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全ての“をんな”は性的に満足すべきである[カーマスートラ]

はじめに

 さて、性愛[の教科書]について語ってみよう。

 ヨーガスートラは全ての欲望から離れ、煩悩を無くすことで解脱を目指す“出家修行者”のためのマニュアルです。我々のような在家の者が真剣に取り組んだら、美しい風景を見ても心動かされず、芸術作品を観ても何も感じてはならない。食事も味や雰囲気を楽しませるなんてもってのほか、そんな暮らしが理想的になってしまいます。
 生きる苦しみから抜け出すための修行(=ヨーガ)とは“何の楽しみもない暮らしをすること”なの?一周まわって“何のために生きるのだろう”?と変な方向に進んでしまう危険性をはらんでいます。
 どうせなら『あ〜楽しかった、みんなありがとね』と言って息を引きとる人生のほうが幸福だと思いませんか?


 アルタ(実利、収入)、カーマ(性愛、子孫繁栄)、ダルマ(法、宇宙の法則に従った生き方)、この3つがバラモン教徒/ヒンドゥー教徒のインド人の考える人生の三大目的とされています(ヴェーダーンタ等ではモークシャ(解脱)を四番目に数え四大目的とすることもある)
 カーマには確かに『性愛』の意味があるけれど、他にも願望、愛の神、至高の存在等の意味がある。そう、『カーマスートラ』とは至高の存在に触れることを叶える経典であり、単なるエロなHow To SEXの教科書ではないのです。


カーマスートラの紹介

 この世には2種類の女がいる。性的に満たされた女と、性的に満たされることのない女だ。
 全ての女性が性的な満足感を得られるための経典がカーマスートラであり、女性が深いエクスタシーを感じて満たされていたら、その家庭は明るく幸福な家族が集まる場所となる。
 男は、女性がそうなるためにはどうしたら良いかを学ぶべきである。アルタもダルマもそのために存在する。

前提知識

 あの世に旅立ったご先祖様もあの世で宴会して楽しんだりするのですが、その時の酒や料理は、現世を生きている我々がお供えしたものを召し上がると古いウパニシャッドではいわれています。
 その考え方では、子孫が絶えたらご先祖様もあの世で飢えて苦しむことになります。もし自分に子供がいなければ自分はどうなってしまうでしょう?考えるだけで恐ろしいですね。
 だからインドでは子孫は絶やしてはならないと考えられているのです。

 日本ではすたれてしまいましたが、インドでは親が決めた許嫁がいまだに主流のようです。そのため日本のような自由恋愛による婚前交渉は少なく童貞処女婚が多いそうです。
 カーマスートラの時代(5〜6世紀)ならなおさらですね。

カーマスートラの概要

 初夜を迎える花嫁が不安と期待の入り混じった初々しい気持ちでいる時に、ケダモノと化した花婿が襲いかかったのでは花嫁は恐怖が先に立ち、子作りが単なる義務になってしまうかもしれません。
 義務になってしまったら[逆説的ではありますが]ヨーガスートラのプラティアハーラ(感覚遮断:感覚器官とマナス(思考器官)とのLINKの切断)になってしまいます。
 花婿は処女である花嫁を繊細に扱わなければならない。そのためにはコレコレこういう心構えが必要である。と教え、未経験の花嫁に向けて『男性とはこのような肉体であり、子作りとはこのようなことを行う』と指南する教科書でもあったことでしょう。

 戦士階級(クシャトリヤ)の王族ともなればお世継ぎとしての男子は必須です。そのためには王妃は多いほど良いとされます。一夫多妻(日本の大奥と同じ)です。世継ぎを産めなくなった王妃と新たに王妃として迎えられた若い娘の関係に対しての(両者それぞれに向けての)アドバイスも記載されています。

 釣った魚に餌はやらない、という日本人男性にありがちな態度をとる夫に対して、妻が何を考えているか、最悪の結果を迎える前に夫はどうしたら良いのか。また、そんな人妻を手に入れようとする遊び人には人妻に対してどのようにアプローチすれば良いかなんてことまで指南してくれます。

 歳を経て男性機能が衰えたとしても夫婦仲を良くするための秘訣とか、どうしても奥様が相手をしてくれなくなった時の遊女との付き合い方。
 男性から、その男が持てる財産をいかにして頂戴するかという遊女にとって必須のテクニックまで書かれています。もっとも最後のテクニックは「頂き女子りりちゃん」を彷彿させますね。
 もちろんやりたい盛りの若者のために各種の結合ヨーガポーズアーサナも有れば性器以外での性交(口膣、肛門、道具etc)、SM行為も含まれる、性行為を観察し分析して科学的に客観的に論じる聖典(性典?)です。

ヨーガスートラとの対比

 ヨーガスートラの究極の目的とは『心の死滅』、繰り返しになりますが心踊るような生活とは真逆の『欲望を排して煩悩を滅すること』が絶対条件になります。(後のハタヨーガでは異なる思想体系となりますが、それは別の機会に)
 カーマスートラでは色欲を肯定して、生きることを謳歌します。しみったれたヨーガスートラを蹴散らして、ヴェーダに記された子孫繁栄のカーマに身を委ねる義務ダルマを果たすための教えなのです。

講座のご案内

★カーマの知恵で愛を再発見
マルマヨーガの伊藤武先生により、原典からの直訳(世間に出回るほとんど全部が英語やヒンディー語からの重訳です)で、
『カーマ・スートラ』12回講座
zoomオンライン、録画受講可能
(毎月第2日曜日 13:00〜17:00)✖️12回
場所:名古屋市守山区
受講料:11,000円/回
初回は2024年12/15(日)開講!
詳しくは
https://x.gd/qZVur

をんな 【女】
名詞
①女。成人した女性。
 出典徒然草 八
  「久米(くめ)の仙人の、物洗ふをんなの脛(はぎ)の白きを見て」
  [訳] 久米の仙人が、物を洗う女のすねの白いのを見て。
②妻。恋人である女。
 出典源氏物語 夕顔
  「男は田舎にまかりて、をんななむ若く事好みて」
  [訳] 夫は田舎に赴き、(都に残った)妻は若くて風流事を好んで。

参考「をみな」の「み」が撥音(はつおん)化したもの。「をうな」「をむな」とも。中古以降の語。②のように、物語で「をとこ」と対(つい)で用いられるときには、男と愛情関係を持つ女をさすことが多い。
注意「おんな(=老女)」とまちがえないこと。

学研全訳古語辞典



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