【気まぐれ日記】#29「ちんぷんかんぷんは、英語でも日本語でも、ちんぷんかんぷん?!」
中学のころからもう何年も英語を勉強しているというのに。
いまだに、え、これってどういうの?
というのが、後をたたない。
特に、ふだん使いの表現に多いような気がする。
今回、ひっかかたのは、「ちんぷんかんぷん」だ。
* * *
英語で「ちんぷんかんぷん」は、どういうの?
英語で「ちんぷんかんぷん」は
It’s (all) Greek to me. という。
直訳すると「それは私にはギリシャ語だ」となる。
確かに、英語圏の人にとって、
ギリシャ語は「ちんぷんかんぷん」だろう。
シェークスピアの戯曲『ジュリアス・シーザー』のある場面でのこと。
元老院議員のキケロが、まわりに密談の内容が漏れないように
ギリシャ語で話していたのを聞いたシーザーが、
「It was Greek to me」と言ったのが由来だとか。
他の言語でも似たような表現は多くて。
フランス語では、「それは中国語だ」
イタリア語では、「それはアラビア語だ」
オランダ語では、「それはヘブライ語だ」というらしい。
だから、ふむふむ、と納得できる。
やっかいなのは、日本語の「ちんぷんかんぷん」だ。
日本語の「ちんぷんかんぷん」の由来は?
<まったくわけがわからない>というとき
日本語では「ちんぷんかんぷん」という。
「微分積分なんて、ちんぷんかんぷんだよ」とか
ごくふつうに使うし、日常によくなじんだことばだ。
ところが、改めて考えてみると不思議なことばで、
その由来となると、まさに「ちんぷんかんぷん」なのだ。
これといった説があるわけではなく、
主に次の3つの説が有力らしい。
その1「中国人の名前説」
江戸時代、中国人の名前はわかりにくかった。
(今でもそうだが)
当時、日本にいた中国人の名前でポピュラーだったのが「陳文」さん。
それに「男」を意味する「漢」をつけて「ちんぷんかん」とし、
<なにがなんだかよくわからない>という意味で
使うようになったのだとか。
さらに語呂あわせで、「ぷん」をつけて
「ちんぷんかんぷん」になったという。
その2「学者からかい説」
江戸時代の学者といえば、儒学者。
彼らは難しい漢語を音読みばかりする。
(じぶんを偉く見せるためだろうけど)
それを聞いた庶民が儒学者の話すことばをまねて、
「ちんぷんかん、ちんぷんかんと
訳のわかんねぇことばかり言いやがって」
みたいなことを言って、からかったのがはじまり。
こちらの説では、「ちんぷんかんぷん」を「珍糞漢糞」と書くようで。
「糞」を使っているあたりに、儒学者をバカにする
江戸っ子の気持ちが表れている。
その3「中国語由来説」
中国語で、
<聞いてわからない>ことを、「チンプトン」
<見てわからない>ことを、「カンプトン」というそうだ。
それを合体させて、「ちんぷんかんぷん」になったという説がある。
なんだか、とっても、もっともらしいのだが。
ところが、この説には無理があるらしい。
というのも。
江戸時代、中国人はほとんど長崎にしか住んでいず、
また、「ちんぷんかんぷん」ということばは
庶民の間で広まったらしいので、
中国語がふつうの人に理解できたとは考えられないから。
たまたま、語感のよく似た表現で
意味もぴったり当てはまるものがあったとは。
それは、それで驚きだ。
調べれば調べるほど、
「ちんぷんかんぷん」は、本当にちんぷんかんぷんだ!