それでもアサイーに惹かれる
今から5年ほど前だろうか。
日本にアサイーボウル上陸
と、大々的にネットニュースに載っていて、私はその存在を初めて知った。
どうやら、アサイーという果物があるらしく、シャーベット状にして、それの上にバナナやイチゴ等を飾り付け、グラノーラやハチミツと共に食べるらしい。
それをアサイーボウルと呼ぶらしい。
ハワイでは定番の朝ごはんらしい。
まーた日本は海外の真似が好きだからな~
と最初は思った。
ファッションでも食事でも文化でも
日本はアメリカや韓国、ヨーロッパの影響を受けやすいイメージがあった。
染まりやすい性質というか
熱しやすく冷めやすいというか
私から見たらそんなイメージだ。
外国を擬人化した時
日本は決してリーダー格ではない。
0から1を生み出すような個性やオリジナリティは弱いが
他国からの文化を日本流にアレンジするのは優れていた。
それが日本なのだから仕方ない。
ハワイは日本人がよく海外旅行で行く場所だし
旅行が趣味の人はすでにアサイーボウルを知っていたのかもしれない。
アサイーは鮮やかな紫色で
一県ちょっと毒々しくもある色とも言えるが
フルーツやグラノーラでトッピングしてた見た目はとてもキュートである。
今でこそ、グラノーラ人気は凄まじいが
まだこの頃はシリアル文化や人気が根強かった。
グラノーラは新参者だった。
パフェというとシリアルだが
アサイーボウルといったらグラノーラ。
そんな常識が生み出されようとしていた。
私は果物が好きなため、アサイーボウルの見た目をニュースで知った時に恋に落ちた。
これは食べたい
と思った。
話によると、鉄分豊富らしいのもよい。
私は万年貧血症だから
鉄分が美味しく摂れるのはありがたかった。
さて、アサイーボウルを食べたいと思っても
なかなかチャンスは巡ってこない。
アサイーボウルが上陸したのは東京である。
地方というのは東京に遅れて流行を取り入れるのだ。
わざわざ東京にアサイーボウル目当てで食べに行くのもアレだし
東京に行く時は別の用事があったりで近くにアサイーボウルのお店はなく
食べたいと思いつつも、しばらく食べられない期間が続いた。
私のアサイーボウル欲は強まるばかりだった。
そんな時、友達にランチに誘われたら、その店でたまたまアサイードリンクを扱っていた。
地元のカフェもやるじゃん
と上から目線で思った。
私にとってもはやメインはランチではなく、アサイードリンクである。
ランチを食べてから運ばれてきたアサイードリンクは
ドリンクにしては大きく
ドーンとした容器に入れられていた。
容器は透明で
輪切りにされたバナナやシリアルが側面から美しく見えたり
ドリンクのてっぺんもゴテゴテと飾り付けられていた。
ドリンクというより、アサイーボウルの簡易版なんじゃあ……
と思ったが、憧れのアサイーだし、私は思いきりすすった。
うむ、サッパリとしていて飲みやすい。
果物やシリアルがいいアクセントだ。
これで鉄分豊富なのはありがたいなと飲みまくった。
感動してはしゃいだり、写真を撮る私を
友達は涼しい目で見ていた。
彼女は喫茶店巡りと海外旅行が趣味で
もうとっくにアサイーボウルデビューを果たしていた。
余談だが、私が人生初のガレットを食べた時も彼女に誘われたお店だった。
初ガレットははしゃいだが、もちろん彼女は既にガレットデビューをとっくに済ませていた。
アサイードリンクはなかなかの量だったが
なんとか完食し
ガールズトークで散々盛り上がった後
別の店でクリミア(アイス)や日光天然氷かき氷を食べて
またガールズトークをした。
よくしゃべり、よく食べる。
それが女友達との休日だった。
さて、アサイーボウル欲が強い私は、半端にモヤモヤした。
アサイーデビューはしたが、あくまでアサイードリンクであり、アサイーボウルではない。
似て非なるものだ。
きちんとアサイーボウルデビューを果たしたいという思いが
更に強くなってしまった。
そんな中、私は浜崎あゆみのライブのため、東京に行く予定があった。
ライブ会場最寄り駅は原宿駅であり
原宿駅そばなら、アサイーボウルのお店があると思った。
これだ!と思った。
ライブ前にアサイーボウルを食べればいい。
Google検索すると
駅そばにはたくさんのカフェが引っ掛かった。
さすが東京様だし
さすが原宿様である。
私はライブ会場から近く、見た目も美味しそうなとあるカフェに決めた。
ライブ日当日、金曜日。
私は午前中のみ仕事をして早退し
原宿駅に降り立った。
普段は原宿駅からライブ会場まで真っ直ぐ向かうが
寄り道は初めてである。
お洒落で個性的な人がうようよする原宿で
私は携帯を片手にお店を探した。
都会の街はなかなかに入り組んでいて
なかなかに分かりにくい。
少し迷ってから、ようやく目当ての店に着いた。
美味しそうなケーキもたくさんあったが
グッと堪えて
私はアサイーボウルを頼んだ。
ケーキならば地元でもたくさん売っていると
言い聞かせた。
少し待ってから来たアサイーボウルは
イチゴやバナナ、シリアルで表面を覆われ
とてもかわいらしい見た目だったが
ドドーン!としていた。
デ、デカイ………。
ビックリした。
噂でアサイーボウルは大きいと聞いていたが
本当に大きい。
丼サイズじゃないか?
さすがハワイだ。
スプーンで果物やシリアル、アサイーを同時にすくい、口元に運ぶ。
お、美味しい!
地元店のアサイードリンクより美味しかった。
私はムシャムシャと食べた。食べまくった。
そして口の中が甘ったるくなったので、水もグビグビ飲んだ。
夢を叶えた私は達成感があった。
………この時はまだ、達成感があったのだ。
悲劇はこれからである。
私はトイレが止まらなくなった。
お腹を壊した訳ではなく、排尿の意味でトイレに行きたくてたまらなくなった。
利尿作用でもあったのか
あまりにも一気に水分摂取したからかは分からない。
ライブまでの間
グッズを買ったり、待機をしたりと
長蛇の列に並ばなきゃいけない時に
私はいちいちトイレに行った。
またトイレが個数が少なく
女子トイレは長蛇の列なのが悩ましかった。
目当てのグッズが売り切れていたのは残念だったし
初めての浜崎あゆみライブでテンションが上がってもいたのに
そんなことより何より、私の頭は便器でいっぱいだった。
この調子では、ライブ中もトイレに行きまくるのではないか………
と心底心配だった。
ライブTシャツに着替え、会場入りしても
私の頭の中はライブスタンバイとは言えず
トイレばかり気にしていた。
だが、幸いなことにライブはスタートが20分くらい遅れ
その間に私の体内から利尿作用の何かはいなくなったらしく
ライブ開始直前に、私の膀胱は落ち着いた。
ちょうど7月だったので
水分補給したいが、思うようにできないような状態で
とても心配だったが
初浜崎あゆみライブを無事楽しめてよかった。
余談だが
金曜日→浜崎あゆみライブ(東京)。帰り深夜。
土曜日→サンリオピューロランド(東京)。朝は早く、帰りは遅かった。
日曜日→女子会(地元)
と、この時は非常にハードな日程だった。
まさか日程のハードさより、憧れのアサイーボウルでハードモードになるとは
思いもしなかった。
無事、サンリオピューロランドも女子会も楽しめたのでよかった。
その後、大宮駅に行った時もアサイーボウルを見つけ
私はそこでもアサイーボウルを食べた。
原宿のアサイーボウルより小ぶりだったのがありがたい。
見た目もかわいく、フルーツたっぷりで美味しかった。
トイレに行きたくてたまらないということは今回はなかったのでホッとした。
だが、私は少し物足りなさを感じた。
原宿のアサイーボウルの方が美味しかったのである。
あんなにトイレに悩まされたのに
原宿のアサイーボウルは私の中で伝説のような存在になった。
それから時は流れ、2019年になった。
私は仕事で週に1~2回、車を走らせて他施設に利用者を送迎していたのだが
その道の途中で気になる店を見かけた。
アサイー
とローマ字で看板に書いてある。
どうやら、アサイーの専門店らしい。
毎週そこを通るのに、仕事中だから寄れない。
家からは若干遠い。
仕事帰りに寄るのも若干遠い。
しかも交通量が激しいし、駐車場があまりない。
運転が苦手な私は、交通量が激しい道はあまり走りたくなかったし
駐車場があまりないのは駐車テクを求められるから
なるべく避けたかったのだ。
気になりつつ行けないまま、私は今年、退職となった。
そんな中、偶然割引チケットを手に入れた。
ハローワークにほど近い場所だったので、ハローワーク帰りに寄ることにした。
今年の春のことである。
臨時休業
の紙を見た時に、ガーンとなった。
意を決して来たら、まさかの臨時休業とは。
気を取り直して後日、私はまたもハローワークのついでにそこに寄ってみた。
そこにはフレンドリーなお兄さんがいて、接客が大変素晴らしかった。
アサイー専門店らしく、アサイーボウルだけでなく、アサイードリンクやアイスや色々あり
アサイーボウルはやはりなかなかのサイズだったので
アサイードリンクにした。
うむ、やはり美味しい。
ドリンクもやはり、なかなかボリューム満点だったが
この店はドリンクもボウルもサイズが選べるのが非常に良い点だ。
前々から憧れの場所にようやく行けてよかった。
それに、ステイホーム中で人と関わらなさすぎて寂しかった時期だったので
気の優しいお兄さんと話ができて
純粋に楽しかった。
気を良くした私は
それから一ヶ月後くらいにまた来店した。
やはりハローワークの帰りである。
ハローワークはメンタルがやられるので
ハローワークの日はスイーツを食べたり、本屋に行かずにはいられなかった。
その日は、店員さんがお姉さんだった。
前回とは違うトッピングのアサイードリンクを注文した時に
そのお姉さんが
「学生さんですか?」
と声をかけてきた。
私は有頂天である。
もう30代半ばなのだから。
やはりこのアサイー専門店は接客が良い。
アサイーも美味しいし、接客が良いとなお嬉しくなる。
そう浮かれた数日後、私は知人のお子さんにオバサンと一時間以上にわたって連呼されるという運命が待ち構えている。
学生さんに見えるオバサンという
喜んでいいんだか悪いんだか分からない今に
私は打ちひしがれる。
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