夢を叶えた五人のサムライ成功小説【川端雄平編】15
この作品は過去に書き上げた長編自己啓発成功ギャグ小説です。
ライブが終わり、バーをあとにする。
後日、柴田から連絡が入ることになっている。
雪が激しく降り始めた。
交通規制が次々と発表され、街中や駅などの電光掲示板に速報として流される。
電車の運行が停止になるまでに早く帰ろう。
雄平と由里は駅近郊のコンビニ前で柴田に別れを告げた。
いつのまにだろうか!
先ほどまでライブの最中にいた林がコンビニ内でスタッフに業務を命じている。
林はコンビニのオーナーでもあった。
今では人に任せているが稀に顔を出すらしい。
雄平は時給が今の勤務先より、10円高かったので林に頼んで使ってもらおうと一瞬、ほんの一瞬だけ思ったが、交通費や時間、通勤の労力を考えるとマイナスになるじゃないか!とすぐさま気づいた。
そして由里とふたり、電車に飛び乗った。
雪の降り方が凄まじい。
視界が今にもゼロになりそうな勢いだ。
空を眺めてもう12月も間近なんだなと染々と感慨に想い咽ぶ気持ちだった。
帰宅した雄平は今日の出来事を再現してみた。
自室の天井を眺め、俺はプロになるんだなと気を引き締めた。
そして自分自身に言い聞かせた。
ヴォーカルだけが音楽じゃない。
ギタリストも立派な音楽だ。
どちらが欠けてもならない。
雄平はマイギターを手に取って弾いてみた。
室内に魂のこもった音が鳴り響く。
一階の居間でテレビを見ながら、バリバリとスナック菓子を頬張り大爆笑している母親が、息子の奏でるギターの音色を聴きながら涙を流して叫んでいた。
その涙は笑いすぎによる涙だけではなく、我が子を想う親心もあった。
『雄平~、雄平~、母さんは嬉しいよ。おめでとう。本当に良かったね。母讃歌も聴かせてねぇ!』
二階の自室に居る雄平には勿論、聞こえてはいたが知らぬ不利をした。
嬉しさ半分、不気味さ半分だった。
雄平はこの夜、ぐっすりと眠りこけた。
二度と目が覚めやらぬ死人のように深い深い眠りに就いた。
いつしか大雪が街を埋め尽くした。
各路線は全面停止、交通規制も激しく制限が敷かれた。
この日の大雪は30年ぶりのことだとテレビのニュースは伝えていた。