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即興詩/3.0

<散文詩>乾いた仙人掌


硬直して舐めるように覗かれた虫眼鏡の前の蝶
新聞紙に散文詩を書き 猫のトイレの砂にして
不具合だらけのテーブルの背中 乾いた仙人掌
ステップマザーに嘘ばかりついて抱き締められ
掘り起こされた若年性の健忘症の後遺症の追憶
北の大地の山岳に登り放射能を埋める夢を見て
本棚の隅の親戚との写真に映った幼少期の弟と
16歳で永眠した白猫のキキ 御察しの通りで
アニメから取りました スタッカートが効いた
ピアノが上手かった母の跳ねる音階の間隔には
音符と音符の重なりにある不協和音が心地良く
アイツが仕事をブッチしたので急遽出勤になり
紺色の安いスニーカーを履いて玄関を閉めたら
血管に疲労が浮き出ました素晴らしいこの世界
を肯定するよりも現実を現実と不思議を不思議
と理解する理解力が足りなくて困り果てて公園
のベンチで分裂した概念になり神聖な物として
唯物論の洗礼を受けました 刺々しくなった私
周囲を敵として睨みつけようと手を差し伸べて
くれたおっちゃんに不義理をして後悔しており
供述書には罪の可能性が幾つも並べられていて
グロテスクな近未来をつい想像したその隣には
乾いた仙人掌が立っていましたそれは私でした


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