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白夜 乾燥した花弁の詰められた化粧箱の中にある 十月の心音を録音して、BGMにしている あなたの欲しいものは何色をしていますか 重ねられた嘘だって積み上げて逆立ちしたら それ相応のものにはなるのだろう 壊れそうなものほど、疑いなく信じてしまう 都市公団の団地の8階に住んでいる 裏映りをした散文詩を新聞紙に書いている あの女の子は、優しいお母さんに育てられた 心根の綺麗な子供だった 寂しさも抱き締められた温もりには勝てずに 眠る前にキッチンシンクで歯磨きをしてい
無矛盾 違う 間違う すれ違う この時代の 酸素が馴染まない 君はとても器用だね 効き過ぎた空調機のよう 八月の高い空の天辺 鹿の骨が、割れたような青 金曜日が遠く望ましい憂鬱ならば 快く蝉の足跡の六角形の名残になろう ザッハトルテの、表面のチョコレートの艶で 甘美な祈りの外れた音階で 二度と戻らぬように
七月の唄 ひとひらの心音が、鳴かなかった夜。新種の紫陽花の名前のない色の名前を思い出す。六角形の響きを残した月。くぐる雲の名残が、矛盾のない冷たさの、頬の横を流れていく。半袖とピアノが、反射している。南アフリカの、水色の鉄道が震えている。斜め下から、きみを証明する、手品の仕組みを眺めてみる。 柔らかくなった縞馬の骨を白いテーブルに並べて、黒砂糖の溶けた名残のような泪の跡と重ねている。 灰になったそれは二回目の遺骨となって、グラスのミルクの中で甘味を纏い、泳いでいる。息を沈
「具体的」という、即興詩です。
「火星」という即興詩です。
「金曜日」という即興詩です。
「共振」という即興詩です。
珈琲 存在論的な違和感を 受肉した他者としての もう一人のわたしが 珈琲に浮かんでいる 淡い水色の音のない マグカップが 静けさを際立たせては シンクに吸い込まれていく 苦味と酸味と甘み 喉に沁み込んでいく そういえばこの世界も そのような味がする それ その 無意味な 指示代名詞の羅列に この命 指し示されて 未来の葬列に並んでいる カップを空にして 揺蕩う追憶も空にして 深めの呼吸をしては 少し目が覚めた気分になった
ー音速ー 燃え上っていた 薔薇の棘が刺さったまま 土踏まずはすでに 駈け出していた 給水塔に登り 天辺で叫ぶ 叫び慣れていないから 声帯から血が出る 焦がれるように 噛み付くように 動物との境目を 軽々と超えた 音速の残骸の静けさに 心音が跳ねる 椋鳥の羽ばたきに 冷えた珈琲が沸騰する 逆さまになった 地球を抱えて 芝生色の空と 空色の大地 逆さまの十字架を見た きみが不在の神の 留守番をしている 150㎝の天使だとしても
<散文詩>乾いた仙人掌 硬直して舐めるように覗かれた虫眼鏡の前の蝶 新聞紙に散文詩を書き 猫のトイレの砂にして 不具合だらけのテーブルの背中 乾いた仙人掌 ステップマザーに嘘ばかりついて抱き締められ 掘り起こされた若年性の健忘症の後遺症の追憶 北の大地の山岳に登り放射能を埋める夢を見て 本棚の隅の親戚との写真に映った幼少期の弟と 16歳で永眠した白猫のキキ 御察しの通りで アニメから取りました スタッカートが効いた ピアノが上手かった母の跳ねる音階の間隔には 音符と音符の重