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海外在住の相続人がいる場合の相続手続
【相談】
先月、父が亡くなりました。相続人は、故人の妻、長男、長女、二男である私の4名です。
長男は仕事の都合で2年前から中国に住んでいます。国籍は日本です。長女はアメリカ人と結婚し、アメリカ国籍を取得しています。住所もアメリカです。相続財産は、自宅の土地・建物と預貯金で、相続人全員で話し合った結果、全ての財産を故人の妻が取得することになりました。相続人が海外にいる場合、一般的な相続手続との違いはあるのでしょうか。どのように相続手続を行えばいいでしょうか。
【遺産分割協議書の作成】
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相続が発生した時には、相続人同士で遺産分けの話し合いを行い、その内容を遺産分割協議書という書面にまとめます。そして、遺産分割協議書に相続人全員の実印を捺印したうえで、印鑑登録証明書を添付する必要があります。この遺産分割協議書には、遺産を受け取らない相続人も含めた相続人全員の署名捺印が必要です。
しかし、海外に住む相続人は、印鑑登録証明書を取ることができません。なぜなら、海外へ住所を移すと、日本での住民票は抹消され、印鑑登録証明書も合わせて抹消されてしまうからです。
さらに、相続手続では、相続人の現在の戸籍謄本が必要になりますが、日本国籍を離脱した人には戸籍がありません。
では、どのように相続手続を行えばよいのでしょうか。「日本国籍を有する相続人が海外に住んでいる場合」と「外国籍を有する相続人が海外に住んでいる場合」とでは手続方法が異なりますので、それぞれ解説します。
【日本国籍を有する相続人が海外に住んでいる場合】
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相続人が海外に住んでいる場合には、その海外在住相続人の印鑑登録証明書を取得することができません。そこで、印鑑登録証明書の代わりに、現地の日本大使館(領事館)でサイン証明書を取得する必要があります。サイン証明書とは、サインをした人が間違いなく本人であるということを証明する書類で、現地の日本大使館(領事館)で発行される書類です。
相談のケースで考えてみましょう。まず、遺産分割協議書を作成し、中国に住む長男へ送ります。そして、長男が中国の日本大使館(領事館)へ遺産分割協議書を持参して、大使館(領事館)の係官の前で遺産分割協議書にサインをします。サインをすると、「サイン証明」を発行してもらえます。
なお、海外に住んでいる相続人が、帰省などで一時的に日本に滞在する場合は、日本の公証役場へ遺産分割協議書を持参し、公証人の前で遺産分割協議書にサインをすることも可能です。
【外国籍を有する相続人が海外に住んでいる場合】
上記と同様に、外国籍を有する海外在住の相続人は、印鑑登録証明書を取得することができません。さらに、日本国籍を離脱すると、戸籍もなくなります。
そこで、今回のケースであれば、外国籍を有する海外在住の相続人である長女は、戸籍・印鑑登録証明書の代わりとして、宣誓供述書(Affidavit)を作成し、アメリカの公証役場(Notary Public)で公証を受ける必要があります。宣誓供述書とは、本人が陳述した内容を公証人が認証し、公文書化した書面のことです。宣誓供述書には、長女の氏名・生年月日・住所、亡くなった父の相続人であること等を記載します。この宣誓供述書は、いわば戸籍、住民票、印鑑登録証明書の要素を兼ね備えた書類になります。この宣誓供述書は英語で作成し、公証を受けた宣誓供述書は日本語へ翻訳をしたうえで、金融機関や法務局へ提出します。
【まとめ】
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相続人が海外在の日本人である場合には、サイン証明が必要です。サイン証明は、日本大使館(領事館)の係官の前で遺産分割協議書へサインすることで発行してもらうことができます。
相続人が海外在住の外国籍を有する人である場合には、宣誓供述書を作成し、現地の公証役場で認証を受けます。
なお、金融機関によっては、サイン証明等の書類の有効期限を3ヵ月以内とするところもあります。スムーズに手続きを進めたい場合には、一度専門家へご相談されることをおすすめいたします。
行政書士法人第一事務所
行政書士 松本 奈々絵(登録番号 18011201)
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