【文化財紹介】レトロモダンな戦前のビル 〜小川香料大阪支店〜
【2023年3月1日/大阪歴史倶楽部】
今月も先月に引き続き大阪市中央区にあります戦前のレトロなビルをご紹介いたします。
小川香料大阪支店
小川香料大阪支店は、大阪市中央区の古くから「船場」と呼ばれてきたエリアの中にあります。この船場地域(概ね現在の北浜から心斎橋あたりまで)は近世以来、伝統的に大阪の商業の中心地であり明治以降の近代大阪においても大阪経済の心臓部でした(いまも同様に大阪経済の中心地です)。
外観の写真
以下は小川香料大阪支店の外観の写真です(2023年1月 大阪歴史倶楽部 撮影)。
小川香料は1893(明治26)年に大阪市中央区道修町で香料を専業とする会社として創業した我が国で最も古い歴史を持つ香料専業会社です。この建物はその旧本社ビルで1930(昭和5)年に建てられました。大阪市がもっとも繁栄していた「大大阪時代」に建てられた、とてもモダンでレトロなビルです。
建物の特徴
小川香料大阪支店の建物は、アール・デコ風のデザインです。当時はアール・ヌーヴォー(新芸術)の時代が終わり、シンプルなアール・デコ(装飾美術)のデザインが世界的に流行していました。
1階は上部にアール(円弧)を持たせた玄関開口部とその両側に小さな洋燈というシンプルな外観。2階以上は角部分にアールを持たせた連続窓を思わせるような横長の大きな窓枠を持っています。
全体的にシンプルでスッキリとしたデザインで、これがいまから90年以上も前の建物だとは思えません。大正時代の後半から昭和初期にかけて大阪市が最も繁栄していた栄光の時代「大大阪時代」のモダンで洗練された雰囲気をよく伝えていると思います。
なお、1963(昭和38)年に4階部分を増築し、そのほか玄関周りなども古くから改変されていたのですが2019(平成31)年に減築・改修され、現在はほぼ1930(昭和5)年の竣工当初の姿に戻されています。2009年に国の登録有形文化財となりました。
小川香料大阪支店への行き方
小川香料大阪支店へは、大阪メトロ堺筋線「堺筋本町」駅17号出口から約600m(徒歩約10分)です。
行き方の目安は、大阪メトロ堺筋線「堺筋本町」駅17号出口を出て、堺筋沿いにまっすぐ北へ進み「平野町1」の交差点を西へ入って約200m(徒歩約3分)のところにあります。
「平野町1」交差点の南西角には以前にこの『大阪歴史倶楽部』で紹介させていただいた、1930(昭和5)年竣工の時計塔がある名建築「生駒ビルヂング」(生駒時計店 本店)があります。
この美しい「生駒ビルヂング」の角を左折してしばらく進むと北側(右手)に小川香料大阪支店があります。
おわりに
今回も先月に引き続き大阪・船場にある戦前のモダンなビルを紹介させていただきました。小川香料大阪支店さんは、1930(昭和5)年に建てられたとてもモダンな建物です。現在みても古さを感じないそのデザインはすばらしいと思います。
2019(平成31)年に減築・改修されて1930(昭和5)年の竣工当初の姿に近い状態に復元されたことも、とても素敵だと思います。
なお、ここで紹介いたしました小川香料大阪支店さんおよび生駒ビルヂングさん等の建物を見学したり写真や動画などを撮影されるときには、所有者さんや管理者さん、周辺の方々に不快感を与えたりご迷惑にならないよう充分なご配慮をお願い致します。
また許可なく他の人の敷地内に入ったりしないようお願いいたします。とくに建物内部の撮影はセキュリティの関係もありますので、必ず所有者さんや管理者さんなどの許可を得てくださいますようお願いいたします。
今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。
【参考サイト】
小川香料さんのオフィシャルサイトです(とても素敵なサイトです)
【参考にした資料】
◎『建築と社会』20集第9号 日本建築協会 1937年
◎高岡伸一 他『大大阪モダン建築』青幻社 2007年
◎『国指定文化財等データベース』文化庁 2023年
◎「小川香料大阪支店社屋」『文化遺産オンライン』文化庁 2023年版(WEB版)
◎『小川香料大阪支店社屋』大阪文化財ナビ 大阪府建築士会 2023年版(WEB版)
◎「小川香料株式会社 大阪支店」『生きた建築ミュージアム・大阪セレクション』大阪市 2023年版(WEB版)
など。
(『大阪歴史倶楽部』第2巻 第3号 通巻11号 2023年3月1日)
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※次号は2023年4月1日に投稿する予定です。