No.22 『ミュゲ書房』ビブリオが好きなら読んで欲しいです。
こんにちは。そろそろ本をリクエストしすぎて大学側からストップがかかっているでらです。
今回は一度大学側から取り寄せてもらったものを読んでさらに書店に買いに行くという意味わからんことをした、させた本についての紹介をしていきます。その名も『ミュゲ書房』です。
最初から結論を話してしまうけれど、本好きな人だったら間違いなく損しない内容のお話だと思う。
今回はそんな『ミュゲ書房』のストーリーや魅力について詳しく語っていく。この熱意よ、伊藤調さんに届け。
雰囲気1億点
まず感じたのは、カバーイラストや物語全体の雰囲気。本好きならこれを手に取らないことがあるだろうか。いや、ない。(反語)
この人絶対ビブリオ古書堂好きでしょ、と言いたくなるような著者の本への愛情が至るところから感じることが出来る。
内容も本好きにとっては非常に面白いもので、元編集者である、ミュゲ書房を経営する宮本章(みやもと あきら)が永瀬桃をはじめとする人に助けられながら成長していく、心温まる物語となっている。
私たち本オタクとしては、本に関係する話、特に図書館、カフェなどが関わってくるものに対して抵抗がマジでゼロなので、私は読んでいてその優しい雰囲気と文章に終始ほれぼれしていた。そして気づいたら読み終わっていた。
もちろん内容だけでなく、カバーイラストや、見返し(本の中身と表紙の間に挟んである紙の事)もよく練られていて、スズランとか万年筆とかスイーツとか、わああってなるイラストだった(語彙力皆無)
見返しの紫については、なにかと作中に6月の描写が多く、リラ冷えについての描写があったためだろうか。個人的に見返しとか、あとは北海道の知識についてほとんど知らなかったので勉強になった。
章、桃の成長譚
今作においては、主に二人の人物についての成長譚であると思っている。
一人目は永瀬桃もとい、広川颯太である。彼女は女子高生という肩書きにして「広川颯太」というニックネームで創作活動をしており、『リベンジ』という作品でコンテストを勝ち取れるほどの実力者だった。そんな女子高生おる?
しかし一度目の『リベンジ』が刊行されることはなかった。原因は大手出版社の丸山出版との齟齬であり、彼女は長い時間をかけて完成させた作品を無下に扱われたことから、自分が書いた作品の主人公のように彼らに対して復讐心を燃やしていた。そして丸山出版の編集者に章がいたことを知ってからは、その復讐心は大きく膨れ上がってゆく。
作中での大きな出来事の一つに、桃が章に自分は広川颯太だと明かすシーンがある。
広川という逸材が世に出る機会を失わせてしまった罪悪感から会社を辞めてしまった章にとって、この言葉は想像以上に堪えたのではないのだろうか。
ここで二人目・宮本章の存在である。章は彼女の気持ちを慮り、深く反省する。しかし手渡された原稿を読み返し、やはりこの才能を放ってはおけないと強く決心し、原稿に添削をした上で『リベンジ』をミュゲ書房から出版してはどうだろうかと桃に提案をする。彼の作品に対する熱意に加え、彼らの信頼関係もあってか、彼女はミュゲ書房出版で作品を出すことを承諾してくれる。
これらのシーンはとても印象的だった。会社員時代は短絡的と言われていた章だけど、ミュゲ書房の経営、編集者としての技術は本物であり、言葉だけじゃなくてきちんと筋は通す男らしさを感じた。祖父の意思を受け継いでミュゲ書房の経営を一任し、知識不足ながらも色々な人に助けられて人間的に成長した章だからこそ彼は作品の出版を諦めなかったのだろうし、そんな彼を見てきたからこそ、桃はその提案を受け入れたのだ。二人が初めて本音でぶつかり、絆を強くしたいいシーンだ。
雰囲気が最強であるという話は最初の方にしたけど、内容も充実しており、彼らに焦点を置いて読んでいただいても非常に楽しめる作品になっている。
おわりに
というわけで、今回は伊藤調さんの『ミュゲ書房』について語らせていただいた。作品自体の雰囲気はもちろん、非常に読みやすい作品となっている。前述したが、『ビブリオ古書堂』シリーズにハマった方は必ず今作もハマると思うので、これを読んで興味が湧いた方は是非書店にてお求め頂きたいと思う。
それではこのへんで。もしよければスキやフォロー等よろしくお願いします。あと、伊藤先生は読書メーターもやってらっしゃるとのことなので、皆『ミュゲ書房』を読んで先生に感想を書こうね!!