本棚の中身・ちくまプリマー新書
「ことばが変われば社会が変わる」(中村桃子著)を読む。ことばはほんとうに面倒くさい道具で、いったん知恵の輪みたいに絡まると解きほぐすのが大変だ。ただこのパズルのような道具が一度ピタッとはまったときの快感といったらない。人を生かすも殺すもことば次第。ということで巷にあふれる「○○ハラ」問題に始まってあなたの相方は「ご主人」「嫁」?それとも、といった問題までを考察する。
ところでこの本は「ちくまプリマー新書」というシリーズの一冊だ。HPによれば「学生の”学び”に役立つテキストや、大人の学びなおしに対応!」というキャッチが立てられている。「primer」は「初歩読本、入門書」という意味。なるほどなるほど。
何ごとも掘り下げが足りない自分はさぞかしけっこう頼りにしてきたのだろうと思い本棚を見たら、そうでもなかった。今書棚にあるのは「客観性の落とし穴」「ネットはなぜいつも揉めているのか」とか数える位。いずれも常日頃気になっていたテーマではある。要するに学術的というよりも、日々の疑問やもやもやの整理に役立つといったところ。多少とっつきやすくはあるものの、テーマがベーシックであるだけに根っこは深いものばかり。くだらないhow toなんか(主観まるだし)読むよりは考えるヒントはずっと多い。
ちなみに書棚にある本家の「ちくま新書」は「ルポ最底辺」(生田武志著)「衆生の論理」(石川忠司著)「自由に生きるとはどういうことか」(橋本努著)などといったところ。確かにかなり色合が違う。
「ちくま新書」と「ちくまプリマー新書」の関係に似ているのが「中公新書」と「中公新書ラクレ」だ。こちらは老舗の本家が知の王道を行っているのに対し「ラクレ」はエッセイや対談などもあり幅広いアプローチで現代を切り取っている。
時にとことんお堅く、時にぷっと吹き出しながら、新書の世界はなかなか楽しいのであります。
(蛇足)「ちくまプリマー新書」はライトな表紙デザインと、マットな質感のカバーも好き。岩波や中公はもちろん今のままで。