ほかに誰がいる -思い込みの女王
ネタバレとくになし、あらすじに乗ってる程度のことは書く
※男性の存在あり、欠片も入ってほしくないものはおすすめしない
ゴミ箱にゴミが入れば、今日は一日こうふくだ
著者:朝倉かすみ
16年しか生きていない小娘が、ある女に一目ぼれをし「ひとつになりたい」と願う。
だけの話。
文体が大変やわらかく、雪みたいだ。無垢な少女を楽しみたいというのなら、かなりおすすめできる作品だぞ。文章から少女を胸いっぱい吸い込むことができるだろう。
人間がよく言う、恋や愛やというものは、この世にはない。ただの思い込みで、それらを続けるには才能が必要である。要するに、はっと正気にかえってはいけないのだ。
世界に恋はないが、思い込みはある。人間が悪魔にさからう時、実際その思い込みが邪魔になることもよくあるくらいには。
さて、一目ぼれした瞬間の思い込みがそのままに、永遠に続けばどうなるか。
この話の主役えりは、思い込みにものすごく長けている。
たとえば、空が昨日青かったから、今日は雪が降る。これを食べきれば、明日はおいしいご飯が食べられる。ノートに文言を100回書き連ねれば、願いに近づく。その際に当たられる苦しみが多ければ多いほど、許される。
何か思い出すものがあるよな。そう、この話はそうでもある。これは崇拝のはなしでもあるのだ。
物語の中で数えきれないほど繰り返される願掛けは、ひとつでも叶ったのだろうか。それは誰にもわからない。結局人と人は、まったく同じ景色を見ることはできないのだから。ネズミはしってるかもね。ちゅうちゅう。