「ミステリーフレイル」〔コイネージ【新造語の試み】9-1〕
「立場の威に寄る謎理論・謎ルールの振り回し」。
これを「ミステリーフレイル」と呼んでみる。
「フレイル」とは、柄とトゲ鉄球が鎖で繋がれた、RPGゲームではお馴染みの打撃武器である。
とある体育教師は、「全員、連帯責任だ」と喚き散らし、一人のミスを学年全体のミスとして"全員"を叱責した。
とある元請会社社員は、「エレベーターは社員のものだ」と嘯き、下請けの人間に階段を使うことを強制した。
とあるパンチェーン店の新店長は、「綺麗なパンを作っても、"効率的に"パンを作っても売上は変わらないのだから、マニュアル通りの綺麗なパンを作るのは自己満足だ」といって、ベテラン従業員に"手抜きパン"を作ることを強要した。
凡庸な人間ほど、「これがいい」と思い付いたことを、充分な考察を経ぬまま金科玉条にする。
そして、"そのまま"自分より立場が下にの人間に押し付ける。まるで「フレイル」を振り回すように。
本人は「当然のこと」と思い込んでいるかもしれぬが、側から見れば合理性に乏しく、「謎理論・謎ルールの振り回し」でしかない。
厄介なことに、"正しさに浸るあまり、見失いがち"である。
謎理論・謎ルールを振り回せているのは、"自分が凄いから"ではなく、「立場があるから」だということを。
卒業・離職などで"射程外"に出た途端、「それは一切無視できる」ことを。
そして、「凡庸な人間」という自分の本質は一切変わっていないということを。
人間、立場がなければただの人。
相手に自分の言うことを聞かせたければ、最低限「自分の話を聞かなければならない立場にない人間相手にも通用する程度の合理的、客観的理由」を備えなければならない。
でなければ、徒に信を失うだけだ。