家作り?
スマホやパソコンで「家作り」を検索すると、ものすごい数の情報が出てきます。
その情報の多くが設備、家事導線、収納、インテリアなど、具体的なデザインや機能に焦点を当てたものではないでしょうか。
私(大工の妻)も昔からインテリアを考えたり、雑貨や照明を考えたりするのは大好き!タイルの色や形を見ているだけでワクワクしてしまいます。
それに家事導線も良いに越したことはない!!
小さな子どもがいる家庭の朝や夕方は一分一秒を争いますからね。共働きなら尚更。
収納や各スペースなども絶対に無駄にしたくない。効率良く、片付けやすく、だけど見映えも良くなくちゃ…あぁ女性って欲張り♡
(更に言うならば、延べ数千件ものお宅を訪問して介護を提供してきた訪問介護士としての視点まで盛り込んで50年後どころか自分が居なくなった後の自宅という観点まで投入してしまいたくなります。笑)
そんな私ですが、
・たまたま夫が伝統構法を大事にして家作りをしている大工ということ
・その夫が自邸を建てることになり(つまり私が住む家になる)図面作りをする前から、プロ目線での家作りの段取りを間近で見れたこと
・完成してからでは見えない「材料」や「構造」をじっくり観察できたこと
などの経験から、
【設備や家事導線も大事だし収納も大事。だけどそもそも自分が住む家の大元である土台や構造材(=骨組み)って、それより先に考える一番大事な部分じゃないのかな】という視点を持ち始めました。
社会情勢に左右される資本主義社会では、消費する家作りが一般的になってしまってきているという現状もありますし、何を大事なことと定義するかは人それぞれ。
その中で家作りやリフォームを考えている方へ「伝統構法」を知ってもらい選択肢のひとつになったら嬉しいし、手前味噌ながらも加藤建築の家作りは胸を張ってオススメできる!!ということで
今日から少しずつ、建築にはド素の大工妻が知り得た「伝統構法」について、お伝えして行きますよ!
さっそく、初回は私が最初に思った
「伝統構法ってなに?」「伝統構法ってことはその反対の最新構法とかあるの?」について書き進めて行きますね。
まず、伝統構法とは簡単に言うと昔から受け継がれてきた作り方。(ざっくりw)
木組みの柔軟性を活かした木造工法で、金物を使わずに木の特性を活かす仕口や継ぎ手で組み上げられています。
現存する日本最古の伝統構法の建物といえば、奈良にある法隆寺の五重塔。
なんと1,300年以上も昔に作られたといわれています。修復を施されていますが梁や柱などは当時のままだというから驚き!
五重塔の補修に携わってきた法隆寺の宮大工 西岡常一さんの有名な口伝の中に「木は生育の方位のままに使え」という言葉があります。
自然界に自生している木は曲がりなどの癖があり、扱いにくいそうですが、建築木材として計画的に育てられた木よりも生命力が強く強度があるそう。
(乾燥させる際も時間をかけて自然に乾燥させるか機械的に乾燥させるかで変わってきます)
こうした木の個性を見抜き、切り出して適材適所で、材木の個性や特性を活かすこと。それを活かすための様々な仕口や継ぎ手を組み合わせる技術。これらが合わさった時、木造建築は素晴らしい建物になるのですね。
(いつか仕口や継ぎ手の記事も書きたい)
このような伝統構法では柱の結合部がボルトなどの金物で固定されていないため、地震の際には建物全体がわずかに変形し揺れを吸収・受け流す働きを可能としています。 揺れのエネルギーを受け流す構造なので、揺れの際には壁にひびが入ったり瓦が崩落したりしますが、揺れのエネルギーが許容範囲を超えた場合も建物は大きく歪むものの全壊倒壊しにくい特徴があります。
ちなみに傷んだ部分は、その部分だけを修繕することが可能ですし、木組みの家はバラバラにして移築することも可能!最近耳にする機会が増えた「古民家」ですが、木組みだからこそ移築ができるのです。
もちろん素材は自然の木、余計な接着剤や化学物質を使っていない無垢材なので破棄しなければならない場合にも土に還ります。
自然にあるものを使いながら継ぎ足したり削ったりするって、とってもサスティナブルでエコではありませんか。
自然のサイクルに寄り添って過ごすことで、心地よい住まいになるだけでなく、我が子やその子どもたちの世代まで豊かな地球を繋いでいく選択になるなんて嬉しいですよね。
ちなみに伝統構法の反対側という表現は極端すぎますが、近年建てられている住宅は「在来工法」と呼ばれている構法が主流です。
伝統構法との違いは…もはやほとんど違いますが、一番大きな違いはプレカット(構造材を現場で使用しやすいサイズや形状にあらかじめ工場で加工しておいたもの)を使用している点ではないでしょうか。
プレカットの柱、梁、筋交いを付属金物や構造用合板などと一緒に組み立てていくので伝統構法のような職人の技術は不要です。
私は伝統構法推しなので、在来工法については何とも書きようがないのですが(爆)分かりやすく、地震が発生した場合で説明すると
◆伝統構法は免震構造といい、地震の揺れを各部で吸収して地震エネルギーが建物に伝わり難くした構造
◆在来工法は耐震構造といい、地震力に対して構造自体で激しい揺れに力で対抗しようとする構造
のような違いがあります。
どちらも、それぞれに良さがあると思うので選択は自由!だけど組み方もそうですが、材料選びの時点から全く異なっているということを私は知らなかったので、目から鱗でした!
五人の子どもを産み、育てていると「どうしてみんな私のお腹で育って出てきたのに、個性も特性も全然違うのだろうか」と不思議なのですが、ひとりひとりを観察して、それぞれに響く言葉をチョイスしたり、興味関心がありそうなものを手に取らせてみたり、どんな風に反応するかをまた更に観察しながら共に成長し合う日々過ごして来た子どもたちとの15年以上の時間が、
伝統構法の家作りをしている職人さんたちが木と向き合っている様子とリンクして、すごーく共感できたということもあり、伝統構法の考え方が好きだったりもします。
だって、言葉でコミュニケーションが図れる人間関係ですら義務教育のシステムに馴染めなかったりするのに、自由に自然界で育った木たちが、個性も特性も見極められないまま一律に加工されてしまうって、考えただけで苦しいし、私が木だったら勘弁してくれ!と思ってしまいそうですからね。笑
なんだかまとまらないので、今日はこの辺で。
少しでも伝統構法の良さが伝わっていただけたら嬉しいです。…伝わったのだろうか!?!?
次回はもうすこし、詳細な視点から伝統構法を解説してみたいと思います。
ではまた!