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レモンでミモザでちょっぴりアメフラシ

先日、黄色のカーディガンを買った。今まで私のクローゼットにはなかったタイプの、鮮やかなイエローだ。


スマホで画像を見ていた時よりもずっと明るくて眩しい色合いに、箱を開けた時思わず、「これは失敗した」と思った。これは私の着るやつじゃなかった、あの時やっぱりベージュにしておいたら良かったのだ。
それか、「購入にすすむ」前に一呼吸置けば良かったか。

でも、届いちゃったし。
そっと袋の封を開ける。今ならまだ、「返品」することもできる。
袋から出して、手に取る。

フワッとした手触り。まだ一度も手を通されていない、新しい服の匂い。前見頃についている折りじわを薄くしようと、床に広げてみた。
わぁ、春。


包んであったビニル袋を捨てた。
段ボール箱もつぶして、カーディガンは鏡台のそばに持っていった。このまま箪笥にしまってしまったら、次取り出すのは来年になるかも知れないので、鏡台の手前にふわっと載せておくことにする。


来週職場に来ていく?
いや、まだちょっとハードルが高い。職場だと袖口も汚しそうだし、着るのは週末にしよう。
せっかくなら、どこかに出かける時がいいな。いや、そんなことを言っていたらまたチャンスを逃してしまう。おしゃれな人は、何でもない部屋着も、ときめくものだけにするって言うしね。
私はおしゃれな人でも何でもないけど、
でも少しワクワクした。

そもそも、何故、柄にもなく鮮やかな黄色のカーディガンを買ったのか。

それは、スタエフで、ある人と初めてお喋りをしたことがきっかけだった。
お相手は書きのたね@ブルボンヌさん。私は たねさん と呼ばせてもらっている。

たねさんはご自身のスタエフで、太陽星座、月星座を主なテーマに、お1人ずつゲストを招いてお話をされている。

たねさんの話を聞いてみると、それはまるでカウンセリングのように感じられた。
その人が、人生において何を重視していて、今、何に足を引っ張られているのか、
どうすることでその(自分の無意識の)枷を取り除くことができるか。
単なる12星座の性格判断にとどまらず、自分への向き合い方を示唆サジェスチョンしてくれるのが面白いなと思った。
水瓶座の人とお話したいが見つかっていないとのことだったので、急遽、私2月生まれ(もうすぐ‥!)の水瓶座です!と立候補したのだ。

星座には、私たちが普段から慣れ親しんでいる星座(太陽星座)ともう一つ、出生時間から分かる 月星座 というのがあるらしい。
そして私は、その両方が水瓶座とのことだった。
月星座についての詳細はたねさんのアーカイブを聞いていただくとして。そのトークの後半、私はたねさんから突然問われた。


「今持ってる服、何色が多いですか?」

普段着る服は、紺、黒、緑、グレーにベージュだ。たまにえんじ色、デニムの水色が混ざる程度。箪笥を開けなくても即答できる。
その日着ていた服も、寒色系のチェックのシャツにグレーのボトムだった。
「あー、全部捨てましょう!」
たねさんは明るく言い放った。
?!!
私のワードローブから紺黒グレーがなくなったら、大げさでなく明日から着るものがなくなる。

「お仕事用はひとまず後回しにするとして。今まで着てみたことのないような色を。どピンクとかがいいです。(今の服は)次の燃えるゴミで出しましょう!」

人には干渉せず、公には当たり障りないことばかり口にするこの時代に、そんなこと真正面から明るく言われることもなかなかないので、妙に楽しくなった。
「原色を意識して。まずは靴下で、赤とか黄色。」
サーモンピンクは?「くすまないでください。華やかとか、ゴージャス。今までと違うことやってみましょう。」
ビビッドなってことですね?「そうです。」
そして、ゴールドのアクセサリーや、がははと笑うことを勧められた。

水瓶座の真逆である獅子座の守護星、太陽。イメージはそれらしい。
たねさんは言った。あなたの本来持ってる魅力はそれなんです。あなたが、がははと笑い、輝くことで、周りもまた輝くんです。目指すは、女性版・所ジョージです。
‥なるほど、髪、金色だね。

1時間強のお喋りが終わってマイクを切った時、私の頬はきっと紅潮していたと思う。
単に性格について語り、今持ってない服を勧められただけなら、納得できなかっただろう。
金髪も、どピンクにも縁がない。着たいと思ったこともない。あなたの本来のポテンシャルは「主張すること」ですと言われても。

ただ、たねさんの言葉が耳に残った。

「チャレンジしない人生って言うのは、(本来の自分を)獲得することを諦めてしまう」
「わがままな自分でいい」
「自分自身を楽しんで欲しいんです。だって面白くないんだもんでやめてもいい、直感を信じていい」
「(その方が)絶対に楽しいに決まってるじゃないですか」

今だって私は人生に満足している。充分楽しんでいると言える。
でも。私は新しいことを学びたかった。今の自分のままでなく、変わりたかったのだ、多分。だから今回の対談トークに手を挙げた。
たねさんはなおも続けた。
だいなさんにひいたカードは、死神です。
死神ってね、みんな恐れるけど、これ再生なんです。一度終わらせる。変革なんですよ。

変革。悪くない。
と言うか、楽しそうだ!!


翌日、私は赤い靴下を買った。
今持っている、色の暗い服を全部は無理だけど3枚処分した。
そして、ネットで黄色のカーディガンをポチッとした、という訳だ。

ここで終われば、テーマは「自己肯定」と「新しい自分」でいい感じだったのに。我が家の場合、まだ続きオチがあった。

カーディガンが届き、鏡台に載せておいたその週末。私が袖を通す前に、新しいものを見つけるのが早い次男が、この服なーに?と手に取る。
あ、それママの。汚さんといてよ。
へー、と意外そうに広げる次男。やっぱり、私が普段着ているものと、毛色が全然違うからだろうか。
新しいニットの感触を楽しそうに確かめている。

長男もやって来た。
何これー。
あ、これね、ママの服‥
アメフラシの卵みたい!
ア、アメフラシ?!
うん、アメフラシの卵!焼きそばみたいなやつ!
アメフラシの卵?!焼きそば‥?!
焼きそば‥
リアクションが想像の斜め上からきたので、かえす言葉が出てこない私を前に、次男も「ほんまや、アメフラシの卵の色やー」と盛り上がっている。

や、焼きそばと違うし!焼きそばって茶色やんか。ほら、これはこんな綺麗な黄色やん。例えるならレモンやろ?
それに何だ、アメフラシって。あの紫とか縞模様っぽいグニャグニャしたやつやろ。全然色違うやん。
と思いつつ、こっそり画像検索してみた。アメフラシの卵の色までは知らない。


そこには、確かに、鮮やかな黄色の麺類のようなものがいた。
(アメフラシもその卵も画像貼るのは自粛しますが、気になる方はぜひ検索してみてください。)
子どもの表現の、言い得て妙なことよ。



赤い靴下はそれからヘビーローテしている。
ライムグリーンのシューズも注文した。後は手元に届くだけだ。届いたその翌日から履こうと、今から心に決めている。


でも、アメフラシの卵色のカーディガンは、まだ着ることができていない。
たねさんとのお話から2週間が経った。デリカシーのない長男の発言を書いてちょっとすっきりできたので、レモンイエロー、いや、春らしい「ミモザイエローのカーディガン」を明日から着ることを、私はここに宣言します。

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