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NHK番組試写室

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NHKの番組に試写のつもりで試聴に臨み、批判と提言を行う記事です。
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記事一覧

【試写】ETV特集「モリチョウさんを探して 〜ある原爆小頭児の空白の生涯〜」

先日、たまたま私のXのタイムラインに30年以上前の番組の情報が流れてきた。 普段ならスルーするが、「D大森淳郎」という表記を見て思わず録画予約を入れた。 大森氏と言えば、最近は「ラジオと戦争」に関連しての論考や著書が注目されているが、一定以上の年次のNHK職員なら知らぬ者はいないほどの「偉大なドキュメンタリスト」だ。 私がNHKに入局した時点でも、すでに「巨匠」と称されていた。どこか皮肉的なニュアンスのある「巨匠」という呼び方が私はあまり好きではないが、大森氏はまさに字

【試写】NHKスペシャル「ジャニー喜多川が築いた“アイドル帝国”の実像に迫る」

既に先週のニュースまとめでも言及したが、改めて番組を巡る情報を点検していくと、件のNHKスペシャルには取材過程や手法に大きな懸念が見受けられる。 一部で好評意見も見受けられるものの、各社からは、番組そのものというより特にNHKのスタンスに対しての批判的な記事も出稿されている。 聞きしによれば、担当した報道番組セクション(以下、報番)では「反響があって大成功だ!」、「どれだけ批判されようと記事になればなるだけ成果だ!」と浮き足立っているという。 しかしその一方、NHK上層

【試写】平野レミの早わざレシピ!2024秋

私は、NHK時代には料理番組を多く手がけていた。料理番組のサブカテゴリーは多岐に渡るが、特に長時間に及ぶ生放送での料理ショーは世界でもNHKにしか作れない番組と言える(これは調べたことがある)。 一見簡単そうに感じるかもしれないが、緻密な準備と計算無くして成り立たないのが生放送の料理番組だ。 今回取り上げる「平野レミの早わざレシピ!」も正当なNHKの料理番組の系譜上に存在する番組だ。だが、私も学んできた「NHKの料理番組が守るべきこと」が簡単に打ち捨てられたような番組だっ

【試写】新プロジェクトX「日本発!革命アプリ世界へ 〜巨大フリーマーケット誕生〜」

「新プロジェクトX」は私のnoteの「試写対象」として既に定番化しつつある。それだけ問題の大きい番組と言えるが、「メルカリ」の回は放送前から嫌な予感がしていた。そして、非常に億劫だったが試写してみると、想像した通りの懸念が顕在化した番組だった。 誤解が無いように最初に述べておきたいが、「メルカリ」自体が日本社会の流通を変革させたプラットフォームであることについては全く異論が無い。 私自身はヤフオクとeBay(Sekaimon)しか使ったことは無いが、家族は黎明期から使って

【試写】クローズアップ現代「健康寿命を延ばせるか“老いにあらがう”研究最前線」

ここ数年のことだが、Yahoo!等のディスプレイ広告に「NHK」をうたうものが増えていると感じる。例えば、2024年9月、こんな広告がYahoo!に表示された。 確かに、この広告の場合、巧妙な文章になっている。あくまでも「成分」の話であるし、当該サイトのLPに掲載されている医師が、過去にNHKの番組に出演したのも事実のようである。また、「脂肪落ちます」とはあっても、どのくらい落ちるのかの具体は示されていない。 ゆえに、違法性があるとは言えないが、NHKの3文字でかなり疑わ

【限定公開】NHKあさイチ「知っておきたい ワクチンと救済制度」感想文

2024年8月28日に放送されたNHKあさイチ「知っておきたい ワクチンと救済制度」について言及することには躊躇いがあった。しかし、ジャーナリスト仲間からのリクエストもあったため、敢えて感想を述べたい。 ただ、私自身、このテーマに関してはセンシティブな立場でもある。そのため、私のスタンスと要旨は全体公開しつつも、それ以外のパートは無用な拡散を防ぐためにも、記事単品での有料公開としたい。 新型コロナワクチンに関しての私のスタンス以前、NW9の捏造問題に触れたときから基本的な

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【試写】ETV特集「戦艦大和 封印された写真」

8月ジャーナリズムとよく揶揄されるが、先の大戦に関する取材を行い、番組として世に問うていくことはNHKにとって最も重要な仕事と言っても良い。 視聴率も見込めず、コストカットが吹き荒れる中にあって戦争関連の特集を作る方々には頭が下がる思いだ。今年2024年は、戦争経験者ばかりか、ご遺族の方々の高齢化も進む中、パリオリンピックとも重なり、制作の苦労は並々ならぬものがあったはずだ。 近年のNスペ・E特は「銃後の暮らし」などにフォーカスされることも多く、直球の戦争モノは減少傾向に

【試写】新プロジェクトX「世界最速へ技術者たちの頭脳戦〜スーパーコンピューター『京』〜」

6月16日、日曜日の朝、名も知らぬNHK職員から1通のDMが届いた。 「京のX、見ましたか?つまらなかったでしょう?スタジオも全く生きていないし。理化学研究所の取材を十分せず、富士通に都合の良い人のストーリーばかりで、PDの力の無さが露呈している」 京が放送ラインナップに入っていることは、私は随分前から取材を通じて把握していた。文系だらけのNHK職員にとってはアーキテクチャーが難解なだけでなく、政治・経済的に様々な利害関係が渦巻くテーマなだけに、今のNHKの制作力では”事

【試写】レギュラー番組への道「コント×ドキュメンタリー 笑う会社革命」

私がNHKに就職した頃に話題となった「サラリーマンNEO」へのオマージュ的な番組が放送された。題して「笑う会社革命」。レギュラー化の道を探る、いわば実験枠。確か「サラリーマンNEO」も、似たような経緯で始まった。 今回の番組のテーマは、直近放送された「クローズアップ現代」とも近い。 NHK職員や外部プロダクションの中にも、不正の隠蔽はダメだという意識があるのかもしれない。 不正と隠蔽の連鎖が相次ぐ現代、どのような問題提起をするのか?興味深く試写に臨んだ。 番組総評レギ

【試聴】Nらじ「みんなでファクトチェック」(ゲスト:日本ファクトチェックセンター・古田大輔)

テレビ番組の事前チェックのことをNHKでは「試写」と呼ぶ。一方、ラジオは「試聴」である。今回は、かなり懸念のあるラジオ番組がNHKで放送されているという情報を聞き、1日遅れで試聴することにした。 懸念あるラジオ番組とは、「Nらじ」の中のコーナー「みんなでファクトチェック」である。 NHKのような捏造報道の常習者であり、局内でも何かあると脊髄反射で捏造と隠蔽に走る組織が「ファクトチェック」の時点で笑止千万なのだが、今回はもうひとつ見過ごせない点があった。 日本ファクトチェ

【試写】クローズアップ現代「“守られない通報者” 内部告発を社会の利益に」

私はクローズアップ現代が嫌いだ。当事者はNHK内では偉そうに振る舞っているが、実のところはご都合主義のストーリー作りが横行している番組だからだ。西館6Fにある暗がりのクロ現部屋を覗くと、上層部含めて何十人も試写に群がっては理屈をこねまわす姿がいつも目に入ってきたが、見る度に嫌な気分になったものだ。 「出家詐欺」などNHKの存立を揺るがせるような不正の震源地になったことは誰しも知るところだが、実は、“クロ現人脈”は他にも様々な捏造報道に関与している。 しかし、NHK的には「

【試写】新プロジェクトX「友とつないだ自動車革命 ~世界初!5人乗り量産EV~」

今回の新プロジェクトXのテーマは、日産リーフ。私は正直、予告を見てガッカリした。かつてゴーン氏は「2030年までに日産がEVで覇権を取る」と各所で宣言していたと聞くが、承知の通り、その野望は潰えたからだ。「夢のあと」を今更見させられるのかと。 私が「R35 GT-Rの開発を改めて見たい」とコラムに記述したのは、結局、日本が世界に誇るブランドはGT-Rしか無いからでもある。 番組前に相次いだ「世界初」への指摘この番組には放送前から不穏な空気が漂っていた。 EPGに当初記述

【試写】NHKスペシャル「山口一郎 “うつ”と生きる〜サカナクション 復活への日々〜」

私の”協会人生”の中で、決して長い期間ではなかったが思い出深いのがNHKスペシャル(以下、Nスペ)だ。私が大型企画開発センターに在籍していた当時、センター長は事あるごとに「Nスペの要件は、スクープ・感動・チャレンジだ!」と檄を飛ばしていた。 私自身のNスペが十分に要件を満たしたとは今も思えないが(ただし数字は良かった)、部外者となった今もNスペを見る上での私の基準は「スクープ・感動・チャレンジ」だ。 その観点からすると、5月5日に放送された「山口一郎 “うつ”と生きる〜サ

【絶望】「会長ラジオ」はNHKの価値を貶めた

なぜ、辞めた私がこんなに怒っているのか意味不明ですが、そのくらい「会長ラジオ」は酷い番組でした。現役の職員からも非難が巻き起こっていますが、皆さんなかなか声には出せないと思いますので、頂いたコメントを交えながら問題点を指摘します。 恒例の“文通コーナー”もあります。 経営広報番組「会長ラジオ」とは?

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