だらねこげーむず

キャラの需要と供給を支配する、キャラ追加のゲームデザイン

◆新キャラの大事な使命

ソーシャルゲームの新キャラには、皆、最優先するべき使命があります。売れることです。売れてお金を稼いでくることです。物欲を刺激し、ガチャを回させ、皆に使ってもらう。とても、とても大事なことです。

こーんな事を言っていると

うるせぇ!商業主義の豚め!!
俺たちはそんなことより面白い物を作るんだよ!!!

なんて事を言われそうですが、「売れない」ってことは「使われない」ということで、「使われない」ということは「そのキャラでゲームが面白くならない」ってことでもあります。

たまに、「売れれば良いんだろ?」って感じでゲームデザインを諦めてぶっ壊れたものを出す人がいますが、売れることと面白くなることは必ずしも相反しないので、絶望せずにまずは両立を目指すことをお勧めします。売り上げが欲しい時に、狙って多少の壊れキャラを出すのはアリですけどね。


◆売るためにはどうすれば良い?

さて、売るためにはユーザーの物欲を刺激しなければなりません。ユーザーが欲しいと思うものを捧げるのです。つまり

需要を把握し、それを供給してあげる

わけです。はい、めっちゃ当たり前なことを言ってます。

念のため言っておくと、どういうビジュアルの子が売れるとかそういう話ではないです。ゲームデザインの話なので、どういう性能のキャラが売れそうか?、とかそういう話です。

さて、そうすると、

今のユーザーの需要が何か考えよう!

ってなるわけですが、はい、めっちゃ当たり前なこと……のようですが、ちょっと違うなと思っています。部下を教えている時に「いや、そんなことしているやつは二流だね」とカッコつけて言ったりすると「は?何言ってんだコイツ?」みたいな顔で睨まれたりしますけども。

どういうことかと言うとですね。ゲームにおける創造神はゲームデザイナーなんです。神ですよ神。ごっど。なので、

今、世界に、何が必要なのか

はゲームデザイナーが作れるんです。つまり

今、何がどのくらい需要があるのか?
それをどのタイミングでどのくらい供給するのか?

というのはゲームデザイナーが計画して作れるんです。なのでその観点から言うと、

今のユーザーの需要が何か考えよう!

というのは、その時点で後手に回っているんです。計画ができていないんですね。「創造神」ではなく「行き当たりばったり神」。ゲーム環境を自分でコントロールできていないともいえるので「二流」と言うわけです。

ゲームデザイナーが環境をコントロールできていれば、今の需要を毎回頑張って調べる必要はないのです。「確認」はしますけどね。


◆需要を作るゲームデザイン

さて、ゲームデザイナーが需要を作れ!とのたまったわけですが、どうやって作りだすのか。これは、そう難しく考える必要はないです。私がよく気を付けているのは以下の3点。

①何か弱点のある環境を作る
②弱点を攻める試練を作る
③弱点を埋めたら、同時に別の新たな弱点を作る

1つずつ解説していきましょー。


◆①何か弱点のある環境を作る

「火力もある、回復も困らず、状態異常への対策もばっちりだぜ!」みたいな、常に全てが満たされている環境だと需要は作りにくいです。だって満たされているのだもの。

需要は足りないところに発生します。よくある簡単な例え話をすると、日本で道行く人に「このただの水を10000円で買ってください」と言ってもまぁ売れないでしょう。しかし、砂漠で水が無くて死にそうな人に対して「このただの水を10000円で買ってください」と言えば、買ってくれる確率は跳ね上がります

ゲームに話を戻すと、この例え話の水がキャラで、日本と砂漠が環境です。

水不足の砂漠な環境を作り、そこに水を投入する。
そうすると水が売れる。

なんか酷い例え話をしている気がしますが、まぁ考え方としてはそういうもんです。

もうちょっとゲームに寄せて話すと、PTの中に攻撃力の高いアタッカーが3人いて、回復力の高いヒーラーが2人いる。攻撃力も回復量もかなり高いので正攻法には強いけど、状態異常は回復できないので搦め手でこられると負ける…とか。そんな感じで、PTの状態に何かしら穴を空けます。


◆②弱点を攻める試練を作る

せっかく弱点を作っても、その弱点を突かれなければ弱点の意味がない、というのは分かる話だと思います。上記の例で言えば、状態異常には弱いかもしれないけど、そもそも状態異常をかけてくる相手がいないよ、とか。火力が高いし状態異常にかかる前に敵をぶっ殺せるから気にならないよ、とか。

なので、

弱点に合わせた「試練」

を作ります。例えばクエストのボスで、こちらの火力に耐えるタフなHPを持っていて、自身の攻撃力は低いけど「魅了」という状態異常を使ってくるので味方が同士討ちを始める…みたいな。PT自慢の攻撃力が味方に向く上に、回復役がボスを回復し始めたら、阿鼻叫喚なことになります。

こんな感じで「弱点に合わせた試練」を用意することで、ユーザーは問題意識を持ち需要が発生します。状態異常回復が無いとヤベェ、と。そこに魅了が効かない状態異常回復持ちを供給してあげれば、その子は売れるわけです。

…まぁ、ぶっちゃけ強いキャラ出していれば売れるよ、という側面はありますけど。ただこっちの方がステータスがアホみたいにインフレさせなくても需要が発生するので、本当に売り上げが欲しい時の切り札として、ステインフレの壊れキャラが使えます。毎回インフレキャラ出すと効果が薄まるでしょうし。


◆③弱点を埋めたら、同時に別の新たな弱点を作る

ようし、状態異常回復も入ったし、これで完璧なPTだ!!!

みたいな話になると、次に出す新キャラどーすんの???という話になるので、この追加した新キャラにも何かしら弱点をつけます。状態異常回復ができる代わりに、HPの回復力が低いとか。全体回復できないとか。蘇生ができないとか。ここでつけた弱点が次の新たな需要になります。そしてその需要こそが未来の新キャラの個性となります。

上記の例はクエストなのでボスで説明しましたが、対人系のゲームであればユーザーの持っているキャラ自身が試練になります。その場合はTCGとかで言う「メタを回す」を意識すると良い感じになります。火力のある構成はタフな構成を仕留めきれずに負ける、タフな構成は搦め手構成の嫌がらせに負ける、搦め手構成は火力構成に耐えられない……とか。有利な環境を1つ作っておいて、キャラを追加する度にその有利な環境が変わっていく形です。

◆まとめ

まとめると、

①ソシャゲの新キャラは売れるのが使命、悲しい惨めなキャラになる。
②売れるためには需要を把握する必要がある
③毎回、需要の把握に奔走するゲームデザイナーは二流
④ゲームデザイナーは神なので、自分で需要を設計できる
⑤ユーザーに問題意識をもたせることができれば、それが需要になる
⑥環境に「弱点」と「試練」を作ることで、狙った需要が発生する
⑦弱点を克服し、試練に対抗できるキャラを供給すると売れる
⑧ステを無駄にインフレしなくて済むので、壊れキャラを売り上げの切り札に使える
⑨新キャラにも弱点をつけることで、未来の新キャラの需要を作れる

ってなとこでしょうかね。

欲しいと思った物が手に入るのは楽しいので、この需要と供給をコントロールするという考え方はソーシャル以外でも使える気はします。ダンジョンの宝箱からどんなの出すべき、とか。どのレベルでどんなスキルを覚えるべき、とか。

参考になれば幸いです。


◆宣伝

今はもう、ソーシャルゲーム作ってないでインディーゲーム作ってます。

「需要と供給」の考え方は、コンシューマー系のゲームでも同じです。ダンジョンで何のアイテムが、装備が、どんなスキルが手に入ったら嬉しいのか。その需要を作るためにどんなボスを作るのか。

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だらねこ
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