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分業の時代、発達障がいは司令塔となる



1.分業の時代


今後数世紀の経済発展に、中心的な役割を果たすのは分業化である。

アダム・スミス『国富論』

1776年、すなわち日本がまだ江戸時代だった頃、イギリスでは世界に先駆けて「分業」という概念が生まれました。この分業化に関するアダム・スミスの発言は、2025年時点で見事に的中していると思います。日頃の日常生活で「分業」を意識することは少ないかと思いますが、「分業」という制度が現代の日本やグローバル経済を支えているのは事実でしょう。

例えば、お昼に食べるパン一個をとっても、消費者の私の手元に届くまで「分業」のレールを辿ってきています。小麦を生産する人、その小麦を運搬する人、パンを製造する人、お店にパンを運ぶ人、そのパンを販売する人というように、何人もの手に分けて製造がなされています。役割を分担して製造しているからこそ、大量生産が可能となり、結果として、私たちは質の良い商品を安価で提供してもらえるわけです。

効率化・コストパフォマンスの重視が一概に良いことだと言い切ることはできないかもしれませんが、「分業」なくして今の経済は成り立たないでしょう。

2.分業と障害者雇用

話は飛躍しますが、上記の分業化は「障害者雇用」に関する政策を後押ししてくれると私は思います。そもそも「障害者雇用」の政策は、

障害のあるなしに関わらず、誰もがその能力と適正に応じた雇用の場に就き、地域で自立した生活を送ることができるような社会の実現を目指し、障害のある人の雇用政策を総合的に推進しています。

厚生労働省ホームページ

という理念で進められているものです。ここで、上記引用の中の「誰もがその能力と適正に応じた雇用の場」という部分に着目し、1の「分業」の話と照らし合わせて考えたいと思います。

一般的に障がいを抱えている人は、心身の関係上、得意・不得意なことの差が顕著に出ると言われています。私は発達障がいと診断されていますが、やはり得意なことと不得意なことの差が激しいです。具体的にいうと、言語化する力や長期的な記憶には自信がありますが、物の組み立てなどに必要な知覚推理力や瞬間的に物事を処理する情報処理力は数字を見ても低迷しています。要は、凸凹が激しい人間なのです。

私のような凸凹が激しい人間には、1の「分業」は望ましい傾向です。なぜなら、「分業」の体制下の方が自分の特技を活かせる業務に専念できる可能性が高くなるからです。具体的に、1にも書いたパンの製造にあてはめて考えたいのですが、手先が不器用な私にはパンを製造する自信がないですし、小麦を育てる力もなければ、ペーパードライバーなので運搬のお役にも立てないと思います。しかし、私の言語力と対人スキルを磨けば、販売に関してはお給料を頂ける働きができるかもしれないと感じられます。

要するに、凸凹が大きい私には、材料の調達から製造、販売までの全てを担う力はないのですが、その過程の一部分であれば責任をもって任務を全うできるかもしれないのです。言い方を変えると、社会の分業の促進は、分業ではない時代であれば関わることのできなかった業界でも働けるチャンスが生まれるということなのです。

上記の理論から、厚生労働省が掲げる「誰もがその能力と適正に応じた雇用の場」というのも、分業化が進んだ方が生まれる可能性が高まると思います。オールマイティーでなくとも、どうしても苦手なタスクがあったとしても、分業によって仕事が分けられていて、自分の得意に集中できる環境があれば特性に関係なく仕事ができると思います。むしろ、特性をプラスに機能させられるかもしれません。

例えば、教育の業界でも、授業をする人・教材を作成する人・事務をする人など、分業が進むことで、子どもが好きで教育にも携わりたいけどどうしても人前に出るのは苦手というような人も教育業界に進出できます。

障害者雇用の促進は国も関わる一大政策ですが、この政策に救われる人がどれだけ増えるかは、分業がどれだけなされるかにもかかっていると思います。

3.現場よりもマネージャーの方が向いていますよ

ここからは、私の体験談になります。
「現場よりもマネージャーの方が向いていますよ」という言葉は、私が高校教員時代に、主任から言われた言葉です。実際のところ、私はマネージャーや主任になる前に教員を退職したのですが、教員時代は周囲の先生方から、マネージャーや主任に向いていると言われていました。思えば、いずれも障害者雇用ではなくクローズの就職でしたが、高校教員の前の塾講師の時も最後は25人の講師を束ねるリーダー講師となっていました。発達障がいを抱えている私ですが、クローズで就職をすると、いつもマネジメントする側に推薦されます。蛇足ですが、大学時代の活動でも、いつもリーダーや委員長を務めていました。

私の特性上、一番自分に合った「能力と適正に応じた職場」というのが、組織をマネジメントするというところなのかもしれません。現場での振る舞いはあまり得意でないですが、計画的に物事を進め、人を鼓舞する力には自信があるというのも本音です。もちろん、そのマネージャー側にいくためには現場で結果を出さなければならないでしょう。しかし、私は発達障がいだからこそ、マネジメントする方が向いているのかもしれません。

分業が進めば進むほど、それを統括する司令塔の約割が重要です。興味があるといってなれるものではないでしょうが、私はその司令塔になりたいです。そして、障害者雇用枠のリーダーが増えると良いと思います。

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