日はここまでです。


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ジマタロ
デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。

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