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【映画感想】ルックバック〜描き続ける理由は「n=1」一人の大切なファンの為でいい

チェンソーマンの藤本タツキさんが2021年に発表した「ルックバック」の劇場版、ロードショーで観るつもりが早くもアマプラ配信されることが決まり、おうちで観ました。
58分と映画にしては短い尺。それでも中身は濃かった。。映像化されて加わった動きも効果的でした。

学校新聞に毎回掲載されるほどマンガが得意で自信もある主人公藤野は、不登校の同級生京本の画力を知り愕然とする。その京本、実は藤野に憧れ彼女の「背中」を追い掛けている。京本に「ファンです!」と打ち明けられた藤野は公募の受賞を目標に京本と一緒にマンガを描き始める。
その後の展開はネタバレになるので伏せますが、京本が自分に憧れ先生と崇めていることを知り、藤野が一人帰り道で回りながらスキップして喜びの感情を露わにするシーンが圧巻でとても印象的でした。

https://natalie.mu/comic/news/582109

↑ 京本が藤野を追いかけ想いを伝えるシーンも良かったです。

タツキ先生がこの作品を描いた動機は、東北の震災時に創作の無力さを感じたことからだそうです。震災やパンデミック、京アニ事件などの不測の事態が起きると自分の仕事は必要なのか自問してしまう。漫画家に限らず創作に携わる様々なジャンルのクリエイターたちがぶつかる壁もそれとなく表されていた気がします。

京本にファンだと告白され、あぜ道を飛び跳ねて喜ぶ藤野。あのシーンがその答だと感じました。最近はマーケティングで「n=1」(nは人数)という考えが流行しています。多数の人々ではなく一人の意見から課題やニーズを分析する方法を指します。それとは別に大多数ではなく一人一人に目を向けるという意味合いでこの言葉が使われることもあります。
創作活動の動機も「n=1」でいいんじゃないか、たとえそれが不要不急とされる時であっても、自分にとってかけがえのないたった一人のファンの為に描く(作る)というのが創作活動を続ける理由であって良いのではないか、そんなメッセージをこの作品から勝手に受け取りました。

アニメや音楽、演劇などの芸術分野でも経済効果が優先され、興行成績や販売部数、再生回数などの数字の多さで評価が決まる世の中です。作家やアーティストもビジネスパーソンとして数字に表れる成果を追い求めなければならない。そうしているうちに何のためにそれをやっているのかわからなくなってくる人もいるでしょう。わたしもこうして自主的に作文をしていて閲覧数が気になり始めると「あれ、何で書いてるんだっけ?」と我に返ることがあります。「n=1」の精神。ルックバックの藤野もタイトル通り、後ろを振り向くと自分の背中を必死に追いかけている京本がいる。その大切な一人のファンのために描き続けようと思ったのではないでしょうか。

https://natalie.mu/comic/news/582109

↑ 絆を深める京本と藤野。このシーンの二人も可愛かった。。

トップ画像・出典:Amazon Prime


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