お客様との関係性と売上構造を理解する
飲食業のみならず多くの業種で、売上を作る上で目先の新規集客に力を入れることは多々あると思います。
一方で売上の多くは既存客(特に高頻度で使ういわゆる常連)が作っているという法則が提唱されているように、飲食業においても、いかに顧客を固定し、更にはVIP化させて、安定的売上を確保していけるか、が店舗運営において重要になります。
今回は、顧客フェーズとそのフェーズごとに、どんな対策をすべきかのお話しです。
顧客フェーズを知る
飲食業・中食業の顧客は利用の度合いや回数によって、私の中では、下記のようなフェーズに分けています。
未客=まだ見ぬ客:利用回数0回→店舗の存在を知らないか、知っているが来店に至っていない状態の客
C客=一般客:利用回数1~2回→利用経験があるが、これと言って特定の店となっておらず、ほかの店と見比べている状態の客
B客=知人客:利用回数3~4回→ある程度習慣的に利用しているが、ほかの店も利用している客
A客=友人客:利用回数5~9回→ある程度習慣的に利用しており、ほかの店をあまり利用していない客
S客=友人客:利用回数10回以上→なるだけ自店を利用してくれる。長期にわたって利用をし、口コミ源にもなる。
といった4階層(未客を含めると5階層)に分けられます。
利用回数は目安数値であるが、1つの基準として覚えておいて欲しいのは、利用回数「1回目、3回目、10回目」です。
1回目については当たり前ですが、お客様の利用経験=店側との接点の有無になるからです。
3回目と10回目については、「3回安定・10回固定の法則」というザイアンスの法則(単純接触効果)を元にした理論から導いている数字です。
要は、「人間は会えば会うほど好意を持つようになる。」という心理効果を引用した考え方です。
3回目で親しみが生まれ安定的に自店を利用するようになり、10回目で強固な親しみを持ち、利用が固定されるようになるというイメージです。(A客の5~9回という基準はその間を取っています。)
※あくまで利用回数は目安ですが、アクティブな顧客であることが前提になります。2年に1回での累計3回のようなお客様もいるかと思いますが、そういったお客様は一度離脱をしていると考えられるため、新規顧客と考えてもいいと思います。それよりも月1回を継続利用して累計3回のお客様をサービスの優先度は高いです。(アクティブ顧客の基準は業態、店舗によって異なりますのでここを決めておくことも必要です。)
顧客フェーズごとの対策
Phase1)未客=まだ見ぬ客:
自店を知らないもしくは自店の来店にまで踏み切っていない状態である。そのため、まずは集客の仕掛け・自店の特徴の見える化をしていく必要がある。
具体的には、販促媒体(ポータルサイト/検索上マップ/チラシ/SNSなど)の構築・実施による認知拡大や、自店の強み(看板商品/価格優位性/サービス/品揃えなど)や利用シーン・店舗の様子を見せて、来店動機を作ったり、心理ハードルを下げるなどが挙げられます。
Phase2)C客=一般客:
ほとんど利用が無い新規のフェーズで、お試し的に来店している状態でもあります。そのため、再来店のメリットを訴求し、来店習慣を育成する必要があります。
初回来店で味やサービスなど飲食店の本質に惚れ込んで、すぐにまた来店してくれるという場合もあります。しかし、多くの場合は、来店習慣がない分、次回以降来店の足取りは重いため、コテコテの手法ですが次回使えるクーポンの配布などの価格的動機作りが有効になりやすいです。
また、初回来店以降、このフェーズのお客様は次いつ来店するか分からないため、必ず接客時・会計時にお渡しするのがおすすめです。一部店舗でSNSやHP・アプリから取得/確認できるというのも見ますが、来店習慣がないところからWeb媒体に誘導はハードルが高いので、クーポン×接客時配布がまだまだ有効であると考えています。
Phase3)B客=友人客
ようやく安定的な来店習慣が形成されてきたフェーズです。このフェーズからは来店回数を重ねてもらい、10回目の固定を目指すことになります。そのため、来店をすればするほど大きくなるメリットの提示が重要になります。
具体的には、これもコテコテの手法ですが、ポイントカードが有効な手法になります。3回目達成時よりも5回目達成時のほうが割引率やサービスするもの良くなるなど、来店回数を多くするほうが得である設定をすると尚良いです。
またこのフェーズでは、利用も習慣がされ始めるため、SNSのような来店時以外での接点作り(単純接触を増やす)を整備しておけばより良い状態であるといえます。
Phase4)A客=友人客:
このフェーズでは固定化まであと少しという状態になっています。利用は当たり前化している中で、顧客満足度を上げる必要があります。
具体的には、友人客のような上位客層に対しての特別なサービスの提供です。例えばですが、少量しか仕入れができないものを使った隠れメニューの提供や常連客用の席を取っておく、優良席へ優先的に通すなどのサービス対応です。
これらは、特別感の演出や一般のお客様との差別化のために大々的に公表をしないという事が肝になります。(もちろんサービス差別をしての不満を出さないようにするためでもありますが・・・・・)
Phase5)S客=信者客:
このフェーズのお客様は固定化されており、重要なことは顧客である状態を維持させることです。LTV(飲食業での簡単な算出公式は、継続期間×利用頻度×平均使用金額)も非常高く、店側にとって大袈裟でなく、新規客よりも100倍、1,000倍の価値があると言ってもいいです。
そのため、失うことは売上に大きなダメージがあるため、個別対応による顧客満足度を提供し利用を継続してもらう必要があります。
具体的には、A客での特別・優先的サービスの提供はもちろんですが、商品の個別カスタマイズ(嗜好への対応)や個別に時間をとっての接客対応(オーナーや店長・料理長など店内の重役が対応や挨拶に行くなど)が必要になります。
既存顧客対策による売上インパクト
既存顧客を大切にし、更にはVIPに育てて行きましょう。というお話しは冒頭から書かせていただいているのですが、その理由や数字的インパクトを見ていきましょう。その理由は大きくは、
1)売上構成比が大きい(80:20の法則)
2)利益率が高い(1:5の法則)
の2つです。
1)売上構成比が大きい。に関しては80:20の法則(パレートの法則)で以前から提唱されているように、20%上位顧客が売上の80%を占めているという理論から由来しています。
(これは店舗ごとに多少の数字のブレがあったり、新規顧客がほとんどを占める業種や立地で当てはまらない場合もありますが)飲食業/中食業で、利用頻度と売上のABC分析などを行うと、これに沿った数字が出ます。
例えば年商1億円でアクティブで年間2,000顧客が来店する飲食店があったとします。上位20%の400顧客=売上8,000万円(今回はわかりやすく平均顧客売上20万円とする)のうち、上位顧客の20%=80顧客が離脱した場合、80顧客×20万円=1,600万円の損失になります。全体でみれば、4%の顧客数なのに1,500万円以上の売上機会ロスです。
もちろん想定数字なので、実情そのままではありませんが、上位既存顧客の離脱は売上に大きなインパクト与える可能性があります。
また、これは参考で、パレートの法則を応用している数字法則ですが、ABC分析の下位30%は全体売上の3%程度しか占めていないというものもありますので、いかに上位既存顧客が重要かと、顧客を育てる必要があるか分かります。(新規顧客離脱OKではもちろんありません!)
2)利益率の高い。に関しては、1:5の法則に由来するものです。これは、新規顧客獲得のコストは、既存顧客維持コストの5倍掛かるという理論です。
新規顧客を集める際には、お客様は自店を知らない状態+自店もどこに・どんなお客様がいるか、が分からない状態から集客するわけですから、一般的にはチラシ・ポータルサイト・SNS広告など複数媒体を使います。そのため数十万、場合によってはそれ以上の費用が掛かります。
一方で、既存顧客維持については、利用経験や自店の認知がある分、心理ハードルも低くなっており、場合によっては顧客情報の取得も出来ている状態です。そのため、クーポン配布やDM・メルマガの送信・電話営業など比較的費用の安い施策で対応できます。(反響率や販促効果が関係してくるので、ちょっと暴論的ですが・・・・笑)
そのため、最終的に既存顧客維持によって作られた売上のほうが利益率が高くなる傾向にあり、この売上構成比や売上額が上がれば、収益体系が良くなるのです。
コロナウィルスによって昨今、絶対的な客数の減少に悩まれていることも多いと思います。一方で来年に向かって社会情勢は回復傾向にあり、改めて既存顧客がいかに大切なのかを書かせていただきました。今だからこそ既存の客様の大切さについて考えるキッカケになれば幸いです。
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