論文執筆ノウハウ2 ~まずは図の作成から~
研究論文は、図に9割の力と時間を割けば完成すると言っても過言ではないでしょう。2月に卒論・修論提出の場合は、1月まで図を作ってもいいくらいと私は、考えてます。データを直視して図さえしっかり作れれば作文なんてどうとでもなります。周囲がバチバチ文章作成に勤しむ横で安心して図を作り込んでください。研究は作文じゃねぇ。と悪態をついてもいいでしょう。
以下には、図を作る時の 1. 流れ、2. コツおよび 3. 注意事項を記載します。
1. 図作成の流れ
実験ノートを見る。
結果がないと言う人がいますが、1年間実験をしてきて何も結果を出していない人はいません。あなたには、必ず結果はあります。何をしてきたのか見返してください。図になりそうな結果を全て書き出す。
ノートの中で、図にまとまりそうなデータを列記してみる。ネガティブな結果(差がなかった結果)も重要な結果ですので必ず書くことです。ただし、実験操作の失敗によるものは除外します。まとめるデータ項目を選ぶ。
選定されたデータの中で親和性の高い結果は、一つの図にまとめる必要があります。これとこれは、Fig. 1とかだいたいでいいので決めましょう。タイトルを決める。
各まとまりごとに一番伝えたいメッセージは、何か?を考えてください。それが、図のタイトルです。だいたいの図を書き始める。
Fig. 1 から Fig. Xまで全てのタイトルを大まかに決めてから図を作っていきましょう。じゃないと後であれ必要やんとかなって時間をロスします。図の書き方は、別途書きます。3-5を再度見直す。
図の説明文を書く
図の説明文 (Figure legend) は、初見の人がその図だけを見て分かるレベルで書きましょう。図に入っている矢印や名前の略字がなんなのか、本文を読まなくても図だけで分かるようにしましょう。多くの人は、残念ながらあなたの文章は読みたくありません。図しか見ません。図だけで内容が伝わるくらい説明してやりましょう。図に使った生データはSupplementにする。
2. 図作成のコツ
コツは、いきなり完璧をねらって作りすぎないこと。上述の6の通り、論文書きの大天才以外は、論文作成過程で確実に図を作り直します。作りこみすぎて、やり直すと体力的にも精神的にも疲れるので、仕上げの作りこみ作業は最後の最後でオーケーです。以下には、図を作りはじめる際に私が気をつけてることを書いておきます。
本当にグラフ化できないの?
数値データはすべてグラフにするべきです。昔と違って、今や誰でもグラフを作ることができるはずです。表で数値データが出されると読み手もイライラきますし、小数点の打ち間違いなどでとんでもない結果を誤記載してしいます。
シンプルな図
重複した文字や表現があればどちらか消せないかよく考えてください。
その色には意味があるのか
はじめて図を作る人の多くが無意味に図に色をつけたがる傾向があります。論文では、グラフに色を塗る場合、一貫した意味を持たせる必要があります。デザイン的にピンクが好きとは、やめましょう。基本、黒、白および灰色の3色で表現するべきです。
その本当にそれFigure Legendに必要か?
他人が書いた文章を読むのを苦痛に感じる人は99%くらいと思ってください。Figure Legendすら例外ではないです。うまいこと図中に表現すればFigure Legendを少なくでき、読者の苦痛が減るのであれば、論文作者が工夫しましょう。
3. 図作成の注意事項
研究論文の図では、Less is More~より少ない方がより多く伝わる~というコンセプトに気をつけて書くことが重要です。
図はシンプルにすべき、かつ、Figure legend も少ない方がいい。
ただし、初見の読者がパッと理解できるよう必要事項をは、書く必要があります。以下のチェック項目を参照してください。
グラフのチェックシート
⬜︎ 使用したデータの単位は明記されていますか?
⬜︎ サンプルサイズ (n) は記載しましたか?
⬜︎ グラフ中に目標になる線を引いた場合、それは何か書きましたか?
Figure legend 書き漏らしチェックシート
⬜︎ 図中の矢印・矢頭は何か書きましたか?
⬜︎ 図中の線は何か書きましたか?
⬜︎ 統計処理の種類や p 値は記載した?
⬜︎ エラーバー(標準偏差、標準誤差など)の意味は説明しましたか?