【文化財紹介】大阪の戦前の町工場のモダンな建物
【2022年9月1日/大阪歴史倶楽部】
大阪歴史倶楽部です。
大阪市西成区にあります戦前の町工場のモダンな建物をご紹介いたします。
久金属工業
大阪市西成区北津守3丁目にあります久金属工業株式会社さんは、1915(大正4)年に「久製作所」として大阪市浪速区桜川1丁目で創業されました。現在地に移転したのは1934(昭和9)年のことで、現存している事務所棟はその3年後の1937(昭和12)年に建てられたものです。
外観の写真
以下は久金属工業さんの事務所棟の外観写真です(2021年9月 大阪歴史倶楽部 撮影)。
この事務所棟は、1937(昭和12)年に完成しました。木造2階建で屋根は瓦葺です。北面と東面の外壁には当時流行していた黄褐色のタイルが貼られていて、建物の腰部分には御影石を3段積んでいます。お洒落な窓枠や手摺などがこの建物の特徴のひとつです。
建築された当時は食堂や工場の一部などとして使用されていたようですが、現在は1階を事務所と役員室に、2階は応接室や会議室などに使用されています。
この建物は、昭和初期の「大大阪時代」のモダンな雰囲気をよく伝えている建物だと思います。
久金属工業への行き方
久金属工業へは、南海電鉄汐見橋線「木津川」駅から南へ約400m(徒歩約7分)または同「津守」駅から北へ約700m(徒歩約10分)です。「木津川」駅と「津守」駅との間にあります。汐見橋線は運転本数が少ない(約30分に1本)ですので注意が必要です。
JR大阪環状線「今宮」駅からですと西へ約1.2km(徒歩約25分)です。JR大阪環状線は運転本数は多いのですが「今宮」駅に停車する電車は少ないですので、こちらも注意が必要だと思います。
おわりに
久金属工業さんは、1915(大正4)年に大阪で創業した老舗の金属加工会社さんです。ビンや缶のキャップ、とくにウイスキーボトル用のキャップや医薬品用瓶のキャップでは日本トップクラスの技術と生産性を誇っています。小さな町工場でありながら、常に時代の最先端を行く技術力や開発力をもっている、その業界ではトップを走っている企業さんです。
そしてこの小さな町工場において、いまから85年も前の昭和初期(大大阪時代)の建物がとても良い状態でたいへん綺麗に保存され、現在も大切に活用されていることは、ほんとうにすばらしいことだと思います。
なお、ここで紹介致しました久金属工業さんの事務所棟は、現在も操業中の工場の敷地内にある建物です。ですからこの建物を見学したり写真などを撮影されるときには、基本的に工場の敷地外からお願い致します。工場の人や周辺の方々に不快感を与えたりご迷惑にならないよう充分なご配慮をお願い致します。
また許可なく工場の敷地内や近隣の他の人の敷地内には入ったりしないようお願い致します。
今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。
【参考サイト】
「本社建造物」(『久金属工業』さんのオフィシャルサイト内)※久金属工業さんによる写真が掲載されています。
【おもな参考資料】
○『全国工場通覧 昭和7年7月版』商工省 1932年
○『西成区史』西成区市域編入40周年記念事業委員会/大阪市西成区 1968年
○『西成区制90周年記念誌』大阪市西成区 2016年
(『大阪歴史倶楽部』第1巻 第5号 通巻5号 2022年9月1日)
※次号は2022年10月1日に投稿する予定です。
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