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ー詩と形而上学ー

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創作している詩をまとめました。お気軽に御覧下さい。
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2021年5月の記事一覧

即興詩/24.0

白いノイズ どことなく メロウ 地上から 3㎝浮く ぼくたちには それで十分で 泪が こぼれそうにはなるぐらい 揺れて 揺れている 表面張力が 限界を迎え 頬を伝う 流れている その質感と 触感に驚いて  気付けば 既に 空調機の風で  乾きはじめている 長い映画のような 夢を見て 祈りのような 終わりを見た 始まりはきっと 終わらない 無条件な 魂から生まれ 虚無の中に 消えていく 可能性も 実在もなく 回路を 流れていく マイナスの電荷の 何かだろう 頬が痺れる 

ー詩と形而上学ー26.0

全光束 一粒の光 無音 躍る心音 五線譜では 不足する オクターヴ       魂 その 高鳴るもの  器用に嘘を付くのは止めましょう   青色の 感傷めいた 情念も   夕凪に 水色を増す 虹彩も      真として 偶然に 現に 豊穣化した 現実性      シャツの下 光彩 満ちるもの        暗闇に 掌に 唇に 重なる息に 愛の手前の 羽が生えた 首筋に宿った     前未来 その煌きを 光に譬えるなら どれほどの 明るさになるのでしょ

ー詩と形而上学ー20.0

青い絲 水銀灯の影 過剰な情動の 底のない気配 烏を随分と見ていない 傘はとうに朽ちている 必然的に散るものよ 受け止める前に消えた 葉脈を模った銀        かたちのない軌跡 宙に咲いた青灰 充実した無 宿命づけられた 唐突な韻律 砂と泡硝子 取り憑かれている 大地とは程遠いものよ 細やかな瘡蓋 剥がれる膜 茎と血 脱ぎ捨てられた 昼の痕跡 重なった掌の 汗腺を辿って 溶けていった繭 裏腹に結ばれて 縫いつけられた 二重の波紋 その青い絲 Written

ー詩と形而上学ー21.0

螢惑星      肌 皮膚の隙間にしのばせた空が その温もりを忘れられずに煙雨を降らせる 裂けた曇天から畦道のような一筋の こらえきれない戸惑いが訪れ 体温が失われた赫が灯った 螢惑星は控えめな手つきで宵の帳を下ろし  思い出したように時々頷いては 朔月の滲んだ旋律に遠き日の数学を見て 残照の葬列に並んでいる      (そして最後の訪問客になった)      白藍 閉じたはずの瞼から睫毛が見えて その輪郭を柔らかに貫通した昼光色の窓 体温から離れてさかさまになった微

ー詩と形而上学ー22.0

白 息継ぎをせずに白の中に潜る 雪、テーブルクロス グラスの中のミルク そのどれでもよくて 白のプールでバタフライをする 白い机の角で、ターンを決める 世界の明度が、最大になり オフホワイトに感光する 脱色して乳白色になった 乾燥した瞳孔で 地上から1000mにある 白兎のような、白い雲を眺める 白い牛乳風呂で鼻をつまんで 3億年、息を止めて 白亜紀の、白い恐竜の 白い骨の柔らかさを確かめる 白に染まる。白、白、白 白を超えた白に、染まる 白い空、白い海、白い宇宙 

ー詩と形而上学ー23.0

線 溜め息さえメロディになる静けさの ショートヘアの透明なひとが泣いている 美しいものは、あまり見ない方がいいと 教科書に書いてあったのを思い出し 地下鉄の窓ガラスの、脱毛の広告を眺めている 人通りの少ない帰り道に、知らない人を 午後七時の青色のなかに置き忘れてきた 夜の公園のバラ園に、水色の傘の輪郭が 滲んで咲いてビニールとプラスチックの 一輪の花として風景の序文となっていた 夜桜、かたち未満の歴史が徐々にほどけて 青い春の寂しさは疲れた肋骨に心地がいい 雨が結ぶ絲の