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変わらないもの


ずっと終わらないでくれと願った夏休みがもうすぐ終わろうとしている。自分の生活する音しか聞こえないあの家に、帰りたくないと心が咽び泣いている。

今年の夏は、ずっと仲のいい中学からの友達や幼なじみたち、高校の友達たち、家族とたくさんの時間を作った。こんなにみんなの存在を近くて遠くてぎゅっと抱きしめたいと思う夏はもう来ないと思う。貴方たちに会えるから、ずっと頑張ってきた。

中学からの友達とは必ず1年に3回は会うようにしている。春休み、夏休み、年末年始。地元の夏祭りに参加して、旅行に行って、一緒に初日の出を見る。こんなにも仲のいい地元なんて無いんじゃないかくらい、大好きな人達。

21年生きてきて、たくさんの人間に出会って、知見を得た。地元の友達の暖かさ。いつも可愛いと、優しいと、ありがとうと言ってくれる。自己肯定感を上げてくれ、貴方が必要だと言ってくれる。そんな友達が生まれた場所にたくさんいることが、私の人生の最初のラッキーだと思う。



高校の時知り合ったもう社会人の友達は、朝から夜22:00くらいまで働き、パワハラ上司に耐え、家の家事もし、恋人との喧嘩もなんやかんやで乗り越えているというスーパーウーマンなのだが、
「変わらないものや場所にしか今は行きたくない、毎日が慌ただしく過ぎて新しいことばかりだから、私は思い出に浸るしかない」
と夜の海を見ながら言った。

私の今年の夏の答えもこれだった。毎日毎日新しい勉強、人間関係。疲弊していた。ずっと帰りたかった。何も変わらないあの場所たちに。

景色や季節が変わっても、私たちが過ごしたあの日々はもう消えることはないのだ。私たちが愛したあの場所はずっと愛する場所であり続けるのだ。だから私は、ずっと帰りたかったのだ。

中学の友達は本当に暖かくて、いつも会うと一緒の場所に生まれて良かったなあとなる。高校の友達は、派手にしっちゃかめっちゃかした日々を思い出して笑いながら、この人たちに会ったから私は何段階も人間として成長できたんだなあと思う。

全ての変わらないものが、これから目まぐるしく変わる私を支えてくれていて愛してくれていることをこの夏は特に自覚した。これからあの土地に帰ることがたまらなく苦しいけれど、駅弁で気を紛らわせることにする。牛タンステーキ弁当についていたワサビが、耐えていた涙のダムを決壊させたことは内緒にしておく。

右下のワサビが犯人

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