原子心母 IF (歌詞和訳) 〜 狂気, 月の裏側 "Brain Damage", "Eclipse" by Pink Floyd
月 と 狂気、ピンク・フロイド 1973年の「狂気」
「狂気」はロック・ファンなら言わずと知れたピンク・フロイド 1973年リリースのアルバム "The Dark Side of the Moon" の邦題なわけだけれど、筆者は特にあの邦題を気に入っているわけではない。ただ、まぁよくできた邦題と言っていいんだろうと思う。というか、あれしか無かったのではないか。筆者がレコード会社の邦題担当者みたいな役だったとしても、あのアルバムは「狂気」という名で売ろうと提案したんじゃないかと思う。よくできた邦題であるけれども、飛び切り「よくできた」邦題ということでもない。詰まるところ、「狂気」ってタイトルは誰でも思いついたんじゃないかと。
"The Dark Side of the Moon" は直訳すれば「月の裏側」か、あるいは「月面の影の部分」といったところだと思うけれど、これでは日本のリスナーには伝わりにくい。というのは、日本では月から狂気を連想することはあまりないように思われるからだ(たまにはあるかなと思うけれど、ここでそれに深入りするとキリがなくなるので愛を割ります)。
邦題「狂気」の最後から 2番目の曲に "Brain Damage" というのがあって、あの歌は "The lunatic is on the grass. The lunatic is on the grass." という繰り返しで始まるが、あれは直訳すれば「狂人は草地にいる」とか「狂人は野にいる」とかいう日本語になる(grass には俗語でマリファナの意味もあるが、この歌の歌詞のその後の展開を考えれば grass は単に「草地」「野原」程度の意味でよいと思う。「芝生」という日本語にすると何だかほんわかした和らいだ気分になってしまうので「芝生」は避けたいところ)。
"lunatic" は名詞なら「狂人」とか「精神錯乱者」、「奇人」「変人」といった意味になり、形容詞としてなら「気が狂った」、「狂気の」、「精神錯乱の」、あるいは「ばかげた」といったような意味になるけれど、英語には同じ語源からできた lunar という形容詞があって、意味は「月の」。
語源はラテン語の luna で、これがまさしく「月」を意味する。月が人間に狂気をもたらすという古代から伝わる発想があって(おそらくはギリシャ・ローマの時代あるいはそれ以前からなのかもしれないが、専門的に詳しいわけではないので、ここではとりあえずそれ以上深入りはしない)、それが言葉にも反映しているというわけだ。
この辺り、深入りしない程度ならば、例えばここ。
ピンク・フロイド 1970年「原子心母」の裏側より IF ー 歌詞和訳
「原子心母」(原題 "Atom Heart Mother")の LP, レコード盤の裏側の最初の曲 "IF" は、間違いなく、後の「狂気」(原題 "The Dark Side of the Moon", 月の裏側)に繋がっていく曲だと思う。因みに "IF" は、Roger Waters が作詞作曲した歌。
「原子心母」というのはこれ。昨日投稿したやつで、もちろん読んでほしいけれど、それはそれ、今日の投稿とはまた違う切り口なので(昨日はナイフで切って今日は包丁で切りました、道具って意味ないか)、後で構いません。
「原子心母」、原題 "Atom Heart Mother" はピンク・フロイドが 1970年にリリースしたアルバムだけど、1971年の邦題「おせっかい」(原題 "Meddle")を挟んで、もう少し厳密に言うなら1971年にリリースされたコンピレーションアルバム「ピンク・フロイドの道」(原題 "Relics")、1971年の「おせっかい」("Meddle")、1972年の邦題「雲の影」(原題 "Obscured by Clouds", これは映画のサウンド・トラック)を挟み、1973年になって、ピンク・フロイドの、ロック史に残るほどの、ウルトラという修飾が相応しいようなヒット作(チャートにおいても売り上げにおいても怪物的なヒット作だった)である「狂気」、原題で言うなら "The Dark Side of the Moon" が発表されている。
「原子心母」と「狂気」の時系列上の位置関係はそんなところだが、ここで話を「原子心母」に戻す。そして、そこに収録された 1曲に注目することにする。アルバム・タイトル曲「原子心母」と合わせれば 2曲、ということにしてもいいけれど。
「原子心母」の LP, A面全てはタイトル曲(組曲)で占められていて、それを聴いた後、レコード盤を裏側にひっくり返すと、その 1曲目に "IF" というタイトルの曲がある(べつに "If" でも構わないけれど、それでは表記上インパクトが弱いので、それだけの理由で "IF" とする)。
もちろん、A面 と B面 の妙 というのはレコード盤の時代のなせる業で、CD とかネットでのストリーミングによる音楽提供の時代になると、どうでもよくなってしまう話。ミュージシャン、アーティストが当時、LP 形式のアルバムに曲を収録するにあたり A面 と B面 というものを意識していたかどうかも分からない。意識した人たちもいただろうし、しなかった人たちもいただろうし、意識したりしなかったりの人たちもいただろうし、リスナー側についても、それは言える。意識した人たちもいただろうし、意識しなかった人たちもいた、一人のリスナーでも、意識する時もあっただろうし、意識しなかった時もあっただろう。
ここではですね、あえて意識しているだけです。
つまりですね、組曲 "Atom Heart Mother" (邦題「原子心母」)が収録されている A面を表側とすると(あるいは太陽みたいなものだと捉えてもよい)、その裏側(月の裏側、あるいは A面を太陽と捉えるならば月そのものと解釈してもよい)である B面の 1曲目が "IF" ♫
IF の歌詞を 17年前に日本語(筆者の場合、日本語以外には有り得ないけれど、笑)に訳したことがあるので、以下に曲、歌詞、その日本語訳詞を併せて掲載したい。
と書いたけれど、その前に「原子心母」アルバム・タイトル曲の組曲「原子心母」を載せ、その後に "IF" を、という順番にする。前者は長いから今ここで直ぐに聴かなくてもいいけれど(聴いてもいいけれど、笑)、上に書いたイキサツ、つまり経緯があるので、そうしておこうと思う。
Atom Heart Mother
(a) Father's Shout
(b) Breast Milky
(c) Mother Fore
(d) Funky Dung
(e) Mind Your Throats Please
(f) Remergence
*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた英語歌詞を削除しました。英語歌詞・原詞は公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。
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もしも僕が白鳥だったなら
僕はどこかへ行ってしまうだろう
もしも僕が列車だったなら
僕は遅れるだろう
そしてもしも僕が善い人だったなら
僕は今よりもっと君と話すだろう
もしも僕が眠ったなら
僕は夢を見ることが出来るだろう
もしも僕が何かに不安だったなら
僕はこの身を隠すだろう
もしも僕が気が狂ってしまったら
どうか僕の脳に君の回線を埋め込まないでほしい
もしも僕が月だったなら
僕はクールになるだろう
もしも僕がルールだったなら
僕は曲がってしまうだろう
もしも僕が善い人だったなら
僕は友達の間にある距離と空間を理解するだろう
もしも僕が一人だったなら
僕は泣くだろう
そしてもしも僕が君と一緒だったなら
僕は家に居て涙も乾くだろう
そしてもしも僕が気が狂ってしまっても
それでも君は僕をゲームの仲間に入れてくれるかい?
もしも僕が白鳥だったなら
僕はどこかへ行ってしまうだろう
もしも僕が列車だったなら
僕はまた遅れるだろう
そしてもしも僕が善い人だったなら
僕は今よりもっと君と話すだろう
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和訳した歌詞は、ネット上では以下のリンク先に掲載してきた。ただし、2001年夏に本を買って HTML 独学して 1週間ほどで立ち上げた、ホームページ作成用簡易ソフト不使用のウェブサイトで、以降一切、仕様を変えておらず、現在、とりわけスマホなどから閲覧しようとすると OS のヴァージョン次第では文字化けする(威張ることじゃないけど、まぁ威張ってはいないけれど、昨日もこれ書いたんだけど、笑)。
ただし、いま知ったんだけど、このウェブサイトが乗っかってるスペースであるところの「忍者ホームページ」、今日、2020年9月9日午前10時から明日の同時刻まで24時間、スペース管理人の忍者ツールズがメンテナンス中らしい(ってわけでその間は閲覧それ自体が不可能)。
以下は、訳した日の日記。短文で、かつ大したこと書いてないけど、まぁいいや。
2003年 8月10日(日) もしも
ピンク・フロイドの ATOM HEART MOTHER 「原子心母」の中の IF を訳しました。子供の頃LPで持っていたこのアルバム(買ったのは僕の兄貴だったと思うけど)、そのA面のアルバム・タイトル曲(何しろ壮大な組曲です)がやたらと有名だけど、実はB面も佳曲ぞろい。曲調からは意外だけど(一風変わった朝食の風景みたいなものも録音されている)、B面もA面とセットになってコンセプト・アルバムって感じかな。・・・くどいですが曲調は全然違います、AとBでは。もっともCD時代になるとAとかBとか関係なくなっちゃってるんだよなぁ。
ピンク・フロイドは THE DARK SIDE OF THE MOON 、WISH YOU WERE HERE 、ANIMALS と、どんどん饒舌になっていって、THE WALL につながっていくんだけど、その時代もいいけど、ATOM HEART MOTHER とか MEDDLE とかの方が感覚的感性的ではあったな。この時代のフロイド、いいです。ATOM HEART MOTHER は 1970年。あっしは小4ですね。ははは。
僕は正気ですが、「もしも」を訳しました。むかしっから、この詩、好きだった。
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ネット上ではここ(ただし、同上)。
ピンク・フロイド 1973年「狂気」, 月の裏側より ー "Brain Damage", "Eclipse"
「狂気」の原題は、上にも何度も書いたように "The Dark Side of the Moon", Moon 月, luna 月, lunatic 狂人などについては、今日のこの投稿の冒頭でさらっと触れておきました。
アルバム「狂気」の最後を飾るのは、LP の A面を「月」の表側とするなら、「月の裏側」, "The Dark Side of the Moon" である B面の最後を飾るのは(相当無理くりに、つまり無理にやり繰りして喋ってんだけど、笑)、
それは「原子心母」の "IF" と同じく、Roger Waters が作詞作曲した 2曲、"Brain Damage" と "Eclipse" で、直訳すれば "Brain Damage" は「脳障害」もしくは「脳損傷」、"Eclipse" の方は天文学でいうところの「食」、だから「日食」とか「月食」ということになるけれど、ここでは明らかに「日食」。
この両曲の邦題は、ちょっとおどろおどろしかった。「狂人は心に」と「狂気日食」。アルバムのタイトルを「狂気」にしてしまったんだから、しつこいと言えばしつこいけれど、まぁこのアルバムの中にある、しかも最後を飾る 2曲と思えば、ま、この邦題でもいいかという気にはなる。
Brain Damage ~ Eclipse ー From Pink Floyd 1973 album "The Dark Side of the Moon"
*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた英語歌詞を削除しました。歌詞に関心のある方は, 公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。
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因みに「狂気」, "The Dark Side of the Moon" の収録曲は、LP の A面が "Speak To Me", "Breathe", "On the Run", "Time", "Great Gig in the Sky" で、B面は "Money", "Us and Them", "Any Colour You Like", "Brain Damage", "Eclipse" だった。上の方で書いた通り、A面 と B面 は単にレコード盤の時代の産物に過ぎないものでもあるんだけれど、このアルバムの A面 と B面 って、ピンク・フロイドのメンバーたちは多少とも意識したりしたのかどうか。やっぱ収録可能時間の問題だけかな(笑)。
そういや、というのはわざとらしいんだけれど単なる枕詞、筆者は「狂気」のレヴューもどきも書いたことがある(音楽評論家さんじゃないし、拙者のそれは思い切り私的な書き方をしているので、レヴューもどきってことで)。そのうち、note への投稿ネタに使うかもしれない。昔々ホームページをやっていた頃、けっこう色んな分野の色んなことを書きまくっていたので、今後も時々 note に放り出そうと思っていて。
レヴューもどきは、以下のリンク先に掲載してきた。ただし、上にも書いた通り、2001年夏に本を買って HTML 独学して 1週間ほどで立ち上げた、ホームページ作成用簡易ソフト不使用のウェブサイトで、以降一切、仕様を変えておらず、現在、とりわけスマホなどから閲覧しようとすると OS のヴァージョン次第では文字化けする(威張ることじゃないけど、まぁ威張ってはいないけれど、これも上にも書いたんだけど、笑)。
ただし、これも上に書いた通りで(しつこいな)、このウェブサイトが乗っかってるスペースであるところの「忍者ホームページ」、今日、2020年9月9日午前10時から明日の同時刻まで24時間、スペース管理人の忍者ツールズがメンテナンス中らしい(ってわけでその間は閲覧それ自体が不可能)。
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