GW最終日の憂鬱②
気を取り直して2軒目。
カティサークという安ウイスキーがあるんですが。自分の好きな小説で、おっさんがカティサークを飲んでいたら隣の席の美人に話しかけられるシーンがあるんです。
そのシーンを思い出しながらカティサークを飲んでいたら、隣に綺麗な女性が座ってきたではないですか。これは...あの小説と同じだ!
カッコつけたシングルモルトではなく、気取らない安いカティサークを飲んでる姿に好感を持った美人がおっさんに話しかけるのだ。「カティサークがお好きなの?」と。そのあと二人は...
そんな胸の高鳴りを悟られないように、静かにグラスを傾ける。
女性「あの...」
きた!本当にきた!まさか本当に話しかけられるとは!さぁ聞くんだ。「カティサークがお好きなの?」と聞くんだ!
女性「コースターついてますよ」
おれ「そうなんです」
....なんてこった!グラスの底にコースターがついてやがる!そして間違った!「そうなんです」は違う!これは恥ずかしい!できることなら肛門にカティサークのボトルをブッ刺して直腸からアルコールを直で摂取して全てを忘れ去ってしまいたい!落ち着け!落ち着くんだ!まだ挽回できる!いったん水を飲もう!チェイサーのお水で頭を冷やして、コースターをちょっとした笑いに変えよう!逆に気さくな感じでこっちから話しかけてみるのも......っっっっ!!
...ついている。水のグラスにもコースターがついている。なんてこった。同じ過ちを二度も。人間は過ちを犯す生き物だし、過ちを繰り返す。それを取り繕うために嘘だってつくさ。その嘘と向き合いながらこうやって酒を飲む。何を言ってるんだおれは。
でも大丈夫。おれには36年生きてきた経験がある。こんなヘマくらい、一言でなかったことにできるのさ。
おれ「マスター」
マスター「はい」
おれ「お会計を」