両者搾取 疑似恋愛

この恋愛は美しくて、これは見るに堪えない恋愛模様。あの人みたいな恋がしたい。あんな勘違いして破滅するような恋愛は絶対嫌だ。

愛ってどこでどう分岐して、美しいものと醜いものにわけられるんだろう。例えば学校の中で知り合って少しずつ距離が縮まりゴール。甘酸っぱい。私も可愛くて美しい恋愛だと思う。でも例えば、マッチングアプリで体の関係から入って生まれた恋愛。私も別にいいと思うけど前者に比べたら羨ましくないな、なんて最低なことを思う。

欲だ。欲だと思う。ジョイフルで1番好きなグラタンを食べながら勉強していて、ふと、この答えの1つを導き出した。もちろんマッチングアプリや体の関係って言葉自体があまり好印象じゃないし、常識にまだ認められていないことが大前提なのはそうなのだけれど、自分のために、明確に相手から搾取しようという考えがチラつくからなんじゃないかと思った。マッチングアプリで相手を捕まえてヤリたい、とか、彼女という存在が欲しいからとか、そういう自分のための。

これは大人といえる年齢の人間にとっては普通のことだけれど、私たちが子どもだった頃は、相手から何かを得ようとして人を好きになってたんじゃなかった気がする。絶対そうだと思う。ただ、彼のあの笑顔が好きだったり、同じ本を読んでいたから、朝おはようと邪な気持ちなんて微塵もない爽やかな挨拶をしてくれたから、そういう少しのきっかけで、コトンと恋に落ちていたと思う。何かを純粋に好きでいること。誰かが好きだから、世間で人気だからとかじゃなくて、ただ私が好きだから好きだと声に出していたあの頃を眩しく、暖かく思う。

1週間くらい前にマッチングアプリで知り合った人とご飯に行った。夜普通に待ち合わせして会話しながら食事をした。お互いの心をさぐり合うように。大人はこれが普通だから。しばらくしてトイレに行って、ひと時の安心時間を過ごしてまたよく分からない会話を繰り広げなきゃいけない場所に戻る。良い感じの酔いになったら自然と終わりの雰囲気になる居酒屋って不思議だ。会計は先に済ませたなんて言ってくれる有り難さと申し訳なさからいつも曖昧な返事をする。そして奢ってもらったから6割、楽しいと思ってもらいたいから4割で、手を繋ぐのもハグするのも笑いかけるのも難なくこなす。新しい誰かと新しい何かを始めたくてインストールしたこのアプリも、もうあまり使わないかもなと思いながら帰った。

私の現在は、こうしてお互いがお互いを搾取しているだけの嘘っぱちな恋愛ごっこで、別に愛も恋もそこには無い。それって本当に虚しくて、お互いの欲の消費合戦でしかない。もう長い間打算以外で恋人繋ぎなんてしてない私も、それをただ許す世界も、愚かで醜いと思う。これからもう、新しく好きになった人を思い出して泣いてしまうことなんて無いんじゃないか。私の搾取されない、搾取しない恋愛は過去にしか無いんじゃないか。そう思うと毎日夢だけを見せて私を離さない布団と一緒に永遠をすごしたいと思う。