初物大好き日本人
四季のある日本では、折々の旬の食べ物があります。
そして、その旬の最初に供給される初物を
「初物を食えば75日長生きする」
といって競って食べたのが、見栄と粋が身上の江戸っ子でした。
初物といって真っ先に思い浮かぶのが初鰹
「目には青葉 山時鳥(ほととぎす)初松魚(かつお)」
と俳句で歌われたり
「女房子供を質に出してでも食え」
といわれたりしたくらいの人気で
天明年間(1781~1788)の初鰹の相場は1本二両二分(約25万)
長屋に売りに来る棒手振りの魚屋の初鰹でも金一分(約2万5千円)でした。
また文政6年(1823年)に高級料理屋の八百善が仕入れた初鰹が4両と、最高額だったりします。
ちなみに数日後には鰹の刺身は1人前五十文(1250円)にまで値下がりします(笑)
値段が下がるのを分かっていながら、買うのが見栄っ張りで粋なことだったのでしょうね。
分かるような分からないような・・・・
もちろん、初物は鰹だけに留まらず、色々な物が初物として珍重され、江戸っ子は競って初物を食べました。
安永五年(1776年)刊「福寿草」によると、江戸っ子が好んだ特に初物は
初鰹
初鮭
初酒
初蕎麦
若鮎
若餅
早松茸
早初茸
新茶
初茄子
などだったそうで、この中でも
初鰹 初鮭 初なす 初きのこは『初物四天王』
と呼ばれていたそうです。
そして初物熱が過熱してくると、走り物の未熟な野菜が売られるようになったりしました。
そして、江戸中期になると紙障子で温床を作り、生ごみ等の発酵材で温度を上げるなどして促成栽培で茄子や胡瓜、インゲンなどの野菜が作られるようになりました。
江戸時代に促成栽培が行われていたなんて驚きですね。
まさに「発明は必要の母」(笑)
ちなみに初物として珍重されていたのは
3月に食べる「茄子」
4月に食べる「白瓜」
2~3月に食べる「小鮎」
などがあったと伝えられております。
こうした初物に対する加熱ぶりによる物価高騰を懸念した幕府は
寛文5年(1665年)を皮切りに
寛文12年(1672年)
貞享3年(1686年)
元禄6年(1639年)
寛保2年(1742年)
に奢侈禁止とともに魚、鳥、野菜の販売期間を定めた触書をだすほどでした。
そして対象となった物の中には、
ツクシ
筍
茄子
枇杷
梨
松茸
りんご
葡萄
アンコウ
鱈
鮭
など今でもお馴染みの物が上げられていました。
現在は、栽培、保存技術の進歩や世界から食材が輸入されるので、季節に関係なく色々な物が食べられ、季節感というものは薄れています。
それでも松茸や鮭、秋刀魚などの初出荷がニュースにでると、季節を到来を感じますし、その時期にしか食べられない物も色々とあるので、初物を食べて季節を味わいたいと思
いは、江戸の頃と変わりないかと思います。
四季の移ろいのある限り、私たちの初物好きは変わることはないのでしょう。
参考資料・サイト
「お江戸」の素朴な大疑問: 住宅事情からゴミ問題・犯罪・盛り場のことまで
中江克己 著 PHP文庫刊
百万都市江戸の生活
著者: 北原進 角川選書刊
日本の行事・暦
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今後も、あなたのお役にたてるような記事を投稿していきたいと思います。
スキ・コメント・フォローなどを頂けるとうれしいです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?