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自閉症スペクトラムとは何か~ASDの特徴・診断・呼び名について~

私が発達障害と診断された直後に読んで、大変参考になった著書……『自閉症スペクトラムとは何か』(千住淳:著)を紹介します。

著者の千住さんは、自閉症の研究者です。当事者(本人・家族)や支援者(医師・教師)の方々の協力を得て、自閉症の基礎研究を行っているとのこと。

自閉症のことについて、これまで何がわかっていて、何がわかっていないのか。研究者の立場から解説されています。その内容は、自閉症の診断、遺伝子、脳、認知、発達、社会……と、多岐にわたります。

本書が出版されたのは2014年ですが、2023年の今でも通じる内容かと思い、noteで取り上げることにしました。

自閉症とは

あなたは自閉症というと、どのようなイメージがありますか?もしかしたら、イメージしづらい方もいるかもしれませんね。

自閉症というと読んで字のごとく、自身の殻に閉じこもっているような症状を連想するかもしれませんが、それは誤解です。社会的なひきこもりとも、違います。

自閉症とは、人との関わりに困難さを抱える発達障害であると、本書では説かれています。

なお、自閉症スペクトラムの「スペクトラム」とは「連続体」という意味です。典型的な自閉症に限らず、もっと軽い状態も含まれています。

自閉症スペクトラムの特徴

自閉症スペクトラムの大きな特徴としては、2つ。

  • 対人コミュニケーションの困難さ

  • 強いこだわりや常同行動

人にはそれぞれ個性があり、それ自体は障害とは言えません。ただ、大勢の人とは違う特性があることにより、学業や就労などの日常生活に制限が出てくる状態のことを、障害と呼ぶそうです。

「障害」とは障害物競争のハードルのようなものだ、と考えてもよいかもしれません。

障害は絶対的なものではなく、個人と社会との関係によって決まる、ということになります。

私は発達障害と診断されてから、障害というものは自分の中にあるのではなくて、他者との関係の中にあるのだと、ずっと思っていました。だから、千住さんに自分の気持ちを代弁してもらったようで、とても嬉しかったです。

自閉症スペクトラムの診断基準と呼び名

本書では、自閉症スペクトラムの診断基準(DMS-5)についても書かれています。

『DMS-5』とは何か……「DMS」は、アメリカ精神医学会が作成している「精神疾患の診断・統計マニュアル」。「5」は「第5版」という意味です。

2013年に第5版に改定されてから、自閉症スペクトラム障害の中にアスペルガー症候群も含まれるようなりました

自閉症スペクトラム障害の今後の呼び名について、千住さんは言及されています。

「注意欠陥/多動性障害」をADHD、「学習障害」をLDと呼ぶことが一般的になってきていることを考えると、自閉症スペクトラム障害も将来的には「ASD」と呼ばれるようになるのかもしれません。
また、2013年に起こった診断基準の改定(DMS-5)を受けて、日本でどのような訳語が定着するのか、ちょっと予測がつかないところもあります。
すでに根付いてきた「アスペルガー」ということばが残るのか、「ASD」に統一されるのか、「自閉症」という訳語をそのまま残すのか、それとももう少しうまい訳語が生まれるのか。
いずれにせよ、当事者や支援者にとって使い勝手のよい、誤解を生みにくいことばが見つかればよいなあ、と思います。

自閉症スペクトラムとは何か

「誤解を生みにくいことばが見つかればよい」という言葉には、心から納得です。2023年の今ではASDという呼び名は一般的になりましたが、アスペルガーという呼び名も残っていますね。ただ、呼び名に対してというよりも、障害に対しての誤解が残っているような気がするので、社会の理解が進めばいいと思っています。

思いやりの感じられる本

本書では、ASDの特徴や診断基準に限らず、ASDに関するさまざまな研究結果が書かれています。どのページを開いてみても、千住さんの思いやりが感じられるんですよね。おそらく当事者や支援者に役立つことを目指して、日々研究を重ねているからでしょう。

私は本書を読んで、自閉症スペクトラムが特別なものでも異質なものでもなく、あくまで個性であり、社会との関わりによって生ずるものなのだと、実感できるようになりました。


※発達障害(ASD)とコミュニケーションについて、記事を書きました。もしよかったら、こちらもご覧くださいね↓


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