読んだ後に気付く!仕掛けがおもしろい連作短編集3選
何気なく手に取った小説が、実は読み終えると「そういうことだったのか…!」と衝撃を受けたことはありませんか?
本の表紙のデザインだったり、目次だったり、章ごとの扉に記されたちょっとしたロゴだったり…
小説はお話の内容自体ももちろん楽しめますが、そういった装丁にちょっとした仕掛けがあると、より楽しめますよね。
一緒に小さな驚きを見つけに行きませんか。
1冊目は、
木曜日にはココアを
/青山 美智子(著) 宝島社
僕が働いている喫茶店。必ず木曜日にきて、いつも同じ席で手紙を書く女性がいる。
そして、頼むのは、決まってココア。僕は、その女性を「ココアさん」と密かに呼んでいる。
ある木曜日。ココアさんはいつものようにやってきたのだが、どこか様子が違い……。
色とりどりのストーリーが深く交わっていく、ハートフルストーリー。
この本は連作短編集です。
前の章でチラッと登場した人物が、次の章で主人公視点で進むという形式です。
章ごとにページが区切られるのですが、始まりに色の名前と場所が書かれています。
そのお話を読む前は、なんの事か?全く分かりませんが、読み終えてから振り返ると、そういうことだったのか!と納得がいきます。
また、表紙の装丁はミニチュアアーティスト、田中達也氏が担当されています。
これも読む前は単なる風景にしか見えませんが、読み終えてからもう一度表紙を見つめ直すと、あの登場人物はこの人か、と分かるようになります。
一杯のココアから始まる、心温まるストーリーです。
是非ご堪能ください。
また、前日譚として「いつもの木曜日」という本も出ています。
こちらは絵本のような装丁となっており、よりそのキャラクターに沿ったお話や色が展開されています。
ミニチュアやデザインの力で、より本編よりも世界観に入り込みやすい仕掛けとなっています。
個人的には緑の人のお話が1番好きなので、是非読んでみてもらいたいです。
それと、続編が出ています。
「月曜日の抹茶カフェ」です。
川沿いの桜並木のそばに佇む喫茶店「マーブル・カフェ」。
その「マーブル・カフェ」が定休日の月曜日に、1度だけ「抹茶カフェ」を開くことに。
そこで繰り広げられる人と人との縁は…。
2冊目は、
本のない、絵本屋クッタラ
/標野 凪(しめの なぎ 著) ポプラ社
札幌にあるインクブルーの三角屋根が目印の、木造二階建て――そこが『本のない、絵本屋クッタラ』。
看板には『おいしいスープ、置いてます。』と書いてあり、店主・広田奏と共同経営の八木が切り盛りするカフェでもある。
メニューはスープセットとコーヒーのみだが、育児に悩んだり、仕事に忙殺されていたり、自分の今の立ち位置に迷った客たちが今日もふらりとやってくる。
彼らの話に奏は静かに耳を傾けると、「御本が揃いましたらご連絡いたします」と告げる。そうして客はもう一度、店を訪れるのだ。
奏のセレクトする絵本は時に意外で、時に温かく、時に一読しただけではわからない秘密をもってくる……。そんな奏がこの店を開いた理由とは――?
ほっとひと息つける連作短編集。
冒頭から店主の広田と共同経営者の八木の会話がありますが、実はここが仕掛け。
割りと序盤辺りで謎が判明します。
「絵本屋」というわりに本を1冊も置いていないワケも分かります。
初見で読んだ時は、なるほど、やられた、と感嘆しました。
お客さんへその絵本を勧める理由が、けっこうなこじつけであることがありますが、それでもここのお店の空気に皆癒されていきます。
日常生活でギスギスしすぎて、心の余裕が無い時こそ、本を開く行為が大事なのかもしれませんね。
3冊目は、
十六夜荘ノート
/古内 一絵(著) ポプラ社
英国でこの世を去った大伯母・玉青から、高級住宅街にある屋敷「十六夜荘」を遺された雄哉。
思わぬ遺産に飛びつくが、大伯母は面識のない自分に、なぜこの屋敷を託したのか?
遺産を受け取るため、親族の中で異端視されていた大伯母について調べるうちに、「十六夜荘」にこめられた大伯母の想いと、そして「遺産」の真の姿を知ることになり――。
誰も信じず仕事だけをしてきた雄哉に託された「想い」とは――?
まずパラパラと開いてみると、目次の表記が気になります。
一般的な表題の合間に、年号が挟み込まれます。
それも、文字のフォントがそれぞれ違います。
パッと見た感じでは、なかなか見ない形式の目次だと思います。
それは、読み進めていくうちに何故そうなっているのか分かるようになります。
また、タイトルに十六夜荘「ノート」とありますが、なぜノートなのか、全部読み終えた後に、だからノートなのか、と腑に落ちることと思います。
目次と、タイトル。
どちらも全部読み通した後にそのちょっとした仕掛けの謎が解けます。
はい、いかがでしたか?
ここに紹介した本を読んだことがない人は、この記事だけ読んでもなんの事か?分からないと思いますが、それは是非作品を読んでみて確かめてみてください。
また、読む前に期待が大きいと仕掛けが解けた感動が小さくなってしまうので、あくまで「ふうん、そんなのもあるのね」くらいに留めてから読むと良いかと思います。
本はリンクから飛べるのでご覧下さい。