
「思いやり」の言葉すら無粋【やさしさの連鎖】〔ダイアリー【間隙の閑話】5〕
都内某所のラーメン屋での話。
そのラーメン屋は、横に長いカウンター席のみの店舗だった。
こじんまりとしながらも清潔感ある店で、絶品のラーメンに舌鼓を打っていると、席の横から
「すいません、席一つずれていいですか?」
との声。
ふと横をみると、着席したばかりの男性が、店員の了承を得て、一つの横の席に移り直しているところだった。
その男性は、20代のラッパーのような風貌していて、みたところ1人。
「なんで、席移ったんだろう?」。
そう思いながら、さらに奥の入り口の方を見ると、カップルが2人。券売機でラーメンを選んでいた。
「あー、なるほどね。そういうことか」。
そのラーメン店はおいしいんだが、開店したばかりなので、お客の数はまばら。
"終息していない現状"も相まって、みな席一つ間隔をあけて座っていた。
その男性は、最初三つ空いている席の真ん中を座ろうとしていたが、後から来たカップルに気づき、
「自分がこのままここに座っては、あのカップルが並んで座れない」
と考えたのだろう。
周りを見回して、他に二連で空いてる席がないかを確認していたのが、その証左。
「…状況判断したね、この人」
と、僕は思わず感心してしまった。
この文章を読んでくれている人も、この状況なら同じことをしたと思うし、僕も"気づいたなら"していたと思う(多分)。
けど、改めて第三者の目で見てみると、月並みながらも心温まるものがある。
息を吐くように出た真正の思いやり。
この"自然現象"の前では、「思いやり」の言葉すら無粋。
なので、語る言葉は最小限。その代わり、しっかり心に留めるようにしたい。
そういえば、以前YouTubeで「優しさも連鎖する」という動画を見たのを思い出した。神奈川県川崎市のPVではあるが。
今回のラーメン屋での出来事は、このPVをほうふつとさせる…というか、そのまんま登場しそうな1シーンだった。
次は自分も。
(参考動画)
なお、相手が気づくかどうかは、あまり重要ではないんですよね。自分が体験したケースでも、カップルは男性の行動に気づいていませんでした。