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アイドルオタクになったきっかけ

今から5年以上前のことだ。

私がまだ障害者福祉施設で働いていた頃、利用者が「ダイジ見てる?」と聞いてきた。

ダイジ??

ダイジ、とは我が県で「大丈夫」の方言で
ほぼ毎日使われる言葉だ。
『大丈夫?』と言いたい時は「ダイジ?」と言い
より方言的に言うなら「ダイジけ?」と言う。
語尾に「~け」をつけるのが我が県民である。

 
「ダイジ面白いですよ!私も娘と見ています。」

 
隣にいた同僚が話に加わる。
二人でfurifuriダンスをし始めた。後に知ったが、EDで登場キャラクターがfurifuriダンスを踊るらしい。

 
話を更に聞くと、ダイジとは「雷様剣士ダイジ」のことで、我が県の特撮ローカルヒーローらしい。

地元テレビといったら
「うたの王様」というのど自慢のパクリというかオマージュ番組(県民か県に通っている学生や通勤する人対象の、一般人歌コンテスト)と
アニメ再放送と
お悔やみくらいしか知らなかった。

 
地元テレビでは、やたらとアニメを再放送したし、また毎日県内で亡くなった人の名前を公表する番組があったので
それらの人気が高かった。
「うたの王様」ものど自慢ほどではないが、人気は非常に高く、予選通過してテレビに出るのはかなりの倍率だった。

 
へぇ~
他にも地元テレビに面白い番組あるんだ。

 
私は最初、そんな反応だった。
大人になってから、私はほとんどテレビを見なくなった。
天気予報とニュース以外ほとんど見なくなった。
だから誰かにオススメされても、じゃあ見よう、とはならなかった。
その後何回利用者や同僚が話題に出していても、「へぇ~。」で終わったのだ。

 
 
ところがその後、姉と甥っ子からも「ダイジが面白い。」と聞いた。

なんだ?一体なんなんだ?そんなにダイジの何がよいのだ?

 
困惑する私に姉が「YouTubeでアップされているから見たら?1話15分くらいだし。」と言ってきた。
15分ならまぁ……と、私は見た。
そしたら第1話でアッサリと

私は大ハマリした。

今まで見てなかった、私はアホだー!!

 
 
まず、OPの歌が熱い。
映像も県内の有名な場所がロケーションになっていて、内輪ネタだが熱い。
歌もいい。魂が燃えるような力強さがある。

主人公のダイジは声がいい。
なまっていていい。
地元ご飯を食べてパワーチャージする演出がいい。
ダイジのキャラクターがいい。
かっこいいし、お茶目だし
これは惚れるしかない。

キャラクターやヒロインも
県の特産をモチーフにしているし
敵キャラも愛嬌があり
笑いの要所も多く
地元民もエキストラで出ていた。

 
まさに地域密着型ヒーローだ。
終始郷土愛に溢れた番組なのである。
時間も短めなのでサクッと見られていい。
EDは同僚や利用者が踊っていたfurifuriダンスが確かに流れていた。
簡単な振り付けで、みんなが真似しやすいダンスだ。

 
 
私は一気にYouTubeで全話見て
次の月曜日からはテレビの前にスタンバイした。
毎週月曜日19:45からやっていたのだ。

私が見るから、家族も一緒になって見た。
両親からも評判はよかった。
笑いが溢れた。
地元でもマニアックな場所がロケーションだったりもしたし
新たな発見もたくさんあった。
プライベートで撮影場所に遊びに行ったりもした。

毎週楽しみなテレビ番組があるなんて久々の感覚だった。

月曜日は19:45までには残業を終わらせて帰るようになった。
そして、火曜日に利用者や同僚とダイジの話をしたり、ポージングを真似するようになった。

 
 
雷様剣士ダイジは地元テレビで予想以上の大ヒットになった。
本来は半年の予定だったが、人気過ぎて、その後5年間も放送することになったくらいだ。

初代ヒロインは半年の予定だったからか、途中で降板し、その人は現在ハロプロでメジャーデビューを果たした。
そして、二代目ヒロインを地元アイドルが担当した。

それが後に今の私のオタクに繋がるとは、当時は全く思っていなかった。

 
 
雷様剣士ダイジが放映一周年を迎えるとのことで、一周年イベントが行われることになった。
そこではオリジナルのショーをやったり、主題歌生披露があったり、EDのfurifuriダンス撮影会があったり、オリジナルグッズ発売もあるらしく
私は張り切って出掛けた。

そしたらまぁ………

凄まじい人だかりだった。

 
そのイベント会場は普段数十人くらいしか集まらないし、広々とした野外空間なのだが、人が密になっていた。
なんでも数百人が集まったらしい。
コスプレをする人がいたり、母親が子どものためにオリジナルグッズを作って着せていたりと
会場の熱さは私の想像以上だった。

我が県の経済が回っていた。

いつも人がいないのに、我が県にこんなに人がいるなんて……
そう思うほど、人が集まり、みんなはダイジを愛していた。
ファミリー層だけでなく、幅広い年代にダイジは愛されていた。
生ダイジショーは会場参加型で、みんなで「ダイジー!」「頑張れダイジー!」と叫んだ。
テレビにはない、この会場一体感は見事で、初回イベントは大成功に終わり、大々的に地元紙や地元テレビで撮り上げられた。

 
その会場には、地元アイドルとおぼしき人がいた。

 
 
そういえば、二代目ヒロインの姉妹はリアル姉妹で、地元アイドルやっているんだっけな…

 
私はダイジのイベントの後に、携帯電話でアイドルの子達を調べた。
アメブロをやっていると言っていたからだ。
その地元アイドルは4人組で、Jelly  Beansといった。
リアル姉妹二組を合わせたアイドルらしく
ダイジのヒロイン時とはメイクや髪型や衣装が異なり、別人に見えた。

 
アメブロを見ていたら、Jelly  Beans(以下JB)自体が気になり、YouTubeを見た。
YouTubeにはライブの様子も映っていた。
非常に楽しそうなライブ映像がそこにはあった。

 
今までメジャーロックバンドライブには散々行っていたが
アイドルライブは未知数だった。
まして、地元アイドルの世界は更にディープだ。

 
ロックバンドと
V系バンドと
アイドルでは

ライブの勝手が異なるくらいは知っていた。
ジャニーズファンの友達ならいたが、周りに女性アイドルファンはいなかった。

 
ライブは気になるが、敷居が高い。

 
そう思っていた私は、ダイジイベントの後も、引き続きダイジを見たり、JBのアメブロだけを見ていた。
私はそれだけで十分だった。
はずだった。

 
JB解散

 
とアメブロで知ったのは、ダイジ一周年イベントから半年も経たない内だった。
私は言葉を失った。

 
いやいや、ちょっと待って?
まだハマッたばかりだったのに……

 
仕事の都合もあり、解散前日ライブに行きたかったが行けず、私はJBの解散ライブがJBの最初で最後のライブになった。
ライブに行くしかない、と思った。

 
JBはみんなに愛されていたアイドルで、解散ライブの日は会場がパンパンになるほど人が集まり
会場には写真や花が飾られた。
今までの軌跡をまとめた動画を流したり、涙ながらにメンバーがメッセージを発したりと
解散ライブが初ライブのくせに、私はポロポロ涙を流した。

ライブは長く、濃く、非常に素晴らしかった。
たくさんの曲を惜しみなく歌い、衣装チェンジもたくさんあった。

JB初ライブだし、スタンディングライブも私は初めてだったし
色々不安だったり、怖かったが
実際はあまりにも楽しすぎた。
ファンの全力応援に、私もリミッターがすぐに外れた。
ライブ自体は初めてだが、YouTubeで私はライブを復習していたから、コール等を多少は頭に入れていた。

 
ライブ後、私の胸はいっぱいだった。

  
 
 
ライブ会場で買ったり、もらったCD三枚を、私は魂が抜けた状態でしばらく聞いていた。

完全にJBロスだった。
もっとライブに行けばよかったと本気で悔いた。

 
 
JB解散ライブから二ヶ月後くらいに、私はたまたまネットでLovin&Sを知った。
解散ライブでは触れていなかったが、JB解散して早々に、Lovin&Sというアイドルグループが活動していた。
Lovin&Sは、ダイジの二代目ヒロインのリアル姉妹である。

 
もともと、JBはダイジがきっかけでファンになった。
私がLovin&Sに食いつかないはずがなかった。
やがて、彼女らが二代目ヒロインの役割を終えて、三代目ヒロインを他の子がやっても、だ。

 
 
だが、地元ライブ中心のJBと異なり
Lovin&Sは東京ライブが主体だった。
平日や休日夜ライブはネックになり
私は再びアメブロやYouTubeを見るだけの日々になった。

行くに行けない。

そんな悶々としていた数ヶ月後、Lovin&S一周年イベントを東京でやることが発表された。

この時間帯ならば…!

私はようやくライブを申し込んだ。  

  
 
初めて行くライブハウスだから場所が自信ないし、せっかく東京に行くのだし…と
私は早めにライブハウス前に着いた。
私が着くより前に、メンバーやファンの人達数名が集まってわいわいしていた。

みゆあゆちゃんだ!

と思いつつ、私はチラ見しかできない。
ファン同士は私より年上だし、みんな顔見知りで、何やらやっていたし
私は気まずくてスーッとそこから離れた。

愛結ちゃんが弾ける笑顔で走っていたことは、今でも脳裏に焼きついている。

  
 
近くを観光してブラブラした後、再びライブ時間に間に合うようにライブハウスに行くと、人がものすごい列だった。
JB解散ライブと同じように、花や風船や写真等で会場は飾りつけられており、ライブハウスは人がいっぱいで、盛り上がりまくった。
地元アイドルの実力を思い知らされた。
歌は上手いし、なんといってもダンスがキレキレだ。

チェキの存在をまだ知らなかった私は、JB解散ライブ時もこの時も、ライブ終了後にサッサと会場を抜け出した。
ライブハウス入口には、ライブ前にメンバーらと話していた、年上の方々がいた。
私は素通りしようとしたが、サングラスの方に話しかけられた。

サングラスの方「もしかして…●●さん?」

私「いえ、違います…。」

 
話しかけられると思っていなかった私はそれだけ答えると、そそくさと逃げた。
アイドル現場はほとんど男性だし、Lovin&SのライブTシャツは黒い。
黒い服の年上の色んな方々は、私は近寄りがたい存在に感じたのだ。

 
そのサングラスの方との再会は、それから数ヶ月後になる。

 
 
地元アイドルは週2~3日、ライブ出演しているが
Lovin&Sは相変わらず東京ライブ主体でなかなか会えないまま、季節は秋に変わる。

私の職場では某行事で、毎年演歌歌手や手品師やお笑いの方等を呼んでおり
会議で今年は誰を呼ぶかの話になった。
毎年違うゲストを呼ぶため、段々ネタ切れになってきた。

「……Lovin&Sは、どうでしょうか?」

私は会議で発言し、会議中にYouTubeで動画を見せた。
Lovin&Sは東京ライブだけでなく、地域のお祭りや企業イベントにも出演していた。

 
アイドルを呼ぶことは前代未聞であり、賛否両論…というより、年配のトップからはあまりいい顔をされなかった。
YouTubeを見た行事実行委員会からは好評であり、発案者の私がLovin&S担当になるように命じられた。
マネージャーの方に打診したところ、日時等の条件があい、了承してもらえた。
ガッツポーズである。

 
 
さて、Lovin&S出演が決まってから私はバタバタした。

なんせ、会場ステージ下見は事前にできない。
本来ならば顔を合わせて打ち合わせをしたいところだが、お互いに都合が合わず
FAXや電話での打ち合わせが続いた。

 
大行事でゲスト担当をするのが初めての私は
行事の流れの資料やステージ資料等を封筒に入れ、当日が上手くいくように準備した。

 
 
ちょうど、その行事の前に、地元でLovin&Sのイベントがあり、私はそこに参加した。
やはり、電話やFAXだけでなく、資料を渡して打ち合わせをしたい。

プライベートでイベントに参加したが、ビジネス目的でもあった。

 
そのイベントは参加人数が20人もいなくて、私以外の方は顔見知りっぽく、私は来て早々にアウェー感を味わった。
今までのライブなら参加人数が三桁だからまだいいが、20人もいないとなると、ぼっち感が半端ない。

イベントが始まるまでの間がきまずかった。

 
そんな私に優しく声をかけてくれたのは、いつぞやのサングラスの方であった。
ありがたかった。

このサングラスの方はLovin&SファンのTO……ファンの中心的、リーダー的存在であり、ファンに一目置かれていた。
Lovin&S……というより、もともとJBからのTOであり、我が県のアイドルやファンの間で有名な偉大な方…………どころか
対バンライブの関係で、関東や東北のアイドルやファンからさえも認知度が高いことを私が知るのは
この半年後くらいである。

 
我が施設でのLovin&Sライブは大成功であり
歴代のイベントの中でも上位クラスの盛り上がりだったと周りから絶賛された。
Lovin&Sを提案し、企画した私の株は上がり
施設関係者の間でLovin&Sの知名度は上がった。

利用者でダイジファンは何人かいたので
二代目ヒロインに生で会えたことに感動した方もいた。

 
 
 
こうしてすっかりLovin&Sにハマった私は、正月休みの年末に、東京ライブに行った。
たまたま東京に行く予定があったのだ。

expieceというアイドルとの2マンライブであり
expieceというアイドルがいることを
私はこの時に知った。

 
ここの会場には、一人の女性がいた。
私はまだまだ勝手が分からなかったので、彼女に話しかけた。
年も近そうだし、年上の男性に話しかけるよりは女性の方が話しかけやすい。

多分、東京の方だろう。

お互いに初対面で思っていたが、なんせ初対面なので、多少話して各々ライブを楽しんだ。
前回のライブでチェキシステムをサングラスの方に教わり、私は今回もチェキを撮ることにした。

地元アイドルは、チェキという小さな写真がライブ物販の要商品である。
アイドル単体、もしくはファンとツーショットで撮るサービスであり
撮影時にアイドルと話せたり、握手したり、名前やメッセージをチェキに書いてもらえた。
アイドルによっては、チェキ一枚につき、ファンのカメラで一枚アイドルを好きなポーズで写真を撮ってもよい、というオマケがあった。
写真券は写真券で販売するアイドルもいる。

 
 
私は年が明けた後、地元でLovin&Sが無料ライブをやるというので行ってきた。
ワンマンライブ(解散、周年)、地元単独イベント、対バンライブ、地域イベント………と
私は着々と地元アイドルライブの経験値を増やしていった。

 
地元アイドルのファンは狭い世界で、大抵顔見知りであった。
いくつかのグループにも分かれていた。
社会人サークルに近いノリかもしれない。

地元単独イベントが一番ハードルが高く
一般人も無料で見られる地域イベントが一番参加ハードルが低いと
私は学んでいった。

ファンの方の盛り上がり方や選曲も
ライブハウスか地域のイベントかによって毛色が異なったのだ。

 
 
その地域のイベント後、自宅には親戚が来る予定だったので
私はライブだけ見て帰ることにした。
その時に後ろから私に声をかけたのが、東京で会った彼女だった。

彼女「東京の人じゃなかったんですか?」

 
私「あの日は東京に予定あって行っただけで、地元はこっちですよ~。」

 
話をすると、彼女と私の家は割と近いことが判明した。
彼女は別のファンの方といたし、私も自宅に帰らねばならなかったので、そんなには話さなかったが
その日に初めてお互いに自己紹介をした。

 
 
その後、彼女とはイベントでちょこちょこ会うようになった。
後に知ったが、彼女はサングラスの方と同じようにJB時代からのファンであり、女性ファンの中心的人物であった。

私はアイドル現場は詳しくないし、知らないことだらけだったし
貴重な女性ファン仲間だし、更に年も近い。

私は彼女と話す回数が増え
段々と距離を縮めていき、やがて個人的に連絡先も交換した。


 
多分、いきなりアイドル現場に女性一人であらわれた私はかなりの異質な存在だったが
サングラスの方や彼女が話しかけてくれたことで
仲間を紹介してもらえ、徐々に現場に馴染んできた。
気づけば私はライブハウス最前列で全力応援する有名な女ヲタに成長していた。

 
 
私はメジャーロックバンドは好きだし、ライブは好きだったが
彼等はそんなにライブは行わない。
仕事の都合もあるし、申し込んでもチケットはとれなかったりもするし
好きなアーティストであっても、各アーティストにつき、年に一回くらいしか参戦できない。
チケット代は7500~9000円。
大抵ツアーで地元には来ないから、参戦するなら東京が中心であり、電車賃も3000円前後かかる。

 
 
だが、地元アイドルは毎週、週2~3日はライブがある。

休日や祝日、GWやお盆や正月もほぼ毎日毎日ライブがある。
チケット代は無料~3500円くらいだし、ライブハウスで目の前でパフォーマンスが見られた。
地元ライブは車で行けばそんなにお金はかからないし、家からも近い。
ファン仲間が運転してくれることもよくあった。
チケットがとれないことはまずないし、当日にフラッと行ってもいいし、予約キャンセルをしても特に問題はなかったことがよかった。

 
 
ちょうど婚約破棄をして、次の恋が上手くいかない時期だったこともあり
私はLovin&Sや地元アイドルにのめり込んだ。
東京ライブを中心としていたが
あることをきっかけに
Lovin&Sは地元ライブ中心に切り替えたのも大きかった。

 
メジャーアーティストのライブが半年先とかに予定が入り
職場のシフトが一ヶ月前に確定し
その間に私は友達との遊びやデート、家族の予定を入れ
空いた時間に地元アイドルの予定をガンガン入れた。

地元アイドルのライブスケジュールは
大抵一ヶ月前に発表された。

 
 
地元アイドルはワンマンライブはあまりなく
ほとんどが対バンライブだった。

だから、Lovin&Sにハマればハマるほど
他のアイドルや楽曲を知り
ファン同士仲良くなり
ライブの打ち上げをしたり
ライブ関係なく遊ぶようになった。

 
大人になったら、学生時代の友達は段々疎遠になり
社会人になったら、新しい友達はできにくい。

そう言われているけれど
アイドルファンになったお陰で
私には新しい友達ができた。
恋は上手くいかないくせに
男性の知り合いはどんどん増えた。

 
ライブはいい。
ライブは裏切らない。
ライブは幸せ。
仲間といると楽しい。

 
そう、私は最初思っていた。

 
 
 

だが、会社と同じで、アイドルはあくまで友達じゃない。
営利目的だ。
ファン同士も友達ではあるかもしれないけど
友達というよりは仲間なのだ。

 
毎週欠かさずにライブに来ていた仲間が
気づいたら来なくなった。
所謂、他界である。

一回心が離れると
徐々にではなく、一気に足が遠のく。

 
それが地元アイドル現場の世界だった。

 
ファンが辞め
また新たなファンが入り
アイドルも何らかの理由で脱退や卒業や解散をし
また新たなアイドルが生まれた。

 
地元アイドル現場は狭い人間関係で
何年間もファンの方もいるけれど
ファンは入れかわり立ち替わりが激しく
狭い人間関係故の悩みや衝突も少なくなかった。

 
 
狭く濃厚な世界だから、関係良好なら最高の世界。
それが地元アイドル現場だ。

だが、それ故に
一度崩れたら、修復は厳しい。

 
ライブはあくまでプライベートの時間だ。
楽しく過ごせることが大前提だ。
ファンはお金や時間を費やしている。
予定を調整したり、お金をやりくりして
【楽しさや癒し】を求めているのだ。

だから
それを感じられなくなったら
他界するしかない。

 
 
 
 
 
みんなに愛された雷様剣士ダイジは、大人の事情により、無理矢理な展開を増やしても継続された。
キャラクターが変わったり、声が変わったり、設定が変わったりしても続投した。

私は毎週欠かさず見ていたし
毎年周年イベントも参加していたが
露骨な大人の事情による改悪を垣間見た時
ダイジを素直に見られなくなった。

 
私は途中から見るのをやめた。

 
 
週刊少年ジャンプではないが
人気があるからといって、無理矢理継続させるのは作品の質を下げ、ファンは心離れる。
 
 
ダイジもそのような流れになった挙げ句
色々ブラックな感じだったらしく
後に制作に関わった方々が賃金や労働関係で訴える結果になった。

 
老若男女に愛されていたダイジ。
県民に夢や希望を与えたダイジ。

その裏側は、ブラックだった。
きっと現場は人気の声に応えようとかなり無理をしていた。

私の元職場と一緒だ。
この世の中にホワイト企業はあるのかな。

そう、ため息を吐きたくなった。

 
 
 
地元アイドル現場も同じで
最初は対バンライブを中心に行っていたが
2018~2019年頃から段々と対バンライブの回数が減り
各アイドルでイベントをする回数が増えた。

そしてそれによるデメリットや揉めごとも増えた。

 
仲がよかった仲間が次々に来なくなり
それに加えて今年
私は退職になり
世界中がコロナになった。

 
地元アイドルライブは自粛を経て
徐々に今、制限の中でライブを少しずつ再開しているが
ファンもまた、制限がかかっている。

 
私は転職がネックになり
他の方々は感染したら職場に迷惑がかかると
ライブに行くことを控えざるを得なかった。
特に他県やライブハウスは
行きたくても行けなくなってしまった。
もしくは、行っても心から楽しめなくなった。

 
 
アイドル現場に通うようになり、この約5年間で
様々な出会いや別れがあった。
楽しさや喜びや感動と共に
寂しさや悔しさや切なさもあった。

それでも私は他界せず 
まだアイドル現場に通っている。

以前ほどは行っていないが
細々とライブに行き
仲間と再会しては盛り上がる。

 
 
彼女とはこの5年間に仲を深め
【ちぃかま】というファンユニットを作った。
仲の良いファングループはユニットというか、名称を名乗ったり、周りから名づけられるのだ。
私達の名前も、他のファンからつけられた。

だから、ユニットといっても
私達は歌ったり、踊ったりしたりはしない。
アイドルを全力応援するだけだ。

 
アイドル現場がきっかけで知り合ったが
【ちぃかま】の彼女に私は強く惹かれ
ライブ以外でも会ったり
様々なガールズトークをする仲になった。
とてもとても優しく、穏やかな彼女が私は大好きだ。
かけがえのない友達である。

 
ライブは一人でも行くし
一人でも楽しめるし
他の人とも楽しめるけど
彼女が隣にいると、私はホッとした。

 
私は彼女を心から信頼し、尊敬している。
そう思える人に出会えてよかった。

 
 
 
 
 
昨夜、C-Styleという、千葉ご当地アイドルがテレビ出演した。
フジテレビである。
アウト×デラックス!!という、マツコ・デラックスさんが出ているテレビである。

 
私はC-Styleは好きなアイドルグループの一つであり
録画をしながらテレビを見た。
すると、サングラスの方が大画面に映った。

私は大いにウケて、Twitterに載せた。
なんせ、サングラスの方はこの現場では超有名人だ。
仲間内で盛り上がり、みんなで大爆笑した。

 
私はSNSで顔は晒さない主義だが、サングラスさんは「オタクは晒されてなんぼ」主義だ。
フジテレビさん、よくやった。
たくさんファンがいる中で、よくその方をいいアングルで映してくれた。

 
様々なファンと出会えば出会うほど
サングラスさんはオタクの鏡であり、人として素晴らしい人だと気づく。
偉大な人なのにいつも謙虚ででしゃばらず
メンバーを第一に考え
他のファンを本当に大切にする。

色々なファンと仲が良いし
みんなファンはサングラスさんを尊敬しているし
未だに私にも優しく声をかけてくれて
話を聞いたり、相談に乗ってくれる。

 
 
あの日、サングラスさんが話しかけてくれなかったら
あの時、彼女と出会えなかったら
私は今もアイドル現場に通ってはいないだろう。

 
人の縁は本当にありがたい。



 
 




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