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帰国困難外国人を雇用することについて
━ 帰国困難外国人の存在と外国人雇用について━
【はじめに】
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新型コロナウイルス感染症(以下,単に「コロナ」という。)の世界的流行がはじまって2年半を過ぎようとしています。コロナに対する対策として出入国にかかる規制(移動の制約)がとりわけ重要視されており,日本においても多数の帰国困難者が発生しました。
コロナへの考え方についてはここにきて国や地域によって大きく変化してきており,それに伴い入出国制限がなくなりつつあります。それに伴い,「帰国困難」といえる状況ではなくなってきていることから,これまで帰国困難で在留していた外国人の動向が注目されます。そういった方の中には継続して日本で在留を希望し就職活動を行っている方も居られます。今回は,帰国困難であった外国人の方についての基本的な知識と,もしそういった外国人が採用を求めて求人に応募してきた際に検討すべきことについてご紹介します。
1.特定活動(帰国困難)で多くの外国人が在留していることについて
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① 移動の規制と出国できない外国人について
コロナ流行当初においてはどこの国においても「入出国」について厳しい規制がかけられていました。具体的に言えば,人の移動が大幅に減ったことから飛行機の国際線発着便が大幅に減少したということは広くニュースなどで知られていたことと思います。そのことによって,在留資格の期限が満了し,従来の在留資格の該当性がなく更新できない外国人が本国に帰国できないという事象が発生しました。従来の在留資格の該当性を失った外国人には大きく分けて二通りあり,「コロナ禍の最中に学校を卒業,或いは技能実習の在留期間が満了する等した場合」と「日本で何らかの在留資格を持って仕事していたが,コロナ禍で雇止めにあうなどして在留期間を満了することができなかった場合」にわけられます。この違いは前者が「元々本国に帰ることが当然」であったのに対し,後者は「本国に帰る予定がないにもかかわらず在留資格該当性を失ってしまった」という事情があります。日本で中長期在留者として生きていこうとしていた外国人にとっては極めて大きな出来事だったと言えます。
② 特定活動(帰国困難)の在留資格について
日本では「出国が困難であること」それ自体を在留資格の認定要件として特定活動(帰国困難,この資格のことを以下「コロナ特活」と言う。)の在留資格で6か月おきに更新することで在留を認めていました。就労は基本的に出来ないものですが,そこに「資格外活動」という許可を出すことで週に28時間以内であれば就労が可能である状況になりました。この在留資格は原則として更新を認めないものでしたが,コロナが長期化したこともあり何度か同じ特定活動の資格を更新することが出来ていました。
③ 出国困難の定義について
本稿では,ごく簡単にご説明するに留めますが,出国困難と言ってもコロナ禍においても厳しい制約や少ない航空便を確保する等して出国できたのではないか?と疑問を持つ方も居られると思います。「出国が困難である」ということの定義について,入管の職員に依然尋ねたところ,従前よりも「航空便が少ない」や「運賃が高い」といった程度の理由を示せば審査を通す運用であると回答を受けました。
この運用については制度趣旨を鑑みれば疑問が生じうるところではありますが,突然のコロナ禍によって計画が狂ってしまった外国人に対しての人道上の措置という見方が出来ると思われます。
2.コロナ特活の終了について
令和4年5月31日付で出入国在留管理庁(以下,「入管」という。)はコロナ特活について以下のように示し,コロナ特活の取り扱いを終了することを発表しました。
① 令和4年6月29日までにコロナ特活の在留期限が切れる外国人について
4か月(従前は6か月だったものが短縮された)または30日の在留資格の更新を認める。次回の更新時は「今回限り」の条件付きで同様の在留資格の更新を認める。
② 令和4年6月30日以降にコロナ特活の在留期限が切れる外国人について
「今回限り」で4か月または30日の在留資格の更新を認める。
③ 令和4年11月1日以降にコロナ特活以外の在留資格を持つ外国人について
「今回限り」で4か月または30日の在留資格の更新を認める。
お読みいただければわかるように,「今回限り」での在留なので,換言すれば「次はない」ということになります。遅くとも令和5年の2月末までには全てのコロナ特活の取り扱いをやめるということです。これまでは運用上帰国困難である旨を示せば6か月の在留資格を得られていたので,外国人にとっては進路を真剣に考える必要が出てきた,ということが言えます。
コロナ特活終了の理由として入管は「出国者が増加している状況等を踏まえ」決定したものとしています。出国できないとする合理的理由が事実上なくなったということが言うもので,世界の状況を見るに国ごとで差異はあるとはいえ当然の措置だと思われます。
3.コロナ特活を終える外国人を日本の企業が採用できるか?
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コロナ特活⇒コロナ特活の在留資格更新の可能性が絶たれた外国人が日本に引き続き在留する方法として,別な在留資格に変更するという方法があります。厳密に言えば,コロナ特活の制度趣旨自体が「帰国困難なのでやむを得ず在留することを認める」というものなので,これにあてはめると一見変更申請は困難であるように思われます。つまり,企業側としてはコロナ特活で在留する外国人は採用しても在留が出来ず,結果的に雇用が出来ないのではないかとの懸念があります。
ただ,入管は就職が決まった場合に在留資格の変更を申請することについては認める方向であるようです。帰国困難の時期が最長の外国人だとコロナ禍がはじまったころから2年半近く経過しているわけですから,その間に外国人本人の状況は変わりうるものだということを理解してくれていると言えます。
そのため,コロナ特活で在留している外国人が自らのスキルに合っていて,かつ在留資格該当性のある職に就こうと就職活動を行う方もおられるようです。表題の事項についてお答えすると「在留資格の該当性がある職であれば採用が可能である」ということです。但し,外国人を採用にあたっては次の点に注意する必要があります。
① 在留資格の該当性がある職種か?
身分系の在留資格を持つ外国人(日本人又は永住者の配偶者等など)以外の外国人を採用する場合には在留資格の中に該当する職種でない場合は採用しても在留できません。在留資格の中にも実務経験や資格,学歴の有無を問われるものもありますので注意が必要です。
② これまでの経歴及び今後の生活において入管法違反をしないか?
通常採用活動を行う場合には履歴書を提出させて,履歴書で過去の職歴や学歴を知ることになります。これに加えて元々日本にいた外国人の場合,「日本にいた期間について何の在留資格で日本に在留していたか?」を確認する必要があります。なぜかというと,在留資格で定められた職業に就かない状態で在留していたとなると,「不法在留」をしていたことになり,後々トラブルになる可能性があります。過去に不法在留歴があることはマイナス要素ではありますが,軽微なものであれば発覚する前に申し述べたうえで今後改善すること,所属先(勤務先)も監督指導することを十分に説明すれば即強制退去になることはあまり考えられません。弊所でお受けする場合には、入管に対し事前に匿名で起きた事柄を説明したうえで,事前準備の上申請を進めるほか,必要があれば本人(所属先担当者らも交える場合があります)と共に入管に出頭し万全を尽くして対応していきます。
③ 日本人と同等以上の給与を支給しているか?
最近は雇用側の認識も深まってきつつありますが,中には「外国人労働者は低賃金で雇用できる」との認識を有する方がおられます。入管の審査要領には明確に「日本人と同等以上」の給与を支給すべきことを許可の要件としています。日本人と同等以上の意味合いについてですが,「同職,同経歴,同水準の能力を持つ日本人を雇用した場合に比べ同程度以上」となりますので,同程度の日本人労働者が雇用されている場合にはその者の給与と比較することになります。居ない場合においては賃金規程等を示して,「日本人と同等以上」であることを立証していくことになります。
他にも注意すべき点はありますが,詳細は以前私が執筆した記事をご参照ください。
① 「外国人材の採用」における注意点(その1)
https://hk-plaza.co.jp/?p=5492
② 「外国人材の採用」における注意点(その2)
https://hk-plaza.co.jp/?p=5498
③ 「外国人材の採用」における注意点(その3)
https://hk-plaza.co.jp/?p=5521
4.終わりに
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コロナ特活の終了を機に就職活動を開始する外国人が一定数はいるものと思われるところ,採用活動を行う企業側から見れば外国人採用を予定していない場合,不安要素があるものと思います。確かに,上記の通り外国人採用にあたっては入管手続きにおいては専門性を有することになり企業側の負担も大きいものと思います。
ただ,それ以上に当該外国人が持つスキルや異国の地に何らかの目的をもって在留し,今後も日本で生活したいと考えて行動する力は日本人労働者にはなかなか見かけないもの潜在的な力を有していることも事実です。もし,在留資格該当性のある職種で外国人からの応募があった際には良い機会ととらえ採用を検討してみてもよいのではないでしょうか。
弊所ではこれまで外国人を採用したことがない企業からご依頼を受けて入管手続きを行った実績があります。もし,自社・関与先企業様等で外国人の採用を検討している,或いは求人に応募があったが在留資格の該当性があるか等ご相談などございましたら、お気軽にご連絡ください。
行政書士法人第一事務所
行政書士 原 隆史