ルビンの壺が割れた/宿野かほる ※ネタバレ含む
「ルビンの壺が割れた」を読んだ。
全170ページと短く
サクサクと読みやすい文体や形式の小説であり
一時間~二時間あれば読み終わる。
衝撃の問題作らしいが
私はnote繋がりの方の感想文で本作を初めて知り
読んでみようと思った。
本の後ろに書かれた内容は以下の通りである。
「突然のメッセージで驚かれたことと思います。失礼をお許しください」ー送信した相手は、かつての恋人。フェイスブックで偶然発見した女性は、大学の演劇部で出会い、二十八年前、結婚を約束した人だった。やがて二人の間でぎこちないやりとりがはじまるが、それは徐々に変容を見せ始め…。先の読めない展開、待ち受ける驚きのラスト。前代未聞の読書体験で話題を呼んだ、衝撃の問題作!
本作は、水谷という男性がかつての恋人未帆子を偶然Facebookで見つけ
メッセージを送るところから始まる。
本名名義でやるFacebookだからこそできる、久々の再会やメッセージ交換をテーマにしているのは現代風でいい。
この小説には、水谷と未帆子のメッセージのやりとりしか載っていない。
私はこういった、手紙のみや日記のみで話が進む形式の小説も好きなので
楽しみながら読めた。
二人は思い出話や今の心境を語り合うわけだが
メッセージごとに新たに明かされる真実や思いがあり
読者は読むごとに、水谷や未帆子の印象が変わっていったり、この二人の関係性が気になるところだろう。
仕事終わりに読み出したら気になってページをめくる手が止まらず
一気読みをしてしまった。
この作品は賛否両論あるらしく
私も読んでみて、好みが分かれる作風やオチだと思った。
私は未帆子と同じように、最初のメッセージで水谷を警戒していた。
Facebookは、大抵名前を検索して見つける訳だが
水谷が未帆子を見つけたやり方がなかなかに気持ち悪い。
二人のやりとりから、水谷が魅力的でモテモテな男性であることが何度も繰り返し語られるが
未帆子の見つけ方以外にも色々気持ち悪い言動が続き
メッセージのやりとりだけ見ると
果たしてこの人は昔、そんなにモテたのだろうかと不思議に思う。
水谷が未帆子にメッセージを送った本当の意味合いについては
未帆子の最後のメッセージで明かされる訳だが
個人的には
例の件の伏線や描写がなかったことが少々残念である。
お互いに確信には触れないようにしていたから
あえてメッセージ内容には書かなかった可能性もある。
ただ
水谷の現在の暮らしやメッセージを送った意味合いは伏線があって推測できても
未帆子が失踪した理由については
最後のメッセージを読まないと分かりようがない。
ミステリーを期待して読むと
最後にいきなり未帆子のメッセージで明かされ、「あ、そうだったのね。」感が否めない。
タイトル通り、私達は自分の全てを相手に見せないし
解釈は人それぞれである。
人の過去や隠れた面を知ることで理解を深めることもあるが
逆もまたある。
ここからは、私の話になる。
私もFacebookをやっている。
Facebookは基本的に本名で行い、自身の顔をアイコンにし、経歴に出身校や現在の仕事等を書く。
Facebookのサービスが始まったのは私が社会人になってからだった為
Facebookに登録し
私はかつての同級生達とネット上で繋がり
メッセージのやりとりをきっかけに
10年ぶりや17年ぶりに再会した同級生さえいた。
携帯電話が普及したのは私が高校生の頃であり
現在の連絡先を知らない同級生もいた。
だから、再び繋がり、連絡先を交換し、再会できたり、近況を知ることができたFacebookの存在は
非常にありがたかった。
だが、私も未帆子ほどではないが、ゾクッとした体験がある。
私の小中学校の同級生Aくんは、小柄で内向的だった。
目立たない存在だったといってもいい。
私はAくんと何年もクラスが一緒だったし
普通に仲の良い同級生だった。
Aくんは高校デビューし
髪を染め、ピアスをあけ、ヤンチャになっていった。
私がFacebookで再会した時、四人の子どもがいるらしかった。
だからメッセージをもらった時
単なる同級生としてだとしか思っていなかったし
LINE交換も私はそういうものだと思っていた。
LINE交換をして
Aくんは、私が当時優しかっただとか、キレイになっただとか、今自分が満たされていないだとかを語りだし
私は話を聞いていた。
すると、いきなりこんなLINEが送られてきた。
「それで、いつならホテル行ける?」
私はLINEとFacebookを速攻でブロックした。
ショックだった。
まさかセフレ目的だと思わなかったのだ。
私は思い出が汚されたと思った。
知らないままでいたかった。
私はAくんとのやりとりを仲の良い友達に伝えた。
みんなは私と同じように非常にビックリしていた。
本当に、当時はそういう人ではなかったのだ。
人は変わるのか、当時からそういう一面があったのかは分からない。
次に、Bくんの話だ。
Bくんは中学時代の同級生で、温厚で優しい性格で頭もよかった。
あだ名は「兄さん」
男女から慕われていた。
高校は別々だったが
成人式で再会し、話した。
だが、それだけだ。
私はBくんと個人的に会ったりすることなく
その後も過ごしていた。
私が24歳の時だ。
私は当時HPを作っていて
そこにパソコン用サブのメアドを載せていた。
HPを見てくれた方の感想が時折届く中
一通不気味なものがあった。
「追伸。中学時代、青いジャージが似合ってましたよ。」
え……気持ち悪い。
……誰だ?
そのメアドには見覚えもなく、名前を名乗らない方だった。
HPはハンドルネームでやっていたし、中学時代のことを載せたりもしていなかった。
だが、確かに中学時代は青いジャージだった。
明らかにリアルの私を知っている誰かだった。
周りの人に聞いたら
仲の良い男友達が、Bくんに私のHPを教えたことが判明した。
私はメッセージにて「Bくんですか?」と尋ねたが
それには答えずに、私を賞賛する内容が綴られていた。
私はそれ以降やりとりをやめた。
私はAくんとBくんの一面しか知らなかった。
そして、男性のことも
一面しか知らなかったといえる。
私はAくんとBくんを好意的に思っていただけに
中学校を卒業してから久々にメールでやり取りをして
その内容に驚いたのだ。
今はFacebook以外にも様々なSNSがあり
昔の知り合いや見知らぬ方と
ネット上で繋がりやすい。
だけど
それはいつだって、良し悪しがある。