篠﨑美絵
自分で後から思い出せるように観て印象的だった映画の感想を書き記そうと思います。映画好きのみなさんと感想をシェアできたら嬉しいです🐷
はじめまして、篠﨑美絵と申します。 トリニティ株式会社でデザインコンサルティングの仕事をしています。 だいぶ昔の話ですが、前職はインテリアデザイナーです。 その当時、主にブティックの内装設計を担当しておりましたが、美しく完成させた(つもりの)カウンターに店員さんがシフト表をセロテープでベタッと貼っているのを目の当たりにし、ショックを受けると同時に、これがリアルなユーザーのニーズなのだ!と思い知りまして、デザインをユーザー起点、ビジネス視点で考える「デザイン戦略」をリスキリン
チェンソーマンの藤本タツキさんが2021年に発表した「ルックバック」の劇場版、ロードショーで観るつもりが早くもアマプラ配信されることが決まり、おうちで観ました。 58分と映画にしては短い尺。それでも中身は濃かった。。映像化されて加わった動きも効果的でした。 学校新聞に毎回掲載されるほどマンガが得意で自信もある主人公藤野は、不登校の同級生京本の画力を知り愕然とする。その京本、実は藤野に憧れ彼女の「背中」を追い掛けている。京本に「ファンです!」と打ち明けられた藤野は公募の受賞を
最近は、生成AIの話でもちきりだが、「3Dプリンティング」も密かに進化を遂げている。3Dプリントは、生産効率向上に加え、成形の自由度があることからカスタマイズやオンデマンド生産も可能な点で、AIと同時代性を持つ技術と言えそうだ。 3Dプリンティングと聞くと、柔らかい樹脂をソフトクリームのように積層させてフィギュアなどの立体物を成形する光景が頭に思い浮かぶ。だが、最近では3Dプリンティング造形の表現の可能性を広げる様々なチャレンジが果敢に行われており、素材や用途も多様化してい
荻上直子監督の新作「まる」、想像していた以上に良くて心に響きました。 人気現代美術家の作品づくりを手伝い(ほぼ代行)バイトで食いつなぎ、床が水平じゃないボロアパートに暮らす美大出身の沢田(堂本剛さん)。家では水槽の古代魚に向かって平家物語の「諸行無常」の一説を唱えます。物事は留まることなく常に移り変わる、栄華も必ず終りが来る。沢田の諦めから来る無欲さがそれに象徴されていました。 理不尽に職を失い途方に暮れた彼は部屋で蟻を見つけ、感情の赴くままにそれを追い、蟻を囲むようにキ
2024年度グッドデザイン賞の受賞結果が発表された。 審査基準も世相を反映しているためか、近年の受賞作には社会性の高いものが増えている。今年のベスト100にも多数選ばれており、初めて見るものも多かった。興味を持ち公式サイトでそれらがどんなものなのかを確認してみたところ、今まで知らなかった社会的な課題やニーズがわかり勉強になった。 例えば、金賞を受賞したシリウス社の介護用洗身用具「Switle BODY(スイトルボディ)」。水を噴射しながら吸い取る機構にすることで、要介護者
イタリアの高級ファッションブランド・フェンディの「おにぎりバッグ」がバズっている。米の部分はラムスキン、海苔は蛇革というラグジュアリーな一品である。(173,800円!) フェンディの2023-2024年コレクションのモデルを務めるSnowManの目黒蓮さんが、インスタに投稿した写真で身に着けていたことで話題になった。 17万円も出してこのバッグを買うかどうかはさておき、デザイナーがおにぎりの形に魅せられる気持ちはよくわかる。自分もおにぎりを見るとほっこりとした気持ちにな
政治不信から分離独立を表明した州の連合勢力と政府軍との間で勃発した内戦を報道カメラマンの目線で追ったロードムービー。 経済格差やイデオロギーの違いにより分断するアメリカの「起こり得る未来」を描いた作品で、正義感からの暴走だけではなく排他主義や無関与などの場面も盛り込むことで、現実の今の状況がエスカレートするとこうなっちゃうかもしれないということをリアルに示していました。 ただ、わたしはそうしたアメリカ社会の行方の可能性よりも報道カメラマンの卵である23歳の女性ジェシーの成長
海外でも人気が高く、昨年北米での生産体制も整えた山口県岩国市の旭酒造の純米大吟醸「獺祭」が、杜氏(酒造の全工程を取り仕切る職人)の勘や経験値に頼らず、IT制御で造られていることは、イノベーション事例としてよく知られている。 また、「ピンチをチャンスに変えた」ことでも注目される。新規事業の不調で経営悪化に陥り、杜氏たちが去ってしまうという絶体絶命のピンチを契機に、それまで彼らが担ってきた温度管理などの匠の技を全てデータで管理する製造法を実現させ、高品質と高生産性を両立させるこ
正月のおせち料理のお供の「祝い箸」。両端が尖っているので片方を取り分けに使えて便利などと思ってしまうが、これにはちゃんとした意味がある。神様のために尖らせているのだそうだ。神の恵みに感謝し一年の恩恵を願う「神人共食」を生活道具の形で表した気持ちのデザインである。 千利休が客人をもてなすために杉で箸を作り、木の香りを楽しんでもらおうと両端を削ったのがこの祝い箸(両口箸)の始まりとされている。そのため「利休箸」という別称もある。余談だが、客人との距離感を縮めたわずか二畳の茶室「
一昨年、AIで生成した架空のナイキのスニーカーが話題になった。スポーツウェアのイメージとは掛け離れたまるでウェディングドレスのような装飾性がインスタグラム上で好評だった。 アパレルECのLucky Number 8が運営するインスタアカウント@ai_clothingdailyで作品が発表されているが、制作手法などの詳細は不明。営利目的ではなく恐らくナイキ非公認。 イタリアのデザイナーMarco Simonetti氏が昨年AIで生成した、NIKEとフランスのファッションブラ
村上春樹氏の長編小説を舞台化した「ねじまき鳥クロニクル」を観劇した。飼い猫と妻の失踪を機に主人公が不思議な人物や奇妙な出来事に遭遇し、現実世界と仮想世界(深層心理)を往来しながら、それまで知らずにいた妻が抱える心の闇や背後にある悪と対峙し、同時に自分自身とも対峙しながら妻を取り戻すために奮闘する物語だ。 主人公と妻との対話シーンでは、テーブルが左右に伸びていくことで二人の心の距離を表していた。イスラエルの演出家・振付師のインバル・ピント氏が紡ぎ出す世界は圧巻で、登場人物の心
最近、メディアを賑わせたことで目にする機会が激増したOpenAIのロゴマーク。そのお家騒動の行方に人々の関心が集まる中、わたしはこのお花のように見えるロゴマークのことが気になってしまった。どういう意味なのか、さっそくネットで調べてみたが、残念ながら公式に発表されていないようで正確な情報は得られなかった。 そこで、ChatGPTに聞いてみた。 とのこと。お花ではなく「脳」がモチーフだった。 OpenAIのサイトの ”About” のページには、 とあるので、ChatGP
キャラクター天国である日本特有の「かわいいもの好き」は、一体どこから来ているのか? 前回の「価値観編」では、その理由を書籍も参考に様々な角度から考察してみた。 【前回の価値観考察のポイント】 冒頭から余談だが、かわいいもの好きの筆者が最近かわいい!と心の中で叫んでしまったものに「ミスドポケモンドーナツ」のコダックがある。 ポケモンスリープで主役のカビゴンの方が再現しやすいだろうに敢えて難易度の高いコダックにチャレンジし(しかも横顔)、その結果、本物を超えるゆるキャラにな
SHBUYA 109 lab.トレンド大賞2023が発表された。 15~24歳の女性510名を対象に行なった調査の結果だ。今年も調べないとわからないものが幾つかある中、わたしは自分も密かに面白いと感じている「んぽちゃむ」がコンテンツ部門の3位に入賞していることに目が留まった。 んぽちゃむは、若い女性たちに人気を博した「おぱんちゅううさぎ」の作者、可哀想に!さんが昨年からSNSで発信しているギャグアニメである。 んぽちゃむ 主人公のんぽちゃむ(右)は、計画性がなく失敗ば
昨今注目される「アート思考」についてデザインの視点で考えてみた。 この思考法は、既成概念に囚われない閃きを歓迎し、事実の観察や洞察からはなかなか生じ得ない発想の飛躍があることも特徴である。それ故に、イノベーティブなアイデアを生み出す可能性がある。 作り手があったらいいと思うものが実現された、昔のプロダクトアウト(⇔マーケットイン)型の製品開発も今思えばアート思考だった。顧客ニーズや市場性を発想起点とするのが主流となった2000年以降は、客観性が重んじられ主観的な思いつきは封
「デザイン思考」の思考法があらゆる分野に行き渡り、最近では「アート思考」が創作活動において注目されている。前者が顧客のニーズを起点に解決策(答え)を導き出すのに対し、後者は既成概念に囚われず、自分が主体となり「問い」を立てるところから始まる提案型の発想法である。 ChatGPTなどの生成AIの急速な発展も影響していそうだ。人間が答えを出す必要が少なくなる可能性がある一方で、「問う力」が求められている。精度の高い回答を引き出せるかは、プロンプト次第だからだ。 また、先の予測